【北九州】軽くて薄くて小さくて実用的! ものづくりのまち北九州生まれのキャンプギアメーカーを訪ねて/アウトドア用品ブランドCGK・竹口勇介さん
インタビュー
いわゆる“インディーズ”からデビューし、YouTubeで人気に火が着いた北九州のアウトドア用品メーカー・CGK(シージーケー)。センスある企画とネーミングでキャンパーの心をつかむ話題のキャンプガジェットは、アウトドアとは無縁の意外な現場で生まれていた。
いかに荷物をコンパクトにできるか――。キャンプ好きなら、誰しも悩む問題だろう。そうしたキャンパー目線に立ち、個性的なガジェットを作っているのがCGKだ。
このブランドのアイテムは、極薄のステンレス板を組み合わせて完成するのが特徴。とにかく軽量、なおかつフラットな状態で持ち運べるコンパクトさが魅力だ。
今回話を伺ったのはCGKの中心メンバーである竹口勇介さん。自身も山登りが趣味という、アウトドアライフに魅了されたひとりだ。
薄さ・軽さ・持ち運びやすさにユニークなアイデアをプラス
「ワクワクするキャンプギアを作りたい」というCGKのコンセプトは“軽薄短小”で実用的であること。まずはCGKのキャンプギアたちを見ていただこう。
●ヤドカリグリル
多くのキャンパーが愛用するエスビットの「ポケットストーブ」(下の四角い台座部分)にピタリとはまるグリル台。通常は固形燃料を使って単体で使用するポケットストーブを灰受けとして利用し、グリル部分に炭を入れて調理ができるアイテムだ。ひとり焼肉にもぴったりなサイズ感、網を外せばちょっとした焚き火も楽しめる。
“他社製品を宿として借りる”という斬新な発想とネーミングも秀逸。CGKから最初に誕生したガジェットだ。
●ハマグリル
こちらも他社製品と組み合わせて使う“ヤドカリ”シリーズ。焚き火台としてポピュラーな「ピコグリル」に合わせて作ったゴトクと鉄板、ハマグリ型のフタをセットするだけで、輻射熱を利用したオーブンに早変わり。
薄いピザなら2〜3分で焼き上がる優れものだ。冬キャンプなら、フタ部分を立てて設置すれば反射板にもなって暖が取れる。「TABI」の焚き火代用のバージョンもあり。
●Air Stove
YouTuberのFUKUさんとのコラボで誕生した名刺サイズに収まるストーブ。そのコンパクトさは数あるポケットストーブの中でも群を抜く。
「3枚の板だけのシンプルな作りで、シェラカップも乗せられる強度も欲しい」と検討を重ね、超薄型軽量なスタイルに。ユーザーからの声を受け、アルコールストーブ用の「Air Stove L」も。
●巻き薪ストーブ
ソロキャンプにぴったりな、大きすぎず小さすぎないサイズの薪ストーブ。名前の通り、本体パネルをくるりと巻いて、ゴトクなどのパーツを差し込むだけで完成。0.2mmのパネルを丸めることで強度が増し、小さめのダッチオーブンを乗せてもOK。
炭火やアルコールストーブも使えるように、ロストル(底部の網)の高さも変えられる工夫もされている。サイズはてのひらサイズのSからファミリーキャンプでも十分なサイズまで4タイプあり。
●アウトドア鉄板 メスティン収納可
1人分の調理にぴったりなミニ鉄板を、キャンプグッズとして一躍人気となったアルミ製の箱型飯ごう「メスティン」にすっぽり収まるサイズにする、という目の付けどころがCGKらしい。
フラットなので手入れもしやすく、ソロキャンパーの必需品。鉄板の素材や厚み、サイズも各種あり。
●くるっとシェード
ユーザーからのアイデアをもとに開発したオイルランタン用のシェード。フラットなステンレスのバネ材をくるっとひっくり返して反らせると、絶妙な角度のシェードに変身。薄さにこだわったペラペラのステン素材だからできた商品。
ランタンの灯りを反射して光量をアップできるうえ、他のキャンパーと差がつくアイテムとしても人気。市販のランタンに合わせて各種サイズが揃っているのも嬉しい。
ユーチューバーお墨付きの使い心地で、ソロキャンパーにじわじわ浸透中
「ガレージブランド」と呼ばれる新興ブランドのCGKの商品は主にネット通販で販売している。数あるアウトドア商品の中でCGKが注目されるきっかけとなったのは、キャンプギアのレビューで人気のユーチューバー、FUKUさんのチャンネルで紹介されたことが大きいのだそう。
