村山市 Link MURAYAMA 廃校をリノベーション。つながり、にぎわう、まちの拠点へ
地域の情報
2022年7月、村山市に新たなにぎわいの拠点「Link MURAYAMA」がオープンしました。2016年に廃校になった山形県立楯岡高等学校を利活用して生まれた本施設。旧管理棟の建物を中心に明るくリノベーションされ、人々が集まり、働き、交流できる、にぎわい創造活性化施設となりました。
取材に訪れたのはオープンして約半年が経過した頃。今回はこの場所の管理と運営を担う地域プロジェクトマネージャーの佐藤洋介さんと、地域おこし協力隊の小関恵子さんに施設を案内いただきながら、オープン後の様子やこの場所に込める思いをうかがいました。
人々が集い、にぎわいが生まれる施設へ
Link MURAYAMAは「多様な利用者が集い、にぎわいの創出と経済効果を生む拠点」というビジョンのもと、コワーキングスペースや飲食店、フィットネス施設、子どもの遊び場、オフィスなどいくつもの機能を備えています。
空間としては、メインとなる旧管理棟のA棟と離れのB棟、C棟、さらに旧体育館を活用した屋内広場がコリドー(通路)によってつながれているという構成です。
施設の内容を順番に巡っていきます。
【A棟】 リビングやコワーキングスペースなど
Link MURAYAMAの中心的機能である、リビング・コワーキングスペース。「リビング」という名の通り、幅広い年代の人が集える場所であり、市内外の人が気軽に立ち寄って交流できたり、企業や地域のイベントが行われたり、コミュニティを醸成する場として幅広く活用されています。
コワーキングスペースとしての機能も兼ねており、誰でも無料で使うことができます。自由に使える電源やwifiがあるので、気軽にパソコンを開いて仕事をしたり打ち合わせをすることも可能。
空間の中心には「山ベーグル&CoffeeStand」があり、焼きたてのベーグルや淹れたてのコーヒーのほか、季節のジェラートも味わえます。このカフェの存在が、リビングやコワーキングスペースの居心地をさらに良くしているように感じます。
そのほか1階にはシェアキッチンがあり、イベントで提供する食事の準備ができたり、貸切にして料理教室を行うことも可能です。隣には運動のあとに汗が流せるシャワールームと、趣味の活動などに使える6畳の和室があります。
A棟の2〜3階はオフィスやテナントエリア。2階には予約制で座席貸しのコワーキングスペースのほか、会議室やミーティングブースがあり、2〜3階の各個室には建築設計事務所やIT企業、イベント製作会社などさまざまな業種が入居中。地元企業のオフィスや団体の活動拠点、東京に本社を置く企業のサテライトオフィスなどとして利用されています。
【B棟】メディカルフィットネス施設
B棟の1〜2階には、地域密着型のメディカルフィットネス施設「ウェルベース村山」があります。医療と連携していることが特徴で、利用者の健康状態や運動量などの情報をもとに医師が効果的な運動法を示し、健康増進に役立てられるというもの。健康増進したい高齢者からアスリートまで幅広いニーズに対応しています。
【C棟】キッズラボ、レストラン
C棟にはイタリアンレストラン「pizza nu-ma(ピザ・ヌーマ)」があります。ピザを中心としたメニューでテイクアウトも可能です。
レストランの隣にあるのが、子どもたちの体験と学びのためのキッズラボ。宿題や勉強ができるほか、ものづくりや芸術、ICT(情報通信技術)、科学などあらゆるジャンルの体験もできる子どものための研究室です。予約なしで無料で使えます。
2023年4月頃には、C棟3階にゲストハウスがオープンする予定です。A棟のシャワールームやシェアキッチンと一体的に活用されるそう。国内外から来る旅人の拠点となり、ますますこの施設がにぎやかになっていく予感がします。
【屋内・屋外広場】
A棟からつながるコリドーの先にあるのが、旧体育館のアリーナ。雨や雪の日でも遊べる室内遊技場として利用ができ、ボールやネット、卓球台などの設備があります。平日は放課後に小中学生がここを待ち合わせ場所にして集まってくるそう。
1階に降りたピロティーの部分には、コンクリートと土の広場があります。コンクリートではスケボーなどができ、土の広場ではグラウンドゴルフやキャッチボールなどをすることができます。アリーナもピロティも高校生以下とお子様連れの保護者は申請なしで、なおかつ無料で利用できます(一般の方は有料ですが、誰でも利用できます)。有料で貸し切ることも可能です。
