【金沢】「美しさを視ることができる目と、感じることができる心」/「香林居」スタッフ募集
求人情報
金沢のブティックホテル「香林居」では現在スタッフを募集中。今回は香林居を企画・プロデュースをした「株式会社 水星」代表・龍崎翔子さんのインタビューを中心に、会社として目指す姿や、香林居において求められる人物像についてうかがってきました。
※2023年2月時点の情報となります。最新情報は香林居インスタグラムにて。
金沢の中心市街地・香林坊に、ホテル「香林居」がオープンしたのは2021年。北陸新幹線開業以来続いていたホテルの建設ラッシュが、コロナ禍で凪のように静まり返っていた時期だった。
「土地に充満する空気が凝縮されて文化となり、洗練された美へと滴下していく姿を。異世界や異文化が融和し、新たな美と平穏が創出されていく様を。」(案内文より一部抜粋)この文面を具現化したような空間は、増え続けるホテルに食傷気味だった私たち市民にも、新鮮な印象を与えた。しかもそれは「コンセプト」といった概念ではなく、感覚器官からじんわり滲み入るようなアプローチで。
その香林居を運営するのは、「HOTEL SHE, KYOTO」などを運営し、日本のホテルシーンに新たな風を吹かせている「株式会社 水星」(旧社名:L&G GLOBAL BUSINESS)。代表である龍崎翔子さんが東京大学在学中に起業したことでも知られ、ホテル業界の風雲児・若き起業家として彼女を知る人も多いはず。けれど同時に、香林居においては「世界観を守りたい。この場に私のイメージがつくのはふさわしくないから」とメディア露出を控えてきたこともあり、運営者として龍崎さんが直接結びついていない人も多い。今回はスタッフ募集ということで、彼女がホテルを営む理由、そして香林居に込めた想いをうかがった。
「ホテル」を通して、世の中に「新しい選択肢」を実装する
「株式会社 水星」をカテゴライズするなら「ホテル運営会社」になる(と思う)。しかし、そもそも水星の定義する「ホテル」がかなり広範で、一般的なホテル像とは少し異なる。
まず龍崎さんの名を広く世に知らしめた「HOTEL SHE, 」。各部屋にレコードプレーヤーと、オンラインのレコードショップ「pinks vinyl」がセレクトしたレコードが1枚置かれ、フロント横のレコードラックからも自由に借りて聴くこともできる、いわば「レコードがあるホテル」。音楽やアートを愛するミレニアル世代からの反響が大きく、「ホテル巡り」というカルチャーを浸透させた。
水星がつくるのは「実体としてのホテル」に留まらず、ホテルにまつわる「システム」や「コンテンツ」などソフト面にも及ぶ。
2018年には自社予約サイト「CHILLNN」を開発。「お客さんの宿泊体験は『予約』の時点で始まっているはずなのに、そこにホテルが関与できないのはどうなんだろう」という疑問から生まれたサービスは、他社へも提供され現在は600社以上が導入してる。
「既存の予約プラットフォームでは、ホテルを価格などのスペックで比較させ、『いかにお得か/いかに賢い選択をしたか』をお客様に訴求するつくりになっています。けれど私たち含め、全てのホテルがその世界観で生きているわけではありません。自分たちの纏う“空気感”や、大切にしている“思想”をちゃんとお客様にご理解いただいた上で予約していただけるシステムを作りたいと考えました」。
また「本当の意味で、目的地になるホテルをつくろう」という想いから始めた、一泊二日の「イマーシブシアター(没入型演劇)」。チェックインからチェックアウトまでを一つの演劇として捉えた宿泊体験は、閑散期でも稼働率99%という驚異的な数字をたたき出し、黒字化が難しいといわれる演劇業界からも注目を集める事業となっている。
2022年には産後ケアに特化し、助産師や保育士が常駐するホテル「HOTEL CAFUNE」をオープンさせたりと、その事業展開は実に自在で、ホテルの定義を拡張し続けている。
「私たちのやっていることは、事業としてはかなり幅があるので、なかなか一言では説明できないのですが。『ホテルという空間を通じて、世の中にない選択肢を実装していく会社』という風に思っていただくと、わかりやすいのかなと思います。世の中っていろんな選択肢があるように見えて、実際は選択肢が集中している領域と、全くない領域がある。全くない領域に関しては、選択肢がないがゆえに存在すら気付かれていないんですよね。」
自分たちの感覚を頼りに、まだ認知されていないエリアを感知し、見えない扉を開けていく。そのホテル運営手腕と実績が評価され、水星では観光PRや新規事業開発・ブランディングなど、ホテル事業に留まらないクライアントワークも年々増加し、事業全体としてホテル事業とクライアントワークが現在では半々の割合になっているという。
「ほんとはホテル領域だけやるつもりだったんですけどね(笑)。ホテルって、それだけ汎用性のある業界なんだと思います」。
ホテルはメディア。
