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新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-

連載

2023.05.09

JR福井駅前からすぐの場所にある「新栄商店街」は、福井駅周辺のまちづくり事業として少しずつ新たな動きを始めています。reallocal福井では、新栄商店街がどのような想いと希望を持って未来へ進んでいこうとしているのか、これまでとこれからを追っていきます。

【目次】
・新栄商店街のプロフィール
・生まれ育った「新栄商店街」を残すために 「新栄の未来を考える会」会長 友田剛嗣さん

新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-
西側のアップルロード面する新栄商店街のアーケード。他に北の「鳩の門通り」、南の「北ノ庄通り」にも入口があり、ここをくぐると新栄商店街へと入り込むような気持ちになれる。

新栄商店街のプロフィール

(reallocal福井で過去に取り上げた記事「【エリアガイド】新栄商店街エリア」はこちら

福井駅西口から徒歩3分。再開発工事が真っ最中の電車通りに出て、左手奥へ入っていくと、小さなアーケードに囲まれた「新栄商店街」があります。

古着屋、雑貨屋、カフェ、本屋などなど、レトロな外観を残しながら間口の小さな店が並び、一つ一つのお店が個性的なカラーを持つまち歩きしたくなる商店街です。

一方、新栄商店街の周辺では、北陸新幹線の開業に向けて大規模な再開発工事が行われており、古い建物の解体や高層ビルの建築が急ピッチで進み、福井駅前の風景がどんどん変化しています。

2020年3月頃から発起人6名が新栄商店街を何とか新しい街にしたいという思いで会議を重ねてきました。

新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-
福井駅の西口を中心とした街の一角では、大規模な再開発工事が行われている。

新栄商店街は、0.8ヘクタール(学校の校庭よりも小さな敷地)の中に100件以上の地権者がおり、その多くは1店舗の間口が狭く、長屋形式をとっています。

元々裁判所が建てられていた場所でしたが、第二次世界大戦によって焼け野原となり、終戦後すぐにバラックのいわゆる闇市が開かれました。その市場が発展し、八百屋、洋服屋、雑貨屋などの店が開かれ、昭和30年代には「新栄商店街」と呼ばれるようになり、たくさんの子どもが走り回る活気に溢れた街でした。

新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-
新栄商店街の中に掲示されている商店街マップ。小さな区画の中に細長く区切られている様子がよくわかる。

昭和40年代に入ると、家族が増えて小さな間口の家では手狭になった商店街の人々は、自動車の普及によって生活も店も郊外へ移るようになります。さらに昭和50年代には福井駅前を更新しようと「新栄再開発協議会」が発足され、高層ビルの建設なども計画されましたが、土地の区分が複雑であることや地権者の合意が難しく、事業が実施されることはありませんでした。

さらに平成12年(2000年)以降になると商業圏の郊外化の勢いが加速し、福井駅前の商店街の衰退化が顕著になります。そうした中、まちづくり会社が設立し、「賑わい創出事業」として補助金制度やチャレンジショップなどの取り組みも始まります。資金も少なく若い世代でも商いに挑戦できるという機会を提供することで、個性的な店舗が徐々に増えていくようになりました。

新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-
2,3人が横に並んで歩くと通路を塞いでしまうぐらい両側の店の距離が近い。歩いていると、店内の会話が時々聞こえて来ることも。

また、コインパーキングとして利用されていた一角を活用し、市民の屋外公共空間として「新栄テラス」が生まれました。以降、買い物客の休憩所としてはもちろん、マルシェやナイトバーなどの屋外イベントが次々と開催され、駅前の新しい宿り木として現在も新栄商店街の欠かせない空間となっています。

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晴れた日には、ベンチに座って読書をする人やテイクアウトの食べ物を食べたりする人々の風景が見られる「新栄テラス」。

しかし、現在、新栄商店街では一部の物件の老朽化が進み、店舗の入居者にとって使いづらい箇所もあり、更新の必要性が高まっています。そこで2021年4月に新栄商店街の地権者を中心に「新栄の未来を考える会」を発足。今後の商店街のリニューアルについて、これまでに30回以上の話し合いを重ねてきました。

