【鹿児島県薩摩川内市】地元愛を育み、挑戦し続ける風土づくりを / 株式会社O’s company 大上泰弘さん
インタビュー
鹿児島県薩摩川内市の『株式会社 O’s company』は建設業を柱として、HUB satsumasendai-city(以下:HUB)を拠点に飲食店や保育園、広告宣伝業等といった事業を展開しています。代表取締役の大上泰弘さんに現在の事業を立ち上げられた経緯等についてお話を伺いました。
大人の背中を見せる
薩摩川内で生まれ育ち、学生時代から建設業に携わりたい気持ちが強かった大上さん。
その背景には左官として働いていたお父さんの姿がありました。
「父の背中を見て育ってきたからか、大工の仕事をしたい。いつか父と一緒に仕事をしたい。気づいたら、そう思うようになっていました。」
「とび職人や大工など、様々な現場を経験しました。最初は地元で有名な棟梁の元で修行をし、厳しいながらもたくさんのことを学ばせてもらいました。」
「教えてもらった中でも今でも大切にしているのは「熱量をもって現場に臨む」ことでした。最初は仕事ができないから怒られていると思ったのですが、そうではなかったんだと気づかされました。」
その後、他にも色々な仕事を経験してみたい想いから上京。
飲食店等で修行を積み、数年後に薩摩川内市へUターンすることになります。
薩摩川内へ戻ってからはゴミ拾いの活動を一人で始めたといいます。
「理由はわからないのですが、父が昔からゴミ拾いをしていて、気がついたら僕も始めていたんです。」
「子どもと一緒に散歩しながらゴミ拾いをしているうちに、意識しなくても日常行為として自然にそのようなことをするマインドや風土が残っていてほしい。そう思うようになりました。」
「その後、地元のコミュニティ経由で少しずつ活動を一緒にする仲間が増えていったんです。人が人を呼んでという感じで、不思議と自然派生していきました。」
「活動をしていると「偉いね」と声をかけてもらうこともありました。でも、大事なのはその行為が偉いとかどうではないんです。」
「活動じゃなくても無意識にゴミを拾うとか、指定された場所に捨てるということを先ずは若者を巻込み、背中を見てもらえるような環境や風土をつくっていくことの方が大事だと思うようになりました。」
LOVE LOCAL
27歳になると建設会社を設立。
将来的には様々な分野の事業を展開したい。変化を待っていても何も始まらない。そんな想いから起業を決意したといいます。
「薩摩川内に戻ってきてから、僕自身もですが、地元の人たちの地元愛の強さを感じさせられました。色々なコミュニティにも入らせてもらって活動しているうちに「地元に貢献したい」と思うようになったんです。」
「活動だけではなく、色々調べたり勉強したりもしました。次第に将来に対する危機感も強くなってきて…。今動かなきゃ。でも、何をすればいいんだろう?そんな風に葛藤する日々でした。」
「地元の仲間たちとも相談しながら、2020年に新しい事業としてHUBを立ち上げました。1Fは飲食店、2Fがシェアオフィス、隣に企業主導型保育園の設置といった複合施設となっています。」
「1Fの飲食店の壁には“LOVE LOCAL”と刻んであります。まさに、地元愛を様々な視点で育んでいける場所にしたい想いも込めています。」
飲食店では地元の常連客が増えつつあり、そこから生まれる繋がりもあるそうです。
また、保育園では企業主導型であるため従業員や地元企業のお子さまを預かったり、病児の受け入れができるので、子育てをしながら安心して働ける環境づくりにも繋がっています。
さらに、シェアオフィスでは「自宅以外の働けるスペースがほしかった」「様々なフリーランスの人と繋がりができて刺激になる」等といった声もあり、新たな仕事づくりやコミュニティづくりのきっかけにもなっているところです。
「物心つく前のお子さんや学生さん等も色々入り混じった空間や時間を体感することで、大人になった時に地元での記憶や思い出が温かいものとして残ると思うんです。」
「大人だったらお子さんを預けてカフェ利用をすることで息抜きにもなりますし、普段出会わない人と出会うことで新しい価値観も知れるので、地元に対する視点も変わってくると思っています。」
「もっと地元の皆さんが足を運びやすいような接点づくりを少しずつ作っていきたいです。」
挑戦し続ける風土づくりを
今年2月に新しく『一般社団法人繋ぐ未来の大人』を地元の有志と立ち上げました。
未来の大人と共に、地域課題を解決し、世の中の幸せに貢献する。
それをミッションに『高校生食堂』等といった取り組みをされています。
「同志が「昔ドラマで放映された高校生レストランのような取り組みをやってみたい」と言ったことがきっかけで動き始めたプロジェクトが高校生食堂でした。」
「本当は一度だけの企画だったんですが、継続していかないといけないものだと感じ、仲間と法人を立ち上げ、しっかり継続していくことにしたんです。」
「高校生には仕入れからレシピ、企画、プロモーションといった一連の流れを任せています。簡単なサポートは僕らもしますが、基本は「何でこれか?」「これをどうやって進めていくのか?」を自分たちで考えてもらっています。」
高校生食堂を通して、成長したのは高校生だけではなく、大上さんたち大人も同様だといいます。
「1つのプロジェクト(事業)で食事を提供するにも、建築や農業の分野だったり、プロモーションをするデザインやウェブ分野だったり、色々なモノや人が繋がっているんだなと感じました。」
「プロジェクトは3ヶ月間といった短い期間で進めていくので、きついと感じる子たちもいます。それでも「また参加したい」と嬉しいことを言ってくれるんです。」
「もちろん、辛いと感じて次は参加しない子も出てくると思います。それも1つの選択としてアリですし、結果はともあれ、一生懸命アクションした自分自身を褒めてほしいです。その後の人生の中で辛いことがあったら、高校生食堂のことを思い出して前へ進んでほしい。そう思っています。」
「だから、無理に価値観を押し付けるんではなく、日常の中で少しプラスアルファ加えてするぐらいが長続きすると感じていて。」
「非常識が常識をつくっていくのではと常に考えています。「絶対無理だ」って100%ないんです。僕自身も挑戦し続ける人間でありたいし、周りの大人も子どももそう思えるような土壌や風土を地元の仲間たちとつくっていきたいです。」
屋号 | 株式会社O’s company |
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URL | |
住所 | 鹿児島県薩摩川内市神田町2-3 |
備考 | ●HUB satsumasendai-city HP ●繋ぐ未来の大人 HP https://www.tsunagu-mirai-otona.com ●企業主導型保育園おてんと保育園 ●高校生食堂 HP |