家族で、キャンピングカーで、山形の日常を冒険しよう!
移動の足
移動手段を変えるだけで、いつものまちの風景の表情も変わる。
車でビュンと通りすぎては見逃してしまっていたはずの景色が、自転車の速度だと急に見えてきたり。歩くことによって、発見や気づきがあったり。スピードや視線の高さがわずかに変化するというただそれだけのことで、わたしたちの内部には新しいアンテナが立ちあがり、知覚がめざめる。
さて、そんな文脈でこれからここで紹介するのは、キャンピングカーだ。いったい、キャンピングカーに乗ると、山形というこのわたしたちのまちはどのように見えてくるのだろうか、興味深い。というかそもそも、住み慣れたじぶんのまちでわざわざキャンピングカーに乗るという発想はふつうなかなか持ち得ないけれど、そんなトライアルを可能にしてくれるサービスがあるので紹介したい。
RISE RENTAL CAMPING CAR(ライズ レンタル キャンピングカー)は、山形市で、その名の通り、キャンピングカーのレンタルサービスを提供している。
実際に車両を見せてもらうと、通常わたしたちが「キャンピングカー」という言葉からイメージするものとはちがい、それはふつうのフォルムをした大きめのワンボックスカーだ。まさにその見た目通り、ふつうの乗用車感覚で運転できるのだという。車の運転があまり得意なわけではないわたしにとっては心理的ハードルがぐっと下がって、救われたようなラクな気持ちになれて、ありがたい。
ライズレンタルキャンピングカー代表の高橋良さんによると、
「キャンピングカーにもいくつか種類があり、よくみなさんがイメージされるのは、トラックベースのいわゆる『キャブコン』というもの。それに対してわたしたちのものは、バンをベースにコンバージョンした『バンコン』と呼ばれるタイプのものです。機動性がよく、乗り心地が快適なのが、このタイプのいいところ。その点はすごくお客様に喜ばれます。このキャンピングカーは犬や猫を乗せていただくのもOKなのですが、揺れも少ないので動物たちも安心です。高速運転でも横風に煽られることもありませんし、初心者でも運転しやすいですから、キャンピングカーの入門編としておすすめです」
設備も充実している。
車内には電源があり、電気ケトルがあり、寝床があって、小さなシンクもある。FFヒーターが付いているので、やまがたの冬でも夜でも車内は暖かく、快適に過ごすことができるという。なるほど、これはもう、ミニマムな移動式ホテルだ。「小さなお子さんのいる家族なら5人で寝ることも可能ですよ」と高橋さんは言う。
「先日ご利用になったご家族のお子さんたちからは、返却時に『ここに住みたい!』というお声をいただきました。ご家族で過ごす何気ないような時間もここでなら濃密なものになりますから、きっと特別たのしい思い出になったのではないでしょうか。キャンプだけでなく、お子さんのお誕生会やクリスマスパーティに使っていただくようなケースもあるんですよ」
なるほど、そうか。家族でこの車に乗りこんでしまえば、もちろん遠くまで行くのもすごく楽しそうだけど、たいして遠出しなくても、むりに自然のなかに入り込まなくても、どんな近場でも、もしかしたら道の駅の駐車場でさえも非日常になる。そのいつもとはまったくちがう特別な家族の時空間は、こどもたちの心に強烈なインパクトを刻むらしい。
さらに高橋さんからは「お試し移住にもいいのでは?」というご提案もいただいた。
「移住をご検討されている方にキャンピングカーを利用してもらえれば、滞在してみたい場所や体験したいことを自由に、時間も気にせず楽しんでいただけるのではないでしょうか。たとえば、山形の街中を気の向くままに移動できますし、どんなに郊外まで行ったとしても宿泊の心配をしなくていいので、より深く、より奥の方まで、山形のことを知ってもらえると思いますよ」
なるほど、おもしろい。
さて、じぶんだったら、このキャンピングカーに乗って、いったいこの山形のまちをどんなふうに楽しむだろうか。この慣れ親しんだはずのいつもの山形のまちでどれだけ新しい景色を、まだ味わっていない体験を、どんな濃密な時間を求めることができるだろうか。トライしてみたくもあり、それは逆にじぶんが試されているようでもある。
ぜひみなさんも、いろいろ想像して、いろいろな楽しみ方をトライアルしてみてはいかがでしょう。宿泊と移動が一体化したこのキャンピングカーの、あなたらしい楽しみ方を教えてください。
ライズレンタルキャンピングカー
https://www.rise-rentalcampingcar.com/
写真:伊藤美香子
文:那須ミノル