【山形/連載・最終回】穏やかな休日のための音楽24
地域の連載
「穏やかな休日のための音楽」では、毎回山形に縁のある南米のアーティストとそのアルバムを紹介しています。
コロナ禍でここ3年間は何の活動も出来ませんでしたが、それまでの20年間、多くのアーティストを山形に招聘致しました。20年前の山形には、ブラジル音楽のアーティストが来るということが全くなく、それを何とかしたいという思いで我々なりに努力してきたつもりです。元々ブラジル音楽を楽しむための会として結成された当会であるだけに、ギンガやジョアン・ドナートなどブラジルの偉大な音楽家を山形に招聘出来たことは、いまだに信じ難いことであり大きな喜びでしたが、その中でも以前から大ファンであったミナス音楽の巨星トニーニョ・オルタの公演を開催できたことは忘れられない思い出です。トニーニョ・オルタのプロフィール等はこちらの記事を参考にしてください。
以前から何回も来日しているトニーニョ・オルタですが、我々も東京まで行って彼のライブを経験しました。音源としてレコード等で聴いてももちろん素晴らしい演奏なのですが、生で体感するといわゆるミナス音楽の浮遊感のみならず、大きな体から発せられる音楽の骨太の力強さ、ヴォリューム感に圧倒されました。それ以来彼の公演を山形で開催するのは我々の目標の一つとなりました。しかし長い間、残念ながら招聘元の方のメガネに敵わず、無視されて実現の目処もありませんでした。ところが2019年、月刊ラティーナ誌(現e-magazine Latina)からお話をいただき、やっとトニーニョの山形公演に漕ぎ着けました。
山形公演は基本的にトニーニョのソロでしたが、一緒に来日していた姪でシンガー・ソングライターのDiana Horta Popoffと彼女のパートナーであるベーシストのMathias Allamaneもゲストとして数曲参加していただきました。山形には公演前日に入っていただき、拙宅でウェルカム・パーティーを催しましたが個人的には久々に緊張し、でも彼に会うのが楽しみでなりませんでした。しかし悲しいことに、その日はとてもお疲れのようであまりご機嫌が良くなかったようです。しかし拙宅に彼が来たことだけで私は本望です。山形の誇るシャインマスカットだけは取り合いになるほど好評でした。
文翔館での公演はもちろん文句なし。音だけでは決してわからない、トニーニョの真髄を感じていただけたと思います。アンコールでのヘンリー・マンシーニの「ムーン・リバー」では、泣き出す人も続出しました。
注:山形公演の動画ではありません。
さて今回紹介するのはパット・メセニーも参加したトニーニョの1980年のセカンド・アルバムで、歴史的名盤「Toninho Horta」です。「Aqui, Oh!!」、「Manoel,O Audaz」、「Bons Amigos」 を始め代表的名曲を収録し、唯一無二の旋律とハーモニー、ギターを中心とした透明で浮遊感溢れるサウンドを満喫できるブラジル音楽ファン必携の作品であり、トニーニョの世界観が凝縮されたアルバムです。穏やかな休日に、温かいお部屋で聴いてみてください。
試聴Youtube
さてこの連載も今回が最終回です。2年に渡りお付き合いいただきありがとうございました。
そしてもう一つお知らせを。20年余りにわたって様々なアーティストを山形に招聘して参りましたが、この長いコロナ禍の中で、そろそろ潮時との考えに至りました。私個人は、ライブの招聘から撤退いたします。今後は当会の若い人達が引き継いでくれれば良いのですが、無理強いする気はありません。長い間当会主催のライブに参加していただきありがとうございました。これからも山形に素晴らしいアーティストが来県することを祈って止みません。