【山形】日常の風景を探しにいこう/山形駅前
連載
やまがたのまちを探し歩いて見つけた日常の風景をフィルムで撮りゆくシリーズ。
こんかいは、薄明かりの山形駅前。
前日の夜に思いついて、まだ暗い早朝4時、家をでた。日の出の予定時間は4時半頃。山形駅前にたどり着いたとき、ようやくわずかに空が明るくなりはじめようとしていた。
明けがたの、ブルーのベールをまとったような街のなかを、歩きはじめた。
鈴らん街のビルの窓に、少しだけ明るくなった朝焼けの東の空が映って、淡いピンクブルーに光り輝いていた。まだ薄暗い街のなかでそこだけ際立って綺麗だった。
街灯は、まだ消えずにぼんやりと輝いている。
この日は、快晴ではなく曇りの予報だった。
だからだろうか、駅前の飲み屋街に差し込むのは、明るく眩しい朝の光というよりも、もっとじんわりと薄明るいような朝の光で、どことなくそれは飲み屋街特有の夜の名残にとてもふさわしいもののように感じられておもしろかった。
駅前大通り。
数台のタクシーがいるくらいで、歩く人の姿はまだ見ることができない。人のいない街のなかというのは、まるで時間が止まったようでなんだか不思議な気分になる。
大通りから一本裏通りに入った「かすみ公園」。子ネコが歩いているわたしに気がつき振り返って見ていた。こんな早朝に人がいると、めずらしそうにこちらを見ているかのように思えた。
きっとあと数時間もたてば、通勤や通学の時間になって、人々はあたりまえの毎日のあたりまえの風景とさえ感じることもないほどあたりまえのように、この風景を通り過ぎてゆくことだろう。けれど、夜の終わりと朝のはじまりのはざまの誰もいない静寂な空気が流れている駅前はとても不思議で、とてもゆっくりで、とても心地のいい、とても特別なもののような気がした。