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【鹿児島県薩摩川内市】「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会」開催レポート【前編】

イベントレポート

2023.03.15

2023年3月3日(土)に鹿児島県庁18階にて、「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会2022-2023」が開催されました。内容は「サーキュラー都市」の実現を目指す薩摩川内市と、企業・研究者・開発者・デザイナーが協働で進めている取り組みで、地域資源を活かした「サーキュラーデザイン」が基軸の3つのプロジェクトについて報告されました。本記事では、当日のレポートいたします。

(はじめに)薩摩川内市とは

【鹿児島県薩摩川内市】「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会」開催レポート【前編】
薩摩川内市の離島・甑島にある、2020年に開通した全長1,533mの「甑大橋」。中甑島と下甑島を繋ぐ

鹿児島県の北西部に位置し、県内最大の面積を誇る薩摩川内(さつませんだい)市。

国定公園の離島・「甑島(こしきしま)」や、市本土を悠々と流れる一級河川の「川内川」、ラムサール条約に登録された「藺牟田池(いむたいけ)」など、豊かな自然に恵まれた四季折々の食や文化、歴史が楽しめるまちの一つです。

一方で、産業や経済を支える交通のインフラ整備も進んでおり、南九州西回り自動車道や九州新幹線開通で利便性が高く、電子部品やパルプ・紙製造などの工業も盛んです。

「川内川」の河口には重要港湾の川内港があり、観光資源として注目高い甑島への航路や国内外の物流拠点として活用が期待されています。

薩摩川内市が目指す、「サーキュラー都市」とは

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廃棄物を含めた資源を循環させ、持続可能なビジネスや人々の暮らしを創出する先進的な研究開発や市民参加型のプロジェクトが進行中。

薩摩川内市が目指す「サーキュラー都市」は、市民、企業、研究機関と連携し、廃棄物を含めた資源を循環させながら、循環型の経済活動を目指すまちづくりのことで、実装拠点「Satsuma Future Commons(薩摩フューチャーコモンズ)」が構想中。

2022年5月には、内閣府より「SDGs未来都市」に選定。同年7月には、九州電力の川内(火力)発電所跡地をサーキュラー都市実現に向けた資源循環の社会実装拠点「サーキュラーパーク九州」の構想を発表。重要港湾の川内港に隣接する、「川内港久見崎(ぐみさき)みらいゾーン」も、薩摩川内市のサーキュラー都市へ向けたシンボル的な拠点となることが構想されています。

それでは、「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会2022-2023」の当日の様子をレポートいたします。

未来の衣食住、循環を生み出すデザインの実践活動報告

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開催場所である、鹿児島県庁18階からの景色。鹿児島のシンボル桜島と錦江湾を一望

202333日(土)、「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会2022-2023」開催当日、会場は循環経済社会へ関心のある県内外の企業や研究者、地域資源の利活用に関心のある参加者、約50名で満席に。

司会進行は、株式会社リ・パブリックの神尾涼太さんが務め、

2019年から薩摩川内市域内外の企業や研究者、開発者、デザイナーと協働しながらオープンなイノベーション環境を目指し、サーキュラーデザインを基軸とした新しいビジネスと地域社会における思考と実践の成果報告をさせていただくと同時に、来たる循環経済社会への移行に向け、どのようなアクションが必要か皆さまと一緒に考えられる会になれば」と挨拶しました。

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“持続的にイノベーションが起こる生態系を生むためのシンク・アンド・ドゥタンク”株式会社リ・パブリックの神尾涼太さん

株式会社リ・パブリックは、本報告会の運営事務局。「未来の衣食住+インフラ」に関する九州大学大学院芸術工学研究院との共同研究や、市民発・サーキュラーイノベーションを生み出すラボ機能など、市民生活から企業・研究活動までを一体と捉え、自然と共存する新たな都市デザインの社会実装のディレクションを行なっています。(公式HPより

続いて、薩摩川内市役所経済シティセールス部産業戦略課の山元一将さんが、

「薩摩川内市の地域資源を活用し、循環経済ビジネスを模索するという新たなチャレンジに対し、九州大学大学院芸術工学研究院の皆さまをはじめ様々な企業に協力をいただき、産官学が連携した取り組みを実施することができました。取り組みの報告と同時に、薩摩川内市に興味を持っていただければ」と挨拶し、報告会が始まりました。

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主催者挨拶を行う薩摩川内市役所経済シティセールス部産業戦略課の山元一将さん