人の暮らしにまつわる選択肢を、ホテルなら直接提案できる。
これだけ領域を横断する事業展開をしながら、なぜそれが「ホテル」でないといけなかったのか。小さい頃に両親と経験したアメリカ旅行で、どこも似たり寄ったりのホテルに退屈した経験から「ホテル経営者」になることを志したという龍崎さん。そんな彼女にとっての「ホテル観」とは。
「私は、ホテルって『メディア』だと思っていて。それは『何かと何かを繋げる媒体』という意味で。繋げるのは『人と人/人と土地/人と文化』の三つがあると考えていますが、特に『人と文化』という側面に注目するならば、ホテルは『ライフスタイルを試着できる空間』だなと感じています。
泊まるとなると少なくとも十何時間は滞在しますし、ホテルはハーフプライベート/ハーフパブリックな空間。そこに運営者の意思が介在する余地があって、お客さんの生活を“ゆるく設計”することができるのではないか。そう思うと、人間の生活にまつわる全てのものが、ホテルという空間を通してコーディネートすることができるんですよね。」
「それは『レコードプレーヤーっていいですよね』といったカルチャーや物へのレコメンドであったり、あるいは 『産後に自分をケアする/愛する』という価値観だって提示することができるかもしれない。『ホテル』という媒体があれば、その全てを、お客様に直接提案していくことができるんです。もしそれがなければ、既存のメディアを使って画面越し伝えるしかない。そう考えると、『まだ世にない選択肢をつくる』という私たちの目的と『ホテル』って、すごく相性が良いんです。だから私は、ホテルをやっているのだと思います」
今の時代に求められる「桃源郷」の姿
水星が得意とするのは、土地の空気感や文脈を読み解き、それを現代のニーズや課題などの“隠れた水脈”と合流させ、新たな世界観を提案するホテルづくりだ。しかもその判断基準となるのは、マーケティングなどの外部軸ではなく、龍崎さんはじめスタッフの個人的かつリアルな感覚に起因する。同社が手がける5軒目となるホテル「香林居」においては、「処方」がそのキーワードとなった。
「金沢って、メディアから受けるイメージとしては、九谷焼や加賀五彩、百万石文化といった、豪華でビビッドなイメージがあったんです。でも実際に金沢を何度も訪れていると、そのイメージとのギャップがあるように感じました。もっと“ペールトーン”というか。全体的に彩度が低くて、けれど透明感があって、光が綺麗。それでいて、どこか靄がかっているような…。
それって、今の時代に求められているトーンとも近しいのではないかなと。また、香林居のプロジェクトが進行していたのはコロナ禍でした。そういった状況下で、現実から乖離したユートピアというか、より内省的な世界観が求められているように感じていました。何よりも、私自身がそんな場所を欲していたんです」
龍崎さんが、金沢・特に香林坊という土地の歴史や風土を紐解いていくうちに、向田香林坊という安土桃山時代の僧の存在、そして彼が作った目薬が藩主・前田利家の目の病を治したという物語に出会い、「処方」そして「蒸留」というアイディアへと抽出されていく。
「そこで、ホテルに蒸溜所を設けて、この土地の自然素材を蒸留して空間を纏わせられないかと考えました。それはインポートされたものではなく、地元の野山にある素材を使った、野生的だけれどリアルな香りが相応しいなと」
「今の時代、全てが“規格化”されていますよね。消費体験としても、完全に洗練され切った既存のプロダクトの形に『自分の方を合わせていく』というのが普通になっていると思うんです。けれど、もっとそこに“柔らかさ”があってもいいのではないかと。“あなたのために、ここがある”というか。香林居はそういう場所にしたかったんです。
オープニングメンバーとも共有していたのが『ここは現代の桃源郷なんだ』ということ。金沢でありながら、金沢とはまた違う世界に迷い込んでいく。その土地の住人に親切にもてなされ、また日常に戻れば夢のように忘れてしまう体験。けれどふとした瞬間に、温かなニュアンスとともに思い出すようなー…。私にとっての『処方』ってそういう“人と人の関係性”でもあるなと思ったんです」
取材中、ホテル内を移動していると、親しげに会話するゲストとスタッフの姿があった。それは「従業員」と「お客様」といった主従の関係性ではなく、かといって「お友達」という近さでもなく。「村人のもてなし」という龍崎さんの表現がしっくりくる、より素朴で人間的な距離感。スタッフの日々の振る舞いによって、龍崎さんの理念はこうして現実に実装されている。
「ハコ」ではなく、「空間」を形づくるのは人だから
一般的なホテルであれば「おもてなし」や「まごころ」といったホスピタリティの文脈で語られがちなスタッフ募集。けれど「ホテルの正攻法」ではないやり方で成功を納めてきた水星において、スタッフに求められる資質とは、一体どんなものだろう。
「あくまで私たちの会社において、という話ですが」と前置きした上で、「ありふれたものでないところで言うと、『美意識』だと思います」と龍崎さん。
