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山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」

移住者インタビュー

2022.08.24

#山形移住者インタビュー のシリーズ。今回のゲストは、Rolfing House festaの大友 勇太さんです。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」

大友さんは秋田県大仙市生まれ。スポーツトレーナーとして働いたのち、2011年11月にアメリカのコロラド州ボルダーでロルフィング®を学んでロルファーの資格を取得しました(ロルフィングとは、からだ本来のバランスを取り戻していくボディワークのこと)。

2012年に神戸で「ロルフィングハウス フェスタ」を開業し、同時に結婚。3年後には子どもを授かりました。子育てするなら自然の近くがいいと、奥さんの地元である山形に移住し、山形生活は今年で8年目。現在は市内の一軒家にて、奥さんでありヨガインストラクターの亮子さんと一緒にフェスタを営みながら、小学2年生の息子さんと日々の子育てを楽しんでいます。

今回のインタビューのテーマは、日々の暮らしと子育てについて。大友さんが語る山形ライフは自然体で伸びやかで、小さな幸福に満ちていて、「日常が豊かであること」の尊さを感じました。まずは移住のきっかけから振り返っていきます。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
山形市南部の住宅街にある、ロルフィングハウス フェスタにてお話をうかがいました。
蔵王連峰に心を打たれて

子どもができて、自然がある場所で子育てがしたいなと、神戸から東北に戻ることにしました。なぜ山形だったかというと、奥さんの地元で義両親が近くにいて安心だったから。あとは、ロルフィングという不安定な仕事を東北でやるには、都市部へのアクセスも重要だと考えました。山形からは仙台が通勤圏内だし、東京にも出やすいんですよね。

2014年に山形に移住しました。僕の地元の秋田とお隣とはいえ、山形には全然縁(えん)がなかったのですが、いざ来てみたら蔵王連峰の山の姿に心打たれてしまって。開業前にアメリカのボルダーというまちでロルフィングを勉強していたのですが、ボルダーにもフラットアイロンという象徴的な山があったんです。ここにも蔵王があって、しかも姉妹都市だっていうじゃないですか。なんだか運命を感じちゃったんですよね。

自然を日常的に使う子育て環境

とりあえず行っちゃえ!と勢いで移住してきましたが、来て良かったなぁと心から思っています。僕は自営業なので時間に融通が利きやすく、子どもとたくさん時間を過ごせているのですが、山形市はすごく子育てがしやすいまちだなと感じています。

理由はいくつもありますが、まず全体的にスペースが広いこと。子どもがたたたっと前を歩いていくと、親は瞬時にアンテナを張っていろんな危険を察知します。あっちのほうに車が走っているな、人が向こうから歩いてくるな、あの障害物にぶつからないかな、とか。スペースが広ければあらゆるリスクが減って、混み合う都市部に比べると親はアンテナが緩むんですよね。これだけでもずいぶんラクなんです。

ワンオペの場合、子どもを連れてちょっとした日用品の買い物に行くだけでも試練になるので、どこへでも車で行ける環境も大きいと思います。都市部では大きな荷物と一緒に電車に乗ったりベビーカーで歩いたりと一苦労ですよね。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
坂巻公園(写真提供:大友さん)
山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
冬の若宮公園。公園からは蔵王連峰が望める。(写真提供:大友さん)

遊ぶ場所の選択肢も豊富です。市内には公園がたくさんあって、どこも広々としています。よく行くのは西公園、坂巻公園、そして若宮公園。いい公園がいくつもあるから混むことはほとんどなくて、思いっきりボールを蹴り上げれるし、思う存分走り回れる。「危ないからダメ」「迷惑をかけるからダメ」とか、子育てをする上でできるだけ制限はしたくないので、ありがたい環境だなと思います。

夏になると自然も選択肢に入ってきて、馬見ヶ崎川の上流によく行きます。家から車で15分の距離ですが水がすごくきれいで、よちよち歩きの子が入れるような浅瀬もあれば、がっつり泳げる場所もあります。西蔵王もよく行きますね。オニヤンマが獲れるので息子は大喜びです。少し標高が上がるだけで気温が2〜3度は違うから、涼しくて気持ちいいですよ。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
馬見ヶ崎川の上流付近(写真提供:大友さん)

冬はスキーに行きます。雪道で少し時間がかかるけど、それでも家からスキー場まで45分。前日の夜に「明日の雪は良さそうだな」と思ったら寝る前に少し準備をしておいて、朝起きたらすぐに山へ行くという感じです。

15分走ればきれいな川が流れていて、20分走れば西蔵王の高原があって、夏であれば30分くらいで蔵王の頂上まで行けるし、帰りに温泉に立ち寄ることもできます。必死に計画したり準備をする必要がなくて、思いついたらパッと行ける距離感が嬉しいですね。

児童遊戯施設「コパル」と「べにっこひろば」

山形市には大きな児童遊戯施設が2つあって、それもまた便利なんですよ。南の「コパル」、北の「べにっこひろば」と死角なしです(笑)。

雨だったり、暑過ぎたりと天気が極端な日に行くことが多くて、遊ぶ場所のオプションとして、かなり重宝します。午前中に思いっきり体を動かして、お昼ご飯を食べたらしっかりお昼寝してくれる、という感じです。外で子どもと一緒に何時間も遊ぶのって大変ですから、こういった施設はすごく助かります。

