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越美北線はいかにして越美「北」線となりしか あるいは、越美線未成区間攻略作戦【前編】

地域の情報

2023.06.10

1.なぜ越美「北」線なのか
2.スタートまでの長い道のり
3.長良川鉄道越美南線

1.なぜ越美「北」線なのか

 さて。またもや越美北線である。「お前の興味の対象は越美北線しかないのか」と言われてしまいそうだが、一応興味の対象は他にもあってサウナとかカレーとかそういったところでいずれこれらについても書きたいとは思うが目下書きたい欲をそそるのは越美北線である。しばらくお付き合い願いたい。
 前回の拙稿で「越美北線が盲腸線である」という内容を書いた。盲腸線の定義については前記事を参照していただいたり他で調べていただいたりするとして、実は越美北線は盲腸線になるはずではなかったのだ。
 この話を展開してゆくにはその名称の由来に触れる必要がある。なぜ越美「北」線なのか。越美「北」線というからには越美「南」線も存在するのか。
 存在するのである。長良川鉄道。岐阜県や郡上市などが出資する第三セクター方式の鉄道会社であるが、正式な路線名としては長良川鉄道越美南線という。

 着工時は「国鉄越美線」として福井と美濃を結ぶ路線となる計画だった。1923年に国鉄越美南線が先に開業(全通は1934年)、遅れて1960年に国鉄越美北線が開業(最終延伸は1972年)したが、モータリゼーションの波やらなんやらで、ついに両者が結ばれることはなかった。(*最終的に国鉄再建法によって計画に終止符が打たれた)越美線には特急列車を走らせる計画もあったようで、実現していればサンダーバードやしらさぎの対抗勢力となり得ただろうかと想像するが、詮ないことだ。
 それぞれの路線の概要は以下のとおり。

 長良川鉄道越美南線
  起点:美濃太田駅(岐阜県美濃加茂市)
  終点:北濃駅(岐阜県郡上市)
  駅数 38駅
  営業キロ数 72.1km
 
 JR越美北線
  起点:越前花堂駅(福井県福井市)
  終点:九頭竜湖駅(福井県大野市)
  駅数 22駅
  営業キロ数 52.5km

越美北線はいかにして越美「北」線となりしか あるいは、越美線未成区間攻略作戦【前編】
 越美線全通が実現していれば、営業キロ数148.6kmという一大路線となるはずだった。計画段階で終わってしまった路線のことを「未成線」もしくは「未成区間」というが、越美線における未成区間は北濃駅~九頭竜湖駅の24kmということになる。この未成区間は石徹白(「いとしろ」と読む。岐阜県郡上市白鳥町石徹白)を経由することとなっていた。
 ちなみにこの未成区間には代替の交通手段として、国鉄バス(JR東海バス)大野線が運行されていたが、これは九頭竜湖駅から美濃白鳥駅に接続する路線であった。厳密には未成線の補完手段とは呼べないものであり、そのバスも2002年には廃止されてしまった。

(2023.7.16追記)
 当記事の掲載後、とある識者の方から、石徹白を含む未成区間にも国鉄バスが走っていたという情報を頂いた。そんな話はネットのどこにも見当たらなかったものの、その識者は昔そのバスの車掌をしていたという女性からその話を聞いたとのことで、情報の確度はかなり高いものと思われる。ネットではなく地元の古老から直接入手した情報。かなりの興奮モノであり、この話だけで記事が一本書けるほどの内容ではあるが、とりあえず先の国鉄バス大野線の話を修正し追記するにとどめておく。

 では、この未成区間を埋めてみようと思うのが自然な人間の性(さが)なのではあるまいか。越美線未成区間攻略はその筋では割とメジャーなコースであり、いろんなブログや鉄道系YouTubeでも先行例に事欠かない。両端の駅からそれぞれ路線バスが出ているが、徒歩による移動区間が約9kmほどあり(図中ピンクの区間)この区間をどのように越えるかが課題となる。先行例は、徒歩で踏破しているものが圧倒的に多いが、バス路線を含めた全未成区間を自転車(ロードバイク)で走破した剛の者もいる。
 僕は、自転車は好きだが歩くのはあまり好きではない。そして自転車で坂を上るのも好きではない。したがって僕がこの越美線未成区間を攻略するにあたっては、輪行して終着駅からバスに乗り終着のバス停からもう片方の駅まで自転車で(おもに下りを)走るというプランを考えた。
 どちら周りで行くかということだが、筆者は現在敦賀に住んでおり週末を福井市内で過ごす場合、いつもは車か、自転車を輪行してJR北陸本線に乗って福井入りする。これを、

 敦賀→(JR北陸本線)→米原→(JR東海道本線)→岐阜→(JR高山本線)→
 美濃太田→(長良川鉄道越美南線)→北濃→<未成区間>→
 九頭竜湖→(JR越美北線・北陸本線)→福井

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という大回りルートで福井入りすることを計画した。敦賀を始発に乗って出れば16:00頃には福井に着く算段だ。

2.スタートまでの長い道のり

 ということで、令和5年5月13日土曜日6:30、吾輩はJR敦賀駅前にいた。

越美北線はいかにして越美「北」線となりしか あるいは、越美線未成区間攻略作戦【前編】
早起きはあまり得意ではないのです…

 自動券売機では美濃太田までの切符は買えず、みどりの窓口を見ると閉まっている。どうやら窓口は7時からのようだがあいにく吾輩が乗りたいのは6:56発の長浜行きだ。あぁもう…と思いながらスマホでJR西日本のネット予約のページを開く。この予約ページ、便利なのだが、乗車券だけを購入することができない(必ず特急券や指定席券を一緒に購入しなければならない)のが玉にキズだ。しかたなく岐阜-美濃太田間だけ、特急ひだ3号を利用することにする。自由席特急券330円の贅沢。
 待合室でスマホを操作して予約を終えて券売機で発券しようとすると、まだ6:40なのにみどりの窓口が開いていた。なんだよぅ特急券買わなくてもよかったじゃんなどとぶつぶつ言いながら発券する。いろいろあったが改札を通過し、予定通りの北陸線普通列車長浜行きに乗り込む。

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めっちゃ乗り継ぎ多い

 そこからおよそ3時間近くかけてようやく越美南線のスタート地点美濃太田に到着。乗車時間は長かったものの乗り継ぎが細かくてあまりゆっくりもできなかったが、とにかく越美南線のスタート地点には立った。

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ホームは1面1線。駅自体はそんなに大きくない

3.長良川鉄道越美南線

 9:56一両編成の列車は定刻通り美濃太田を出発。時刻表によるとこの列車は「ゆら~り眺めて清流列車1号」となっており、途中の湯の洞温泉口と郡上八幡の間の景勝地で徐行運転するとのことだ。1日1往復のみ運行されており、乗車券以外の料金はとくに必要ない。

 関(この路線の主要な)からはアテンダントの女性が乗り組み、それまで自動音声による車内放送だったものがこのアテンダントによる肉声となった。さらに次の停車駅の案内だけではなくさまざまな観光案内も加わった。大きな橋梁で長良川を跨ぐ前(列車は徐行運転される)には必ず案内が入り、また長良川が大きく蛇行するところや白山が遠望できるところなどといった景勝地も案内され、乗客を楽しませる。ちなみに美濃太田-関はワンマン運転、関-郡上八幡は乗務員3名体制(なんとアテンダントとは別に車掌がいるのだ!)、郡上八幡から終点北濃までは再びワンマン運転となる。

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ひたすらのどか。越美北線も負けず劣らずのどかなのだが

 以下後編へ。