屋外には西側広場として人工芝の小さな広場があるほか、2023年度内には中央広場として、天然芝の広場もオープン予定。ピクニックやヨガ、芋煮や花見やイベントなど幅広く活用される場所になりそうです。
規制でしばらない運営
利用者の世代を問わず、あらゆるジャンルの機能が詰まっているLink MURAYAMA。この場所で管理・運営を担当するのが、地域おこし協力隊の小関恵子さんと地域プロジェクトマネージャーの佐藤洋介さんです。
小関さんは楯岡高校の卒業生であり、東京からUターンして2021年2月にLink MURAYAMAの利活用をミッションとする地域おこし協力隊に着任しました。この場所の運営担当者として、利用者のみなさんとコミュニケーションをとりながら誰もが気持ちよく使えるような環境づくりをしている小関さん。オープンしてからの半年間を振り返ってこのように話します。
「オープンしてみると、想像以上に利用者の年齢層が幅広くて驚いています。当初はコワーキングスペースを中心に30〜40代がコア層になるかなと思っていたのですが、フィットネスの利用者は50代以降が圧倒的に多く、旧体育館の屋内広場には学校が終わってから小中学生が集まってきます。特に屋内広場は想像以上の人気で、週末には家族連れのみなさんにもたくさんご利用いただいている状況です。
幅広い世代のみなさんがそれぞれの目的に沿ってこの場所を使いこなしていただいているのが嬉しいです。オープン後に見えてきた新たなニーズもあるので、みなさんの声を聞きながら少しずつ整備していきたいと思います」(小関さん)
佐藤さんも東京からの移住者です。2016年に農林水産省から村山市に3年間出向し、Link MURAYAMAプロジェクトの企画を推進した後、「このプロジェクトに関わり続けたい」と村山市へ移住。2022年7月からは地域プロジェクトマネージャーとなり、この場所の管理・運営のほか中心市街地活性化に取り組んでいます。本プロジェクトのコンセプト作成から取り組んできた佐藤さんに、この場所に込める思いをお聞きしました。
「この場所では『できることを増やす』ことをポリシーとしています。公共施設って禁止事項が多いじゃないですか。東京に住んでいたときには、都会の公園は規制ばっかりでつまらないし、使いにくいなぁと思っていました。
だからこそ、ここではなるべくルールで縛らず余白を残して、利用者のみなさんが自由に使える場所にすることを目指しています。このスタンスを壊さないためにも、利用者のみなさんには誰もが気持ちよく使えるよう、お互いに譲り合ったり声をかけあったりして使ってほしいですね」(佐藤さん)
新しいチャレンジが生まれる施設へ
Link MURAYAMAは村山駅から徒歩7分という立地であり、駅との間には商店街があります。この場所のこれからについて「商店街も盛り上げていきたい」と小関さんは話します。
「この半年でだいぶ認知は広がったと思うので、次は商店街と結びつけることが目標です。かつては村山駅から商店街、楯岡高校へと人の流れがありました。ここに車を停めて商店街や駅のほうまで歩き、回遊してもらう仕掛けを考えていきたいです。
その一環として、高齢者のみなさんが商店街で培ってこられた専門的な技術や知識に、子どもたちや若い世代が触れられる機会もつくれたらと思っています。高齢者のみなさんががんばっている姿に子どもたちが触れられたら、それは地域にとっての希望につながると思うんです。高齢者と子どもたちや若い世代が交流できる仕組みづくりにも取り組んでいきたいです」(小関さん)
佐藤さんからも、利用者やこれから訪れる人に向けてメッセージをいただきました。
「ここは小さなまちのように、みんなでつくり育てていく場所です。ここにいろんな人が集まり、何気ない会話が生まれ、新しい情報に触れたり仲間を見つけたりするなかで、新たなチャレンジが生まれていく。それが新しいビジネスにつながったり、地域のにぎわいを生みだしていく。そんな流れをつくっていくことが目標です。
利用者のみなさんが『なにかやってみたいな』と思えるような雰囲気をつくっていきたいので、新しい挑戦がしたい人には積極的にこの場所を使っていただけると嬉しいです。地方でのテレワークやワーケーションの拠点として使っていただくのも歓迎です。いつでもお気軽にお越しください」
取材・文:中島彩
撮影:渡辺然(Strobelight)
写真提供:村山市
名称 | Link MURAYAMA |
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住所 | 村山市楯岡荒町2-1-1 |