コパルでは亮子さんが定期的にヨガの教室をやっていて、家から近いので利用していますが、すごくよく考えてつくられているなぁと思います。天井が高くて、施設のエリアごとがゆるやかにつながっていて、のびのびと遊べる空間。ホールの周りには適度な傾斜があるので、親が子どもたちを見守りやすくなっているし、子どもも親もどちらも過ごしやすい設計で、スタッフのみなさんも寛容だし、すごく居心地がいいです。

べにっこひろばはでかい保育園みたいなイメージで、スタッフのみなさんが子どもにすごく慣れているし、手書きのポップとかコミュニケーションにも温かみを感じます。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
「山形で暮らす人にとってはこれが当たり前に感じているかもしれないけど、ときどき出張で都市部に出たときに、いかにこの子育て環境が豊かなのかを実感しますね」と大友さん。

子育てで困っていたり孤独を感じている人も多いと思うんですけど、コパルやべにっこひろばに行けば、気軽にスタッフの人に相談ができるんですよね。わざわざ専門の窓口に問い合わせなくても、子どもを遊ばせておきながら話ができるので、すごくラク。

例えば旦那さんの転勤でIターンしてきた人でママ友がいなくても、スタッフの人と話したり、スタッフの人が間をとりもってくれてお母さん同士で知り合いになれたり、イベントに参加したりもできる。児童遊戯施設は、お母さんとお父さんにとってあらゆる方面で助けになる存在だろうなと思います。

職場でもあり自宅でもある、開かれた一軒家

いまは一軒家を借りて、ここで暮らしながらフェスタを営んでいます。1階では亮子さんがヨガをして、2階にはロルフィングの部屋があるという構成です。前はマンションに住んでいたのですが、息子が大きくなって手狭になってきたので、ずっと引っ越しを考えてきました。3年くらいかけてようやく出会えた理想的な物件です。

畑も付いているので、野菜やハーブを育てているんですよ。息子が畑から野菜を採ってきて「やっぱ採れたては違うね」なんて言いながら食事をしたり、レッスンにきた人にときどきお裾分けすることもあります。

ここは家でもありますが、いつでも自由に出入りしてもらえるようなオープンな場所にしていきたいと思っています。ヨガは少人数制で、終わったあとにお茶を飲んだり、ときどきイベントをやったりとコミュニティもできているので、体を整えるだけじゃなくて、ここでのコミュニケーションを通じていろんな気づきを得てもらえたら嬉しいですね。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
1階のヨガスペース。家全体が風通しがよく、気持ちがいい。
山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
2階のロルフィングのスペース。たっぷりと光が入り、明るい空間。

日常が楽しいということ

山形は総じて日常がいいなぁと思います。僕ら家族が求めるものと、山形が与えてくれるものがちょうどフィットしている感覚があるというか。

一番大きいのは、やっぱり自然が近くて“日常使い”できること。モールや商業施設など都市型の便利さも享受しながら、普段の生活の中に自然を取り入れられるくらいが僕らにはちょうどいい。特に子育て世代にとっては、すごくいい環境だなと感じます。

食生活もちょうど良くて、野菜や水、お米など食材がいいのはもちろんですが、外食もいい。山形は750円の定食や800円のラーメンのレベルがめちゃくちゃ高いんですよ。都会ではお金を出せばおいしいものが食べられますが、手頃な値段でおいしいというのがポイントです。パン屋さんもコーヒー屋さんもおいしいところがあって、しかも複数の選択肢があるのがまた嬉しい。

とはいえ、山形は決して万能ではありません。地方だからといってコストが安いわけではなく、ガソリンや水道代、家賃など生活コストは高めだし、夏はめちゃくちゃ暑いです。そういったデメリットを踏まえても、僕らにとってはいいことの方が上回って全体的にここが一番いいなと感じています。

振り返ると、ロルフィングと子育てというやるべきことが明確だったからこそ、このまちの日常の良さを見つけることができたのだと思います。これから目標を探す人には少し物足りないかもしれない。移住するには自分自身のことをしっかり理解している必要があるのかもしれませんね。

山形移住者インタビュー/Rolfing House festa 大友 勇太さん「自然を日常使いする子育て」
亮子さんと勇太さん。ご自宅のお庭にて。

日々の中でそんなに特別なことは求めていません。むしろ日常を楽しく、安定的に回していくほうが僕らにとっては大切です。

子どもと一緒に自然の中で思いっきり遊べて、おいしいご飯が食べられて、お気に入りのコーヒー屋さんやパン屋さんがあって、この場所でフェスタができて。こうした日常が過ごせるのは山形だからこそ。いまの僕たちにとっては、これ以上ない最高の環境です。

Rolfing House festa
https://www.rolfing-festa.com/

取材・文:中島彩
撮影:伊藤美香子