【山形市本町】やまがたクリエイティブシティセンターQ1(キューイチ)ってどんなところ?
施設紹介
2022年9月1日。山形市本町にある山形市立第一小学校旧校舎をリノベーションした新施設〈Q1(キューイチ)〉がオープンしました。“創造都市やまがた” の拠点として生まれたこの場所は、いったいどんなところなのでしょうか。できたばかりの中の様子を、さっそくのぞいてみましょう!
山形の日常をたのしく、おもしろく
暮らしの圏内にあるクリエイティブ拠点
〈やまがたクリエイティブシティセンターQ1(以下:Q1)〉は、山形市の真ん中にあります。この街に住む人にとっては「山形市立第一小学校旧校舎」としてお馴染みのものかもしれませんが、もしも初めてこの街を歩く人がいきなりこの建物に出会ったとしたら、その大きさと存在感に思わず足を止めてしまうのではないでしょうか。
Q1(キューイチ)の中を簡単に説明します。メインとなるのは1Fから3Fまでの3つのフロア。飲食店やアパレルショップ、書店、アートギャラリー、アトリエ、シェアオフィスやレンタルキッチン、シアタースペースといった、実にさまざまなショップやテナントが入居しています。
地下には交流ルームやプロジェクトスペースなどもあり、公民館的な機能を持っている面も。また、建物前広場ではマルシェが開かれたり、テラス席は街の人の憩いの場になっていたりもします。
ホームページにあるフロアマップからそれぞれのテナントの紹介文を読むことができるので、どんな人たちがどんなことをやっているのか、のぞいてみるのも良いでしょう。近くに住んでいる人は、まずはふらりと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
この街に120年。学び舎の歴史とこれから
1902年に建てられたこの旧校舎は、山形県では初の鉄筋コンクリート造りの学校建築。建物のデザインにはドイツ表現主義やアール・デコの意匠が見られるなど、建築のスタイルとしては当時の日本において最先端のものであったといわれています。約80年に渡り小学校の校舎として機能したのちも、その歴史的価値の高さゆえに、2001年には国の登録有形文化財に登録、さらに2009年には近代化産業遺産にも認定され、とり壊されることなく街の風景となってきました。この建築についてもっと詳しく知りたいという方はぜひ、こちらの記事もあわせてご覧ください。
Q1の2階から3階部分の天井や壁は、躯体が荒々しく剥き出しになったまま。これは、この建物が本来持っている魅力をできる限りそのまま残したい、というリノベーションを手がけた設計者の意図によるものだそうです。
建物の中を歩きながら印象に残ったのは、ごつごつした壁となめらかな手すりの感触。階段の手すりは昔のままの状態が保たれていて、自分の小学校時代の記憶が呼び起こされるようでもありました。
訪れる人によって、この建物や空間から受ける印象はさまざまあるはず。幼い頃と、大人になってからの自分の視点を、学校という場を通じて比較してみるのもおもしろいかもしれません。
“創造都市やまがた”の共創プラットフォームとは?
そもそも「ユネスコ創造都市ネットワーク」とは、どんなものなのでしょうか。Q1公式サイトには次のようにあります。
“2004年に創設されたユネスコ創造都市ネットワークは、「クリエイティブこそが都市の持続的な発展をもたらす原動力」とする都市間の協力や連携を目的とし、世界295都市(2021年11月現在)が加盟する国際的ネットワークです。文学/映画/音楽/クラフト&フォークアート/デザイン/メディアアート/食文化という7領域があり、山形市は2017年、日本初となる映画分野で加盟認定されました”
山形市には、山形国際ドキュメンタリー映画祭をはじめとする独自の映画文化があることや、山形交響楽団という優れたオーケストラを有する音楽の街でもあること、伝統的な郷土料理や豊かな食文化、山形ビエンナーレをはじめとするアートやデザイン、伝統工芸やものづくりを有すること、などとさまざまな地域の資産に恵まれている。そんなふうに世界からも認められたということが、ここには記されています。
山形市の魅力を訊ねられたら、まずは何を思い浮かべるでしょうか。上記に挙げられているもので、「それは知らなかった!」というものがあれば、そこから掘り下げたり興味の幅を広げたりすることで、自分にとって新しい発見や出会いがあるはずです。
Q1という場所は、そんなふうにしながら地域の交流を生み出し、さまざまな文化事業を発信するプラットフォームでもあるのです。
クリエイティブとは“問い続ける”という営み
一人ひとりのためにある
「クリエイティブ」という言葉を聞くと、アートやデザインなどの制作物や、視覚的にわかりやすいものをイメージしがちですが、一人ひとりの営みの集積でもあるのだということが、Q1のコンセプトからもうかがえます。だからこそ一部の人たちだけではなく、市民にとってひらかれた場であることに意味があります。
「芸術や美術にはそこまで興味はないけど、せっかく街中におもしろそうな場所ができたのだから、ちょっと行ってみよう」という感じで行ってみるのも良いかと。ギャラリーでの展示や、飲食店のメニュー、お店の商品のラインナップなどもその時々で変わるはずなので、何度か通ってみることをおすすめします。コンセプトである「クリエイティブ」という言葉にとらわれなくても、まずは行ってみること、廊下を歩いてみること、テラスに座ってみること、それだけでもいいのではないでしょうか。
Q1の建物は山形市立第一小学校の旧校舎ですが、すぐ隣に新校舎が建っていて、児童たちがいつもどおり学校生活を送っています。同じ場所でもそれぞれに違った時間軸があるというのは、日常の中のちょっとした非日常でもあるような気がします。
夕方ごろになると、ランドセルを背負った小学生の姿をちらほら見かけたり、迎えにきた親御さんとQ1に立ち寄ったりといった光景が見られ、それがとても新鮮でした。子どもたちにとっても、自分が通う小学校と隣り合わせにこういった場所があることは、幼い頃の記憶としても刻まれていくのだろうなと思います。
大人にとっても子どもにとっても、「なぜか気になる」「楽しそう、面白そう」「これは何だろう」。そんなふうに、だれもが持っている純粋な気持ちや素朴な問いが、クリエイティブの原動力になっていくのではないでしょうか。
INFORMATION
やまがたクリエイティブシティセンター Q1
住所 山形県山形市本町1-5-19
電話番号 023-615-8099
営業時間 テナントにより異なります。ホームページの「フロアマップ」をご確認ください。
https://yamagata-q1.com/
Q1 オンラインストア
https://qichi.stores.jp/
写真:伊藤美香子
文:井上春香