福井のみなみの季節と養生 #16立冬の巻「神楽商店街、昆布問屋の増井弘海堂さん」
地域の連載
福井のみなみの季節と養生は、福井の南に位置する敦賀でユニットを活動する養生デザインのお二人(青木さん、山中さん)と、reallocal福井ライター牛久保で、季節ごとの養生についておはなししていく連載です。
※養生…身体の状態を整えること
冬のはじまり、立冬
11月7日に立冬を迎えました。吹く風も冷たさを増してきて、いよいよ冬のはじまりです。
冬は秋に収穫したものを蔵にしまい戸を閉じる時期。閉蔵(へいぞう)の季節とも言われ、万物も静かに閉じこもります。
動物たちが冬眠する様に、人間も蓄え、省エネモードになっていきます。寒さから身を守り、身体が冷えない様にすることも大切ですね。
早寝遅起きでゆっくりと休み、適度に動いて汗をかき過ぎることなく、冷たい物を食べたり飲んだりして身体を冷やさない。今日から少しずつ冬を意識しながら身体を整えましょう。
身体の動きで自然とポカポカに!
冬を迎え寒さを感じ出したら、日常の動作の中でも次の3つの動きの時に身体の使い方を意識するとポカポカしやすくなります。その日常動作は、「イスへ座る」、「ゴミを捨てる」、「床の物を拾う」です。
この3つはスクワットの動きになり、身体の中でも大きな筋肉の1つに当たる太ももの筋肉を主に使うからです。
運動をして身体がポカポカした経験があると思いますが、これは運動をする=筋肉を動かす際に多くのエネルギーが必要となり熱がうまれるからです。大きな筋肉を使う方が体の熱もよりうまれやすくなります。
では、床の物を拾う動きを例に、意識すると良いポイントをお伝えしましょう。
ポイントはこの3つです。
①曲げるところは、ひざの裏と股関節の前面
②お尻は後ろ、お腹を太ももに近づける
③手を使うのは最後
曲げずに手から物を取りに行くと、腰へ負担がかかりやすく痛める原因になりますのでご注意ください。寒くて筋肉がしなやかに動きにくくなる冬の時期は特に気をつけましょう。
私たちの体温は36℃台。低い人でも35℃台です。
寒くなってくると活躍する暖房器具の設定温度より、ずっと体温の方が高いです。
リモコンで1℃温度を上げる前に、日常の動作。「イスへの立ち座り」、「ゴミを捨てる」、「床の物を拾う」際に、身体の動きを意識してみてください。自然と身体がポカポカしてきますよ。
神楽商店街を歩く 増井弘海堂さん
敦賀は昔から北海道と大阪を結ぶ「北前船」の寄港地として栄えてきました。そのため北海道から運ばれる昆布を取り扱う昆布問屋が多く存在し、敦賀と言えば昆布と言えるほど昆布の種類や、加工品が豊富にあります。養生デザインのある神楽商店街には昆布問屋が2軒あります。今回はそのうちの1軒、来年創業100年を迎える増井弘海堂さんを訪ねました。
始まりは漢方のお店から
現在3代目となる増井隆司さんが店主を努める増井弘海堂さん。お話は奥様の智子さんにお聞きしました。増井弘海堂さんは、元は漢方薬局から昆布屋に転身されたそうです。漢方と聞くとさらに興味津々の私青木は、古来昆布は中国では不老不死の妙薬として伝わり珍重されていたという歴史を思い出しながらお話を伺いました。
江戸時代から昆布の中心として栄えた敦賀
敦賀といえば、昆布。生まれも育ちもここ神楽の私には昆布はとても身近な存在です。
時間や余裕がない時は、白ごはんにとろろこんぶを乗せて食べたり、具がないときは、とろろ昆布をといて簡単なお味噌汁にしたり。おにぎりにも、海苔の代わりにとろろ昆布をまいたり、具材に塩昆布を入れたりと日常の食卓に欠かせません。
また、以前紹介した気比神宮のお祭りの宵宮でもお昼ご飯や宴の傍にはおにぎりが用意されるのですが、そこでも、とろろのおにぎりが登場します。それを食べるのが楽しみだったな~と、昆布と育った幼少期を思い出しました。
昆布がどうしてこんなにも敦賀で有名で日常的に使われているのか?
