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山形の巨樹・古木に会いに行く vol.2

連載

2023.05.17

都市の真ん中にある大きな公園といえば、ニューヨークのセントラル・パーク、ロンドンのハイド・パーク、日本では東京の新宿御苑などが思い浮かぶだろう。そこまで有名ではないとしても、「日本の都市公園100選」に名を連ねる山形市の霞城公園は、四季折々の風景を楽しみながら散策ができる私のお気に入りの公園である。桜が見頃になる季節には、県内外から数多くの観光客が訪れる人気の観光スポットだ。

その霞城公園の一角に、目を見張るような巨樹・古木が数多くのこっている。私が暮らすまち、山形の街中にある魅力あふれる樹々に会いに出かけた。

山形の巨樹・古木に会いに行く vol.2
北側の二ノ丸北不明門(きたあかずもん)跡より園内へ。このエリアにあった山形市児童文化センターは、霞城公園整備計画に伴い平成29年3月31日をもって閉館された。跡地の周りにはブランコなど遊具があり、親子連れが遊ぶ姿が見られた。
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山形市児童文化センター跡地周辺に見られる巨樹・古木群

【巨樹古木No.3 霞城公園のプラタナス類】

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3月、まだ芽吹く前のプラタナスの木を見る。高く空に向かってそびえ立つ塔のような姿に圧倒される。どこかで見たような。そう、これは有名な岡本太郎氏の作品『太陽の塔』の内部にある“生命の樹”に似ているのでは。そんなふうに思えるほど立派な巨樹である。

世界四大街路樹のひとつ、プラタナス。学名「Platanus」は、ギリシャ語の「platys(広い)」に由来し、プラタナスの葉が幅が広いことや、枝が大きく広がっていくためと言われている。
花言葉は「天才」、「好奇心」。これは、古代ギリシアにおいてアテネにあるプラタナスの並木道の木陰で、プラトンがプラタナスの木陰で哲学を説いたことに由来するそうだ。 私がプラタナスの木を強く意識したのは、日本初の公園と言われる東京・飛鳥山公園での出会いである。威風堂々とした姿に一目惚れして記憶に刻まれた。まさか山形の街中にも巨大なプラタナスの木があるなんて!

『園内の北西に位置し、天高くそびえる姿に圧倒され神々しさを感じさせる巨木。日本には、スズカケノキ・アメリカスズカケノキ・モミジハスズカケノキの3種類があり、実の数や葉の形で見分けることができ、これらを総称して「プラタナス」と呼びます。』 (霞城公園じゅもくガイドマップPDF(平成24年3月作成)より)

街路樹や公園樹として植えられているプラタナスは、アメリカスズカケノキとスズカケノキの 雑種(モミジハスズカケノキ)が多いそうだ。霞城公園のスズカケノキはどの種類なのか。葉っぱが大きく成長してきたころに調べてみるのも面白いだろう。

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大木の横には、こんな不思議な形をした木が育っていた。遠目にはまだら柄の木の肌が、 キリンの首のように見えた。幹がうねり、たてがみのような細い枝が並んで生えているのも面白い。

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4月中旬に再訪。2023年の春は、新緑シーズンへと一気に季節が進んだ。スズカケノキにも可愛らしい葉っぱが芽吹いていた。この小さな葉っぱたちが、これからワサワサと団扇のように大きくなって、鳥たちが憩う木陰を作るのだろうと、夏の巨樹の姿を想像した。

【巨樹古木No.4 霞城のサクラ (山形市指定天然記念物)】


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霞城公園内に残る、ヒガンザクラの古木。山形市内で見られる桜の古木の中で、かなり高 樹齢の貴重な1本。全体の樹型を見るため花が咲く前の3月に訪れた。グルグルとねじれながら空に向かって伸びる枝は、まるで“昇り龍”のようにも見える。

『樹種はエドヒガン。根元の周りが7m余り、樹齢は600年を越すものと推定されるため、延文二年 (1357 年)斯波兼頼が山形城を築城した当時のものとされ霞城公園内の桜の長老。一見の価値あり。』(山形市役所HP「史跡山形城跡さくらガイドマップ(平成29年4月作成)」 より)

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4月上旬、葉桜のタイミングで再訪。大きく横に張った霞城の桜の枝。散策中は足元の根や石に気をつけると同時に、頭上の枝にも注意して歩こう。
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霞城のサクラの花。例年に比べ暖かい日が続いていたため、すでに葉桜になっていた。来 年はもう少し早め、花が満開のころ訪れてみたい。

【巨樹古木No.5 サイカチ(カワラフジノキ)】

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日本で第3位の幹周を誇るサイカチ(カワラフジノキ)。童話『ジャックと豆の木』に出てくる巨木のように大きく育ったマメ科の巨樹である。薬用になる実は、かつて石けんの代用として重宝されたそうだ。私も小学生のころ通学路にあったサイカチの木の下で、大きなサヤから実を取り出し泡立てて遊んだりした。ゴワゴワした根元からは細い枝が自由奔放に生えている。

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乾燥したサイカチのサヤ。この中に小さなマメが入っている。そのマメを取り出して集める 遊びも楽しかったことを思い出した。
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4月中旬のサイカチ。若葉が勢いよく生え始めている。
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根元の細枝にかわいい葉が並ぶ。マメ科らしい規則的な葉っぱのシルエットが魅力的。よ く見てみると大きな棘だらけ。これは近寄ると危険なヤツだ。見ているだけで痛みを感じるような鋭さだ。
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二次元コード付き標識。 アボック社が開発した“QRラベルTM”というものだそうだ。 【アボック社「QRラベルTM」とは】 http://www.aboc.co.jp/business/label/index.html (アボック社ホームページより) これをスマホで読み込むと、Web植物図鑑「花ペディア®」にアクセスが可能。樹木について 詳しい情報をチェックすることができるので、公園内に複数ある標識を探しながら巡るのも楽しいだろう。

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5月中旬、昼下がりの静かな公園を訪ねた。若葉がぐんぐん育ち、樹木の勢いが増していた。わずか2ヶ月でこれほど景色が変わるのものなのかと驚く。山形の春はあっという間に 過ぎていくのだ。緑のシャワーを浴び、すがすがしい空気を胸いっぱいに吸うと、次第に気分が晴れやかになる。こんな風にゆったりとした、ゆるやかな時間を持つのも今の私にとって大切なことだ。

巨樹古木を巡る以外にも霞城公園の楽しみ方は色々ある。午前5時、開園直後の園内には早起きな鳥たちのさえずりがこだまする。季節により訪れる鳥の種類も様々で、バードウ オッチングを楽しむ人々がカメラや双眼鏡を携えて来園しているようだ。そういえば、私も前に花見で来た時、アオゲラらしき鳥がカンカンカンカンと勢いよく木に穴を開ける姿を見つけたことがあった。目を閉じて耳を澄ますと聞こえる鳥の声、樹々の葉がサワサワと囁く 音・横ぎる風を身体で感じつつ、うららかな光で満たされた園内を楽しめた小一時間であった。

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青空に新緑グラデーション

山形のまちの真ん中にあり、多くの市民に愛されている霞城公園。取材時の令和5年春は市の整備計画に沿って工事が行われていた。計画によると巨樹が残るエリアは「森の広場」としてアスレチック遊具が設置される予定だ。今後10年の間に変わりゆくであろう公園の風景を見ながら、未来の山形市も緑豊かな『森の都』であり続けてほしい。そう心から願った。

国指定史跡山形城跡「霞城公園」(山形市公式ホームページより)

国指定史跡山形城跡「霞城公園」マップPDF