【岐阜県】柳ヶ瀬商店街の人気マーケット、 サンビルからはじまった「まち」づくりとは。
インタビュー
昔からの岐阜の繁華街、柳ヶ瀬商店街で毎月開かれる定期市といえば、サンビルの愛称で親しまれる「サンデービルヂングマーケット」です。現在、出店者は岐阜県内にとどまらず、150を超える手作り・手仕事が集まるマーケットに成長。その立ち上げから運営までを手がけるミユキデザインの末永さんに話を聞いてきました。
【real local名古屋では名古屋/愛知をはじめとする東海地方を盛り上げている人やプロジェクトについて積極的に取り上げています。】
岐阜にはこんな面白い人たちがいる!
サンビルがスタートしたのは9年前の2014年。それまでにもその後にも、イベントを含め様々な取り組みにチャレンジしてきた末永さん。
岐阜県で生まれ育ち、大学から東京に暮らしていた末永さんが岐阜に戻ってきたのは20代後半のこと。岐阜市内の設計事務所で会社員として仕事に携わる中、あるイベントの立ち上げに参加したことがすべての始まりだったそうです。
「当時、東京や名古屋でデザイナーズウィークがあり、岐阜でもやらないかということになりました。都市部と同じようなことをやっても、面白くないので、岐阜らしく、岐阜にしかない面白い人を集めてお祭りみたいなイベントにしようと。その会議に誘われて顔を出したのがきっかけで、空間チームとして参加することになりました。」
2009年にスタートしたこのイベント「ギフレク(Gifu Re-creation)」を通じて、デザイナーやカメラマンなど同世代のクリエイターたちと出会いがあり、岐阜にはこんな面白い人たちがいるんだ!と刺激を受けたそうです。みんな全力で楽しんでいて、その熱量はものすごかったのだとか。
ギフレクの企画のひとつである、「ジュラシックアーケード」は柳ケ瀬商店街のイベントとして今も続いています。ほぼ原寸大のリアルな恐竜が商店街に何頭も現れ、多くの親子連れが訪れます。子供たちは大興奮し、商店街の人たちも子供のいる風景にとても喜んでくれて、毎年やりたいと言ってくれたのが嬉しかったと当時を振り返ります。
柳ヶ瀬を知らない若い世代に向けて
末永さんが、イベントを通じて気になったのは、その日までは盛り上がっても、翌日からは普通の日常に戻っていくということでした。
2012年にはパートナーと「ミユキデザイン」を立ち上げ、2014年には柳ヶ瀬商店街の西隣にある美殿町商店街で、古いビルをリノベーションしたシェアオフィス「まちでつくるビル」を企画し、自らの事務所も入居。このエリアでお店を開いたり、事務所を構えたいと思ってくれるような場所を作りたいと考えるようになり、イベントの先につなげる環境づくりを始めました。
同時に、柳ケ瀬商店街には若い世代のお客さんが少なく、同世代の人たちにもまちにお出かけして欲しいと、若手商店主たちと年一のイベント「ハロー!やながせ」をスタート。
商店街にある飲食店、雑貨屋やデザイン事務所をはじめ、商店街が大好きなライターやカメラマンなどでチームを組み、自前で企画運営をしていたそうです。
「趣向を凝らした企画のおかげで、イベント期間中は若い人や親子連れで賑わいました。楽しかったけど、それぞれの負担も大きかった。3年目を迎える頃、何のためにイベントをするのかという本質的な話になって、みんなでこのまま継続するのは難しいと判断しました。
思いだけでも、運営サイドが負担を感じ過ぎても続かない。あと、一過性のイベントではやはりまちに変化を起こすことはできないので、戦略的で継続的な取り組みが必要だと痛感しましたね。」
他地域での取り組みなどをリサーチする中で出会ったのが、まちのファンをつくるマーケットです。末永さんたちは自分たちが主体的でありながら、商店街組合と協働し、まちの事業として取り組めるような仕組みづくりを進めていきます。
まちのファンづくりを本気でやりきる!
戦略的なまちのファンづくりで、商店街を若手の創業に選ばれるまちにすることを目標としてサンビル実行委員を立ち上げます。
中心市街地活性化に取り組む「岐阜市にぎわいまち公社」の支援を受けたり、国の制度を使うなどし、2014年9月にライフスタイルにこだわりのある人のマーケット・サンビルが開催されます。
「マーケットは手段で目的ではないよ、とよく言っています。マーケットを通じて、まちのファンができる。ファンの多いまちにお店を出したくなる。良いお店がまたお客さんを呼ぶ。この好循環を作ることが大事なんです。すべて人ですよね。人がいなかったら何も起きないので、人がいる状態をどう作るかが重要だと思っています。」と末永さんは言います。
サンビルを続けることでまちにお客さんが来るようになり、商店街の遊休不動産の利活用にも取組める環境が整い、末永さんたちは、サブリース事業をするために「柳ヶ瀬を楽しいまちにする株式会社」(まち会社 )を立ち上げました。
店づかいだけじゃない、商店街のつかい方を
今、サンビルの運営担当は20代の若手スタッフたちで、学生や会社員などボランティアスタッフもいます。彼女らを始め、まちには思いのある若い人が増えていると末永さんは言います。仕事をする人、店のお客さん、住人やその友だちなどまちとの関わり方はそれぞれだけれど、10年前には見られなかった風景なのだとか。
「スタッフの中には、商店街内に住んでいたり、朝の掃除に参加したりして、近所のおばちゃんからお菓子をもらっていたりするんです。孫みたいだって言われてて。私には築けていないまちとの関係性があって、すごくいいなと。まちの雰囲気が少しずつ変わってきていると実感するし、とても嬉しいですね。
こうした流れが生まれてて、自分の役割も変わっていくように思います。もともとは、まちの小さな創業を生み出していくことを目標にサンビルを始めたけれど、創業だけじゃなくて『暮らし』もあると。
具体的には、店として使いにくい2階以上の活用は進んでいないので、それを解消して、暮らしと商いが混在した形ができたらもっと面白くなっていくと思います。すでに、2つのシェアハウスを手がけていますが、まちにもっとみんなの居場所を作っていきたい。店づかいだけじゃない、商店街のつかい方を提示していけたらいいですね。」
末永さんにとっての「まち」とは、人や情報が集まっていて、何かに出会える期待感のある場所。まちにいろんな選択肢を増やして、コミュニケーションのポイントをできるだけたくさん仕掛けていきたいと話してくれました。