【山形/連載】穏やかな休日のための音楽20
地域の連載
「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。
現在までに、ほんの僅かながらアルバムのライナー・ノーツを担当させて頂いたことがあります。そして今回久々にその機会を頂きました。そのアルバムは2019年10月にカルロス・アギーレとの「セバスティアン・マッキ・トリオ」で山形での公演をして頂いた、セバスティアン・マッキ(作曲家/ピアニスト/歌)の、ソロ名義のニュー・アルバム、「Melodia Baldia(メロディア・バルディア)」という作品です。
セバスティアンのプロフィールや、人となりはぜひこちら(←クリック)からご覧ください。彼の作り出す音楽はもちろん圧倒的に美しいのですが、人としても実に自然体で誠実な人でした。
さてこのアルバムのタイトル「Melodia Baldia」は、直訳すると「荒れ地のメロディー」という意味です。ここでいう「荒れ地」は単なる荒廃した土地ではなく、人の手が入っておらず一見荒廃しているようでいて、実は生物の多様性が保たれていて、有機的に調和のとれている土地をさしているとのことです。これを音楽に準えて、何らかの作為のもとに利益等を得ることを目的に音楽が作られるのではなく、自然発生的に生まれた音楽そのものが内包する精神をありのままに表現すること、音楽に溶け込みその一部となる喜びと奇跡を理想として掲げ、その思いをこのアルバムのタイトルに託しているといいます。
本作のリリースにあたり、今回セバスティアン本人から、日本のファンに向けてメッセージをいただきました。
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親愛なる日本のみなさん
新しいアルバム『メロディア・バルディア』を皆さんと共有できることは、私にとってこのうえない喜びです。パンデミックがもたらしたこの辛い数年間を過ごしたあなたに、この作品が小さな喜びや愛情を届けてくれることを、心の底から願っています。
このアルバムを作ることは、私にとって大きな学びの過程でした。自分ひとりでいろいろな決断をし、何を感じ、伝えたいか、そしていかに伝えるかについて、すべての責任を負うことが必要でした。それと同時に、私が敬愛する数々のアーティストと共演し、それぞれの曲をとても豊かにしてくれたことは、私への素敵な贈り物でもありました。その結果に私はとても満足しています。願わくば皆さんも同じであることを!
音楽は世界中のすべての人々と文化を支え続けてきました。音楽は我々を癒し、頭で考える思考と心にある感情を結びつけてくれ、境界をなくし、私たちをつなげ、守り、導いてくれます。
また近いうちに皆と再会し、音楽の灯火を共に掲げられることを願っています。
深い感謝と愛を。そして大きなハグを!
セバ
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セバスティアンらしい、実に誠実な美しいメッセージですね。
さて本作はセバスティアンらしい優しい歌声や、穏やかな旋律とハーモニー、そして自然を愛でそこに住まう人々を愛する、創作の基本的な情動には変わりありません。しかし本作は、特定の編成やバンドを想定して作ったわけではなく、それぞれの曲やストーリーにとって、必要な編成やアレンジ、オーケストレーションを考えてアルバムとしてまとめたものとのこと。コロナ禍の困難な状況下においても音楽を作り続け、友人たちと共有することができたことが、感情や創造性の面で彼を支えてくれたといいます。リズム面の工夫やオーケストレーションなど新たな試みも加えられ、彼の詩的創造力が凝縮された意欲的な作品です。穏やかな休日にぜひ聴いてみてください。
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