「最初の商品であるヤドカリグリルをAmazonに出品してすぐに、FUKUさんが購入してくれ、FUKUさんのYouTubeチャンネルで紹介されたんです。 “他社のギアの宿を借りる”っていうの発想がおもしろい!と評価していただきました。
チャンネルの効果は絶大で、公開直後にヤドカリグリルは完売。以前からFUKUさんのチャンネルで紹介されることを目指していたので嬉しかったし、自分たちの商品が評価されて自信が持てました」
これをきっかけにCGKとFUKUさんとの交流が始まり、今では共同開発した商品も生まれている。
また、キャンプ系漫画として大人気で、アニメやドラマにもなった『ゆるキャン△』(あfろ)とコラボした「キャンプ ログブック」も商品化。
「キャンプの記録を残すログブックを作りたいと思って、ダメもとで連絡をしてみたらコラボOKをいただけました。いつかは作中でCGK商品を取上げられたいという野望はありますね!」と竹口さん。マニアのツボをついた商品開発こそが、 CGKが愛される理由だろう。
母体はロボット関連企業。得意分野を活かしアウトドアの世界に参入
アウトドア商品のメーカーとして2020年に歩み出したCGKは、北九州市八幡西区の工業地帯のなかにある。鉄鋼業や機械産業が盛んという土地柄、工業製品などをつくる町工場が立ち並ぶ、“ものづくりのまち北九州”のど真ん中といえる場所だ。
CGKの母体は、ロボット設備の設計や機械制御システムの構築、ソフトウェアの開発などを手がける企業、株式会社エイチ・アイ・デー。アウトドアとは無縁の企業だ。
竹口さんも長年機械設計に携わってきたバリバリの技術者。そんななか、なぜキャンプ用品を作ることになったのだろう?
「会社としてなにか新しいことで事業の幅を広げたいという話が持ち上がり、社内に企画室を立ち上げたのが2018年ごろ。企画室と言っても最初はひとり部署でしたけど(笑)。
せっかくやるなら新しい分野でやりたいし、自社開発への憧れもありました。もともと企画を提案するのが得意だったので、当時の社長(現会長)と話をする中で、予算や規模、自分たちの得意分野を活かせるものとして、アウトドア商品を作ることになりました。
本業で板金メーカーさんとの繋がりもあったので、金属板で作れるものはイメージしやすかったですね」
フラットなステンレス板に施された絶妙なカッティング、ピッタリと組み合わさり強度も保つCGKのキャンプギアは、精密さが求められる本業の機械設計で培われた技術が生かされている。
本業では顧客に直接商品を販売するという経験がなかったため、商品の販売も手探りだったという。現状、AmazonとYahoo!ショッピングでのネット販売が中心だが、今後店舗展開なども目指しているのだろうか?
「できるだけコストを抑えて安く提供したいと思っているので、今のところネット販売がベストかなと思っています」とのこと。
どこまでもキャンパー思いの姿勢にグッとくる。そんな竹口さんにCGKの今後について尋ねてみた。
「ブランドの認知度をもっと上げて、ファンになってくれる人を増やしていきたいですね。キャンパーさんってそれぞれにこだわりもあるので、『こういう商品を作ってほしい!』っていう生の声をどんどんもらえるような環境を作っていきたいです。
ユーザーさんと一緒にCGKを育てて、本当に求められるキャンプギアを作るメーカーでありたいと思います」
キャンプに行くと、ついついほかのキャンパーのテントやキャンプ道具に目がいってしまうもの。キャンプガジェットにはそれだけ使い手のこだわりが表れるとも言える。
有名ブランドで揃えた快適なキャンプもアリだし、最近ではグランピングでアウトドア気分を楽しむことも流行っているが、自分なりに選び抜いたお気に入りの道具を持って行くコンパクトなソロキャンに行きたい!そんな気分になる取材だった。
(取材/文:岩井紀子 写真:清原裕也)
屋号 | アウトドア用品・キャンプ用品製造販売のCGK |
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