「それはオシャレかどうかといった表面的なことではなくて、『美しさを視ることができる目と、感じることができる心』というか。空間って、やはりそこにいる人によって形づくられていくものなので、どれだけハコを良くつくっても、そこにいる人の美意識が通っていないとすぐダメになってしまうんです。ホテルでは、自分の感じる美しさをお客様にお裾分けすることができて、そして逆にお客様によっても自分の眼差しを磨かせていただける。そういう関係性がある、すごく素敵な場だと思うんですよね」
「愛せるものを、つくろう」
「お客様をご案内する際に、香林居における“自分の好きなポイント”をスタッフ自ら語り出すんです。これは強制してるわけでも、マニュアルでもなんでもなんでもないのですが」と笑うのは、副支配人の篠原彩音さん。
「スタッフが香林居のことを好きでいてくれて、働いていることを誇りに思ってくれている。それはこの空間が、『愛せるものをつくろう』という私たちの理念を体現した場になっているからなんだと思います」
篠原さんは龍崎さんの存在に衝撃を受け、新卒で水星に入社。前任地では若くして支配人も務めている。「大企業なら専門部署に配属されて、担当する部分の専門性を高めるといった働き方になるのかもしれませんが、ここでは全く違います。自分で課題を見つけて、手探りで解決していく。専門性に縛られていない分視野が広がりますし、成長幅も大きいと思います。」
今回の募集では雇用形態・職種ともに、幅広い働き方を選ぶことができるのも魅力のひとつ。
「ホテルは、柔軟な働き方ができる職種の一つだと思っています。お子さんがいらっしゃる方がクリンネススタッフとして1日4時間だけで働いたり、または学生さんが授業の前に朝だけ入るといった働き方も可能です。そして、ホテルは業務内容も多岐に渡ります。ホスピタリティスタッフの場合、接客・予約管理、バックヤードや現場の改善、アルバイトの育成など、表に見えている接客以外のお仕事も、実はたくさんあるんです」
「ホスピタリティ経験があるかどうかは、あまり重要ではありません」と篠原さん。実際に、水星で働くスタッフのほとんどが、他業種から参入してきているという。(多彩なスタッフ紹介はこちら)
香林居のホスピタリティスタッフとして2年目になる福田大樹さんも、元々は料理人だったそう。ホテルで働く中で隠れた文才が見出され、現在は香林居のSNSのコピーライティングは彼に一任されている。
「もともと文章を書くのは好きで、個人のTwitterなどでは投稿していたのですが、まさかこうして仕事になるとは(笑)。今僕はホスピタリティチームに所属していて、そこではアルバイトさんの育成も担当しています。得意なところを伸ばして、苦手なところはサポートする。今はそこにもやりがいを感じていますね」と充実した笑顔を見せる。
「ゆくゆくはまた料理をしたいと考えていますが、まだ自分の中で『これ』という一本が定まっていない状態で。だからこそ、ここで働きながいろんな体験をさせていただき、『今自分が持っているものは何か、今後どんなスキルが欲しいのか』ということを探して、磨いていきたいと思っています」
自分の選択肢を、広げよう
「昔は辞めて欲しくないと思っていましたけど、今は辞めた後に『さらにキャリアアップしていってほしい』という気持ちの方が強いですね」と龍崎さん。常に「選択肢の広さ」を大切にする龍崎さんの眼差しは、社員のキャリア形成にも注がれている。
「ホテル業界で働いて、そのままホテル業界の転職市場に戻るのでは、同じことの繰り返しですよね。うちでは社内にいろんな事業部があるので、ファーストキャリアでホテルで働いた後に、セカンドキャリアでセールスや、カスタマーサクセスの経験を積むこともできるかもしれない。それは自分の市場価値をあげるチャンスにもなるし、何よりそのほうが人生の選択肢が広がって楽しいですよね」
大切なのは、美しさを視ることができる目と、感じることができる心。建築やインテリア、アートディレクションに至るまで、多くの人々の美意識が注がれた香林居という空間。そんな場に身を置いて仕事ができたなら、精神衛生上にも良さそうだ。
自身の美意識で、香林居を生きた空間としてアップデートし続けていける、新たなメンバーの応募をお待ちしています。
社名/屋号 | 香林居 |
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URL | ▼「香林居」ホームページ |
募集職種 | ・ホテルマネージャー候補 |
雇用/契約形態 | (1)正社員 |
給与/報酬 | (1)ホテルマネージャー候補 (2)ホスピタリティスタッフ (3)(4)フルタイム/パートタイムアルバイト |
勤務地 | 香林居 |
勤務時間 | ▼勤務時間 |
応募資格 | ▼応募資格 |
選考プロセス | 書類選考後の面接(1次〜2次) |
備考 | ▼ 採用応募・お問い合わせはこちらから |