今回報告された3つのプロジェクトの共通テーマ(2023年度)は、「未来の衣食住」。

薩摩川内市の地域資源を活用した「サーキュラーデザイン(循環を生み出すデザインの実践)」を基軸に、「循環福祉連携ファッション」、「土のデザイン」、「竹建築デザイン」の3つのプロジェクトについて、それぞれ報告されました。

報告①〈衣〉循環福祉連携ファッションプロジェクト

【鹿児島県薩摩川内市】「循環経済社会へ向けた、リビングラボプロジェクト活動報告会」開催レポート【前編】
「循環福祉連携ファッションプロジェクト」の作品展示。2023年3月5日~12日まで薩摩川内市東向田町「RE:STORE」にて「土着のサーキュラーデザイン展」が開催された。

トップバッターは、「循環福祉連携ファッションプロジェクト」を行った株式会社Synflux CEOの川崎和也さん。デザインリサーチを専門とし、AI3Dを用いてファッションデザイン過程における廃棄を減らすシステムを実装・研究されています。

プロジェクトタイトルは「関係から、環境へ」。

冒頭では、プロジェクトの背景として、ファッション業界の大量生産・大量消費スタイルから循環型経済への移行が求められていることに触れた上で、サーキュラーデザインの必要性とデジタルテクノロジーを駆使して消費者自身が自分の生活にフィットする洋服を作ることができる「参加型デザイン」について語りました。

循環と福祉の連携をどのようにデザインするか

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株式会社Synflux CEO川崎和也さん

「福祉施設の皆さんなど、当事者が置かれている環境においてどのような問題やニーズがあるか、社会環境を理解する必要性と、その上で生態系との関わり方を構想する自然環境、データやアルゴリズムとの共創でどのようなものづくりができるかという情報環境の3つの環境を複合的に考えることを重要視しました」 (※アルゴリズムとは、ある課題を解決するための計算方法や手順のこと)

今回のプロジェクトでは、川崎さんが環境や循環面のアイデアを出し、ファッション面をファッションデザイナー兼大学院で当事者研究をされている津野青嵐さんが行い、薩摩川内市の福祉施設、「デイハウスびい」と「すたーと」の2か所でそれぞれワークショップやファッションデザインなどを制作されました。

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川崎さんや津野さんが福祉施設を訪問した際には、「潜在的な問題を可視化しつつ、ファッションデザインとの共創やアイデアを深める機会になった」や、「ここは宝の山だと感じるほど、画材や絵画に強く惹かれ、当事者の皆さんの作品から高いインスピレーションをもらった」など福祉と循環、ファッションとのコラボレーションの可能性を挙げました。

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「循環福祉連携ファッションプロジェクト」の作品展示。福祉施設スタッフ関係者などの洋服をリサイクルし制作。
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作品について説明する株式会社Synflux CEO川崎和也さん(写真左)と、ファッションデザイナーの津野青嵐さん(写真右)。

さらに、「施設内でファッションショーを開催し、S・M・Lの規格サイズではなく、当事者一人一人にあったファッションを自らデザインすることで、価値を高めると同時に、大量生産・大量消費を前提としたアパレル業界のビジネスモデルへの問題提起にも繋げる活動となりました」と川崎さん。

福祉施設のスタッフの皆さんの間で自主的に行われたアンケートの中には、『アートは奥深いし面白い。なかまの自由気ままに、を目にして圧倒された気がした。(中略)その日その日で経過も結果も意表をつかれることが多く、新鮮さと驚きでとても刺激的だった』などの感想も。

循環福祉連携プロジェクトの成果と課題

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ファッションショーで撮影した写真のパネル。当事者の自由な発想でデザインされている。

本プロジェクトの成果については、「福祉施設とファッションデザイナーが協働する関係性づくり」と、「尊厳のあるシゴトとしての新しいビジネスモデルの可能性」、「循環フローにおける再利用、修理、回収などへの参画の可能性」があるとし、一方課題については、「福祉施設スタッフと当事者で自活できる仕組みづくり」や「収益化やコスト検証」、「デジタル技術による最適化や汎用化」を挙げました。

川崎さんの今後の展望としては、「福祉施設がまちの循環の拠点になってもよいのでは」と、まちの郵便局やコンビニエンスストアのような規模で地域密着型の循環支援拠点として福祉施設が携わり、「回収や修理、再利用などの取り組みで、小さな経済圏を生み、企業とのコラボレーションを図ることができれば」と語りました。

 

報告②〈食〉土のデザインプロジェクト

ポスト人間中心のデザインを目指して

【後編】につづく

 

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URL

https://kigyo-satsumasendai.jp/sfc/

屋号

Satsuma Future Commons(薩摩フューチャーコモンズ)