BLACK BIRD 覚醒する絵描き-行田 豊 展
おっさんだって飛んでいいじゃん展
大工が絵描きに覚醒する時が訪れた。
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ようやく桜が標高を上げながら開花を続ける4月、八ヶ岳南麓に竣工した新しい停留所のお披露目を兼ねて、絵描き行田(こうだ)豊の展覧会が開催される。
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もちろん行田はこの建築に大工として関わってきて、棟梁として施工図を書き工事の段取りを行って竣工させた。大工と絵描きは道具を使って作るという行為には近しいものを感じるが、行田に言わせるとこの二つは全く別物だそうだ。完成に向かって最適な合理性を追求する大工仕事と、完成の姿が見えないまま模索を続ける絵描きはそもそもの出発点もたどり着く場所も異なる。切り替わる瞬間の行田はいつも気持ちが不安定になって最初の一歩を踏み出すまでに時間と勇気を絞り出す必要があると言う。
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彼が描く様々なモチーフの多くは大工仕事の現場から生まれる。森の情景や樹木、花、動物と繊細な作業の合間に視界に入るもの、記憶にとどまり、描きたい思いが高まった時に行田のスイッチが切り替わり大工から絵描きになる。
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今回の現場で行田を惹きつけたものは、鳥だった。夏から冬にかけて姿を見せなくなる風を切り疾駆する羽、枝に掴まり遠くを見つめる眼。描きたいと思った。
たまたま、もう一人の大工の佐藤リョウが現場で休憩中、焚火の横でギターを弾いていた。その曲はビートルズのblackbird。行田の鳥は黒い鳥になり、停留所の名前もblackbirdと決まった。
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完成した室内の仕上げに使われたシナ合板に行田は鳥の壁画を描き始める。以前の停留所で描かれたラーチの合板上の巨大なナラの木は様々な絵具を駆使したが、今回は鉛筆を用いて黒の印影だけでblackbirdを表現した。
さらにひとつの壁画ではなく空間の導線を使った鳥の視点と動きが仕掛けられた「家」ならではの構成が楽しめる。
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新作の鳥と行田がこれまで描いてきた作品が展示されたblackbird展、建築と併せて体験して欲しい。