越美北線はいかにして越美「北」線となりしか あるいは、越美線未成区間攻略作戦【後編】
地域の情報
(承前)
4.北濃駅→白鳥交通バス
5.越美線未成区間攻略
6.越美北線に乗って帰還
4.北濃駅→白鳥交通バス
途中の駅に長く停車するといったようなこともなく2時間余りを乗りっぱなしの末12:06終点北濃に定刻通り到着。枕木だけの簡素な車止めを眺めて「この先が越美北線と繋がっていたかもしれないのか」などとしばし感傷に耽ったり、あまり間近で見る機会のない転車台を見たりして過ごす。
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ここからはバスである。12:30に北濃駅を出発する白鳥交通石徹白線のバスを利用する。平日および土曜日に、朝・昼・夕の3便運行されている。昼の便はオンデマンドによる運行であり、出発時刻の1時間以上前に電話による予約が必要となるので注意されたい。吾輩は岐阜の駅構内で、特急ひだ3号に乗り換える前に電話していた。
ほぼ定刻通りにバスが到着。オンデマンド運行であり、やってきたバスはトヨタのハイエースだ。北濃で降りた乗客は他にも数組いたのだが、バスを利用するのはどうやら吾輩だけらしい。たった一人のためにバスを運行させてしまってとても申し訳ない気分になる。そんな吾輩の密かな申し訳なさを余所に、ハイエースはどんどん山道を進んでゆく。その山道たるや「あぁこれチャリでは無理だったわ…バス予約しといてよかったわ…」と心の底から感謝を捧げたくなるほどの坂道であり、つづら折れの道が延々と続いている。つづら折れの道というのは少しでも斜度を小さくするためにつづら折れにしていると思うのだが、つづら折れでその斜度はちょっと理不尽じゃないかと思わざるを得ないほどの道である。繰り返すが、本当にバスにしてよかった。
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5.越美線未成区間攻略
そんなバスもほぼ定刻通り下在所バス停に12:59に到着。石徹白線の終点はまだこの先、石徹白の集落を抜けて北へ向かう。ハイエースを降りると目の前に山羊が草を食んでいる。吾輩に気がつくと、ゆっくりと近寄ってくる。蹴られるのではないかと身構えたがそのようなことはなかった。おそるおそる顔を撫でて、自転車を組み立てる。ここから九頭竜湖駅まで下り基調のおよそ16km。14:32発車の福井行に乗りたいので時間的には十分ではあるもののさほどの余裕があるわけでもない。走ったことのない道だから多少の余裕を確保しておきたい。山羊に後ろ髪を引かれつつ自転車をこぎ出す。
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石徹白(いとしろ)の集落は、石徹白川(九頭竜川の支流)が貫いており、おだやかな空気の流れる美しいところだった。時間的余裕があればゆっくり散策してみたいところだがまたのお楽しみとしよう。
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石徹白川を眺めつつ県道127号線を自転車でひた走る。人も車も往来はほとんどなく、路面が荒れている以外は走りやすい道であるといえる。途中、石徹白ダムで迫力の放水を観るなどしつつ、和泉前坂家族旅行村に到着。ここは大野市営バスのバス停があり、九頭竜湖駅側からのバスの終着である。
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ここからさらに県道127号線を走る。途中、天狗岩や山原(やんばら)ダムなどに立ち寄りつつ14:10頃九頭竜湖駅に到着。天狗岩の天狗感があまりよくわからず、僕はMETALGEAR SOLIDに出てくるメタルギアみたいだなと思った。僕だけですかそうですか。
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6.越美北線に乗って帰還
予定通り14:32発の福井行一両編成に乗車。ここからほぼ爆睡してしまい、越美北線の写真はほぼない。越美北線の本当の始発駅越前花堂(福井ではないのだ!)で北陸線を走るサンダーバードのため出発待ちをしているところをかろうじて写真に収めた。
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越美北線と越美南線を乗り通してみての感想だが、そりゃ越美線繋がらんわというのが正直なところだ。両者を比較すると、おそらくは沿線人口がまるで違うのだろう。越美南線は、美濃太田から終点北濃まで人家が絶えないが、越美北線は柿ヶ島を過ぎて少し走ると、終点九頭竜湖まではほぼ誰も住んでいない。そして未成区間は、県境区間には人が住んでいない。高度差が大きく、勾配に弱い鉄道を通すためにはトンネルやその他さまざまな工事が必要だろうと思われるが、採算的にはおそらくアウトだろう(国鉄時代なら採算度外視でできたかもしれないが)。
また越美南線は、今回乗車した「清流列車1号」もそうだが、他にも観光列車「ながら」やイベント列車を積極的に走らせており、観光にかなりシフトしている。越美北線も、観光を意識していないわけではないと思うが、越美南線に比べるとどうも弱い。個人的には観光客に媚びを売ったりしないツンデレ越美北線も好きなのだが、生存戦略としてもう少し観光に力を入れてもいいのかもしれない。
越美北線と越美南線を比較することにあまり意味はないのかもしれないが、盲腸線の生き延び方として、そしてもともとは繋がる予定であった路線同士として、どうしても見比べてしまう。かたや三セク化することで存続を図り、かたやJRに任せたまんまで廃線は目の前だ。越美北線も三セク化すればいいのかもしれないが、おそらくは沿線自治体(とくに福井市)にそこまでの覚悟はないのだろうとも思える。
などとぼんやり考えていると、一両編成の車両は先程のサンダーバードのせいで少し遅れて16:10頃福井駅に到着した。越美線踏破完了。こういった冒険気分の旅ができるのも、いったいいつまでのことだろうか。
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