どのような思いでこの会を発足するに至ったのか、「新栄の未来を考える会」の会長であり、自身も新栄商店街に「シューズブティック・トモキ」を構える友田剛嗣さんにお話を伺いました。

新栄商店街のこれまでとこれから -新栄の未来を考える会とは?-

生まれ育った「新栄商店街」を残すために

「私は昭和31年にこの商店街の近くで生まれました。その頃にはもう『新栄商店街』という名前で呼ばれていた記憶があります。父親は大阪から福井に戦争を逃れて疎開してきまして、この福井駅前で靴屋を始めたんです。当時は一階が店舗、二階は住居だったのですが、バラックから派生した小さな建物ですから、四畳半ぐらいの広さに私たち家族と職人さんがぎゅうぎゅうになって暮らしていましたね。商店街には八百屋や駄菓子屋などが並んで、遊び場としても楽しかった思い出です。

それから私は一度東京へ進学し、店を継ぐために帰ってきました。ちょうど新栄商店街の最初の再開発事業の話が持ち上がっていた時期で、高層ビルの建設が計画されましたが、地権者の数が多く、細かく分かれているために合意が取れず、進まなかったことを覚えています」

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本屋、アウトドア用品店、アジアン雑貨屋、チーズ屋、おはぎ屋などなど歩くだけで楽しめる個人店舗が立ち並ぶ。

「実は、私もつい最近までは大規模な再開発事業によって現代風にかっこよく魅せることを、この新栄商店街にも望んでいました。しかし、近隣の再開発工事を見ていく中で、新栄商店街の10年先、20年先を考えると、本当にそれでいいのだろうか?と考えるようになりました。福井の人に愛される商店街にしたい、福井駅前でショッピングをしたいと思える場所にしたいと原点に戻ったのです」

「そこでリノベーションのまちづくりを知りました。調べていく中で、改めて新栄商店街のような裏路地的なこぢんまりとした雰囲気は全てを入れ替えて新しく作ろうと思っても難しいんですよね。これがこの場所の良さだと思いました。しかし、ある程度まとめないと古くて使いにくい部分を直せない。また、新しくなっても家賃が高すぎると、テナントさんも入りにくくなります。そのあたりを並行して考えながら、どうしていくべきか?をみんなで考えていきたいと思っています」

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地権者を中心とした「新栄の未来を考える会」では30回を超える会議を重ねてきた。

「最近では、新栄商店街の中で若い方々が古着イベントを行っていましたね。私の店とは雰囲気が異なるものですが、雑多に混在してもおもしろいと思ってもらえるエリアだと感じます。まだまだ課題は多いですが、できることから少しずつ皆さんの協力も得ながら未来に向けて進めていきたいですね」

2023年3月には、「新栄の未来を考える会」が行ってきた活動を地権者やテナントに向けて報告会を行い、福井大学との連携による調査報告や店舗事業に対する補助金制度の開始など、新栄商店街に関わる人々に多くの情報が届けられました。

まだまだ始まったばかりの動きは不安を抱えながらのスタートですが、未来が良くなればと思っている人々の思いは同じ。reallocal福井を運営する株式会社舎家では、今後も新栄商店街のリノベーションまちづくりの活動やテナントさんの声などを取材し、お届けしていく予定です。

2023年3月に行われた「新栄の未来を考える会」の活動報告会

【まとめ】
・戦後のバラック闇市から始まった新栄商店街は小さな間口の物件がひしめく個性あふれる商店街。
・時代がうつるにつれて、建物の更新が必要になってきたが、従来の大規模な再開発ではなくリノベーションを中心としたまちづくりを模索している。
・「新栄の未来を考える会」を中心に新栄商店街の古き良き雰囲気を残すための新しいまちづくりを展開中。

名称

新栄の未来を考える会

URL

https://shimsakae.jimdofree.com/

住所

新栄の未来を考える会事務局:福井市中央1-2-1 ハピリン3階 まちづくり福井(株)内

TEL

0776-30-0330

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