それは江戸時代後期からの北前船の時代、北海道で収穫された昆布が北海道の松前から敦賀に到着し、京都大阪に運ばれたことに由来します。敦賀が本州における昆布の中心地として栄えるようになったのもこの頃からだそうです。
ちなみに増井弘海堂さんの昆布は、氣比神宮御用達。御饌(ぎょせん)としても選ばれています。
昆布のいま
増井弘海堂さんでは専門の職人さんと共に昆布を削って、おぼろ昆布を手がきで作っていらっしゃいます。
※ちなみに、とろろ昆布=機械でかいたもの、おぼろ昆布=手でかいたものです。
苦労している点を聞いてみると、ここにも地球温暖化の影響がありました。水温が上がってきたため昆布が育たず収穫量が減っているのだとか。そうなると価格も高騰しているのでなかなか手に入らず、必然的に価格も上がります。
今や、手軽なだしパックやうま味調味料が溢れる時代。昆布が食卓に必ずしもなくても良いものではないか?という不安も。人工の出汁に慣れてしまうと、天然の昆布出汁は優しく繊細なのでどうしても味を薄く感じてしまいます。
「味覚の敏感な若い方にこそ昆布の良さを知っていただきたい、もっと昆布と親しんでもらえると良いな」と智子さんはお話してくださいました。
増井弘海堂さんのこだわり
増井弘海堂さんで扱う昆布は、全て北海道で採れる天然のものです。やはり天然のものの方が味が濃く、しっかり美味しい出汁が取れるのだとか。
その年に仕入れた昆布は一年位内に敦賀市内の問屋さんにも卸しているとのこと。
また、炭火で焼かれた豆らくがんも増井弘海堂さんの名物です。豆らくがんとは、きなこを練って焼かれた落雁で、これも敦賀の名産品。
現在作っていらっしゃるお店は4店舗となってしまいましたが、お多福の顔がそれぞれのお店で違い、顔や味で食べ比べるのも楽しいです。
この豆らくがんも、なぜ昆布屋さんで?と長年の疑問だったのですが、大豆を昆布と同時に北海道から仕入れてきたからとのこと。
増井さんの豆らくがんは、きなことお砂糖を練ったものを押して、叩いて、出して、焙炉を使って炭火でじっくりと焼かれたもの。香ばしさと硬さも特徴の一つです。
美味しく簡単な昆布出汁の取り方
最後に昆布の美味しく簡単な出汁の取り方をお聞きしました。まずは昆布出汁をつくることに慣れてほしいとのことで、誰でもできる美味しい出汁の取り方を教えてもらいました。
作り方は本当に簡単!冷茶ポットに2センチ角に切った昆布を2~3枚投入して冷蔵庫に入れて一晩おいておくだけです。出汁をとった後の昆布は、細かく刻んで佃煮にすれば最後まで楽しめます。
増井弘海堂さんでは、出し昆布を2〜3センチ角の使いやすい大きさに切って下さったものも販売中。切る手間が省けるので私青木も愛用しています。ちなみにご家庭で昆布を切る時は、ガスの遠火で炙ると柔らかくなるので切りやすいとのこと。
ぜひ試してみてくださいね。
昆布の薬膳ポイント
昆布は余分な水分を排出したり、身体の中のしこりをやわらかく小さくするのを助けてくれるのを手伝ってくれます。
全体的に身体の中の滞りを巡らせるはたらきと言いましょうか。
これからの季節、寒くなると特になんとなく身体が重だるく、動くのも億劫に感じますね。そんな時にお味噌汁や鍋物、おでんなどで取り入れて巡りを助けてもらうのもおすすめです。
屋号 | 増井弘海堂 |
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