【山形市】観光にも、ちょっとした移動にも。「コミュニティサイクル」で街を巡る。
移動の足
2022年10月3日より、山形市において「コミュニティサイクル」のサービスがスタートしました。市内には計12か所のサイクルポートが設置され、85台の電動アシスト自転車を導入(2023年3月までに40か所、180台に拡大予定!)。スマホひとつで借りられて、どこで借りて返してもOK。必要なときに必要な時間だけ使うことができる、便利で快適な移動ツールをぜひ試してみませんか?
車、バス、鉄道に次ぐ 街を巡る新たな“足”
山形での日常の移動手段といえば車ですが、東京で暮らす私にとって、車という存在はそこまで身近ではありません。普段の移動手段は8割が電車であとはバスか、もっぱら歩くようにしています。ときどきだれかの車に乗せてもらったり、稀にタクシーを使ったりすることもありますが、私自身、免許は持っているものの普段はほとんど車に乗らないので、運転に自信がないというのが正直なところ。
中心市街地などの移動であれば、100円で乗車できる便利な循環バス「ベニちゃんバス」があるし、コミュニティサイクル導入前までは無料のレンタサイクルがあったので、車に乗らなくてもそれらを使うことでそれなりに回ることはできました。とはいえど、山形に滞在しながらの移動手段となると話は別。車を使わないとなかなかに大変だったりします。行動範囲も制限されてしまうので、行きたかったところに行けなかった、なんていうこともしばしば。
今年の夏、無料のレンタサイクルを利用したときのこと。山形駅前からあこや町方面を目指して走っていると、地味にしんどい上り坂が。車で走っているとあまり気が付かないのですが、山形市内は意外と地味な坂が多かったり、土地の高低差があるため道路のアップダウンが激しかったりするような気がします。久々の自転車かつ猛暑日、そして年齢的な体力低下……と、さまざまな要因が重なったこともありますが、普通の自転車で市内の広域を回るというのは、けっこう大変だなあと感じました。他の地域でも例があるように、有料でも選択肢として電動自転車があれば便利だろうなあ。そんなふうに思っていた矢先、この秋から山形市でもついに電動アシスト自転車による「コミュニティサイクル」を導入。
車、バス、鉄道、そしてこの電動アシスト自転車という、街を巡る新たな第4の足。今回は、コミュニティサイクルについて利用者目線で感じたことと、訪れた場所をお伝えしていきたいと思います。11月上旬、ちょうど紅葉が美しいシーズンに、山形の街を巡りました。
■フォーラム山形
まず向かったのは〈フォーラム山形〉。私が小学校高学年ぐらいの頃、初めて行った単館系の劇場がこの映画館でした。映画館そのもの、なかでも単館の劇場という存在が好きなので、上映している作品を鑑賞することはもちろん、建物そのものをただただ眺めているだけでも楽しいと思ってしまいます。シネコンにはシネコンの楽しみ方がありますが、こうした映画館ならではの楽しみ方もたくさんあります。
〈DATA〉
フォーラム山形
山形市香澄町2-8-1
023-632-3220
https://www.forum-movie.net/yamagata/
■SLOW JAM
フォーラムのあとは、すぐ隣にあるカフェ〈SLOW JAM〉へ。私の場合、映画館とカフェというのは毎回セットになっていることが多く、映画鑑賞の前後はこれまで幾度となくカフェや喫茶店で過ごしてきました。チラシやパンフレットを眺めたり、作品について一緒に観た人とだらだらと話し込んだり。映画館で “映画を観る”ということは、作品を鑑賞することの延長上にあるもの、映画を観る前や観た後の時間の過ごし方ともつながっていて、これこそがサブスクなどでは得られない映画体験だと思っています。
カフェの情報をもうひとつ。フォーラム山形にかんする資料や劇場案内「フォーラムだより」のバックナンバーを読みたい人は、文翔館近くの〈Playground Cafe Box〉にたくさん所蔵されているのでこちらもおすすめです。映画好きの店主による、映画パンフをはじめとした膨大な数の映画関連資料にふれられるので、時間があるときにどうぞ。
〈DATA〉
SLOW JAM
山形市香澄町2-8-1(フォーラム山形 駐車場入り口左側)
023-687-1320
https://www.slowjam.info/
■桜舎(さくらや)
山形駅からは車で10分ほどの距離にあり、ちゃんと調べればバスで行くこともできるものの、なかなか気軽に行くことができなかった〈桜舎(さくらや)〉。パンがおいしく、ほかにも〈桜舎カフェ〉(※現在はテイクアウトのみ)や日用品やオリジナル雑貨を販売する〈桜舎商店〉もあります。電動自転車のおかげで、車がなくてもふらっとここに来られるようになったのが、私にとっては大きなメリット。季節や気候の良いときは、すぐ近くにある〈鳥居ヶ丘公園〉でのんびりしながらパンをいただくのも良さそうです。
〈DATA〉
桜舎(さくらや)
山形市鳥居ヶ丘26-27
023-633-1903
http://watashi-no-kaisha.net/
■悠創館
〈桜舎商店〉に置いてあった「やまがた障がい者芸術作品公募展」のチラシが目に留まり見ていると、スタッフの方が「ちょうど悠創館で始まったばかりですよ」と教えてくれたので、さっそく向かうことに。東北芸術工科大学の少し奥に行ったところの、見晴らしの良い丘の上にある悠創館。このあたりのエリアには車で行くもの、というイメージがあったものの、電動アシスト自転車があれば、車がなくても行ける範囲内ということがわかりました。芸工大は坂を登ったところにあるので、そこを乗り越えれば帰りはスムーズ。
展示自体はボリュームがあり、絵画から立体作品まで幅広い内容でした。とても良かったので、いずれまたどこかでご紹介できたらと思っています。
〈DATA〉
悠創館
山形市上桜田366
023-635-6031
http://park.montedio.co.jp/yuso/
■道中にて
移動していると、車に乗っているときには見過ごしていた風景がいちいち飛び込んできて、足を止めざるを得ない場面がたくさんありました。名所といわれるスポットを巡るのも良いけれど、自分の足で見つけた「名もなき風景」と呼べるものこそ、不思議と長く記憶に残っていくものです。自転車は、街の日常をとらえる目線とも相性が良い乗り物なのかもしれません。
山形市に暮らす人にも、市外から訪れた人にも、街めぐりの良き相棒になりそうな「コミュニティサイクル」という選択肢。冬季は積雪や路面状況により利用ができない場合がありますが、季節の良いときにぜひ利用してみてください。くれぐれもご安全に、交通ルールにはお気をつけて。
INFORMATION
山形市コミュニティサイクル ホームページ
https://interstreet.jp/yamagata/
その他詳細はこちら(山形市ホームページ)
※基本的に自転車は常時設置しているので、通年での利用が可能。但し、冬季の積雪状況により一時的に撤去する場合もある。その際は「ecobike」アプリ登録ユーザー宛に通知予定。
※支払方法はクレジットカード・キャリア決済(基本料金:50円/15分、1,000円/1日定額プラン)。尚、山形市蔵王温泉エリアのみ料金が異なる(基本プラン:500円/3時間、以降200円/1時間)。
文:井上春香