【鹿児島県阿久根市】日常に溢れたものと新しい価値を結びつける”きてん“に / より処“きてん” 川畑ゆかりさん
インタビュー
鹿児島県阿久根市にて『より処“きてん”』を運営しながら、地域の人が集う場づくりをされている川畑ゆかりさん。そんなゆかりさんから現在の活動に至った背景等を伺いました。
私には何ができるのか?
結婚と同時に阿久根市の大川地区へ移住されたゆかりさん。
大川で暮らすようになってからは子育てや家業、学校等
日々のことに追われる生活を送っていたといいます。
お子さんが全員高校を卒業し、子育てが一段落。
そのタイミングで地域の人権擁護委員や商工会議所女性会に所属することになりました。
「タイミング良く、2つのお話をいただきました。夫からは“これからはまちのためにも、そして、自分のためにも活動を積極的にやってみたら?”と背中を押してもらいました。」
「家業はガス関連の事業をしていたので元々地域の皆さんとは接点がありました。でも、活動をするようになってから、さらに濃くお互いのことを知るようになったと思います。」
「結婚前から華道を習っていて花好きが高じて結婚後はプリザーブドフラワーのディプロマを取得し、市の講座で一度教えたこともあります。基本的に人と会って、話をするのが好きなんです。」
2014年のこと。
ゆかりさんにとって1つの転機が訪れます。
それは阿久根市の地域おこし協力隊(以下:協力隊)との出会いでした。
ちょうど、大川地区の資源発掘のため調査で回っており
現地住民として、そのサポートをされたそうです。
その過程でリバートレッキングの企画やフリーペーパーの制作、ボンタンを使った商品開発等、それまで当たり前だと思っていた地域のものに新しい価値が付け加えられるのを目の当たりにするのです。
“私には何ができるのだろうか?”
そんな想いがフツフツと芽生えていく中で
空き家改修の話が持ち上がりました。
「ちょうど、自宅の前に昔タバコ屋さんだった建物があったんです。長年放置されていて、誰も管理していない状態でした。」
「“解体したほうがいいのでは?”と主人とは話をしていました。そんな矢先、地域づくりの先端地域の事例が新聞に掲載されていたんです。それは空き家を改修した居場所づくりでした。」
誰かにとっての“きてん”に
2017年春に元タバコ屋の改修を決意。
リノベーションが専門領域の協力隊にアドバイスを受けながら、工事を進めていきます。
そして、同年夏、地域の大工やご主人のサポートもあり『より処“きてん”』として生まれ変わりました。
「まずは宿泊とレンタルスペース利用から始めることにしました。」
「宿泊は修学旅行の学生さんや民泊の方を中心に、レンタルスペースは習い事や吹奏楽の演奏会といった、温度感のある集まりで利用されています。」
“きてん”の由来は何なのでしょうか。
「鹿児島弁で”来てん(おいで)“を意味しています。地域の皆さんに来ていただけるように想いを込めました。」
「ある友人からは“起点(きてん)の意味もあるのは?”と突っ込まれました。特に意識していなかったのですが(笑)。」
「他にも“き”には喜や基の意味も込められています。訪れた皆さんが色々な意味での“きてん”を感じてもらえたら嬉しいです。」
2020年9月からは毎月第2水曜日に小さな市場を開催しています。
「最初はつけ揚げ(さつま揚げのこと)の日としていたのですが、2021年の頭からは“もやい市”と名付け、地域のものを使った商品を販売しています。」
「“もやい”とは船を岸壁に固定する時の結び方(もやい結び)のことです。他にもたくさんのひと・もの・ことを繋げるといった意味もあって、この場にピッタリだと感じました。」
販売しているのは大川地区や阿久根の食材を使ったものが多く、特にお弁当やつけ揚げは人気商品となっています。
午後0時になる前に売り切れる商品も多いのだとか。
“もやい市”がきっかけでゆかりさんのスキルアップや地域資源の発掘にも繋がっているそうです。
「家庭や地域で余った野菜をアレンジして惣菜やお弁当を作っています。そのために調べては勉強するの連続なので、阿久根のことを今まで以上に知れていると思います。」
小さなまちでも、できること
“もやい市”を通して、資源の発掘のみならず、阿久根でチャレンジしている若者との出会いもあるといいます。
阿久根の食材を使ったお惣菜等をキッチンカーで提供している『うみまちテーブル』がお弁当を販売したり
阿久根へ移住したばかり人たちが遊びに来たりするんだとか。
「彼女たちのファンになって定期的に来てくださる方もいらっしゃいますし、彼女たち自身も色々な人と繋がりができるので、みんなWIN-WINの関係になっています。」
「恥ずかしい話、最近バタバタしていてあまりSNSで告知もできずにいました。でも、3年くらい毎月開催しているからか、皆さんの頭の中で“もやい市がある日だ!”と認識してくださって、自然と人が集まってきてくださるんです。」
「少しずつですが、私たちや地域の皆さんにとっても、この場所があることが、“もやい市”があることが日常でもあり、文化になってきてもらえているのではと感じています。」
「小さなまちでも、小さいなりにできることがある。それがここ数年で気づいたことです。」
自身の活動をそのように振り返るゆかりさん。
「以前は自分がやっていることを表に出すことに少し抵抗があったんです。でも、地域の皆さんと活動することで、大川や阿久根の良さについて胸を張って言えるようになってきました。」
「ずっと変わらず大切にしていることは笑顔でいることです。だからこそ、お願いや相談されることもあります。ニコニコしていることで“この人なら…”と感じてくださっているのかなと思っています。」
「どのまちも地域も大変な局面にありますが、何より自分たちがまずは楽しくいることからだと思います。そうすれば、自然とその空気が伝染していって楽しいまちになるのではないかなと。」
「まずは目の前に映る何かと少しずつ向き合っていくこと。そんな小さな積み重ねが“もやい結び”のように、どんな大変なことがあっても解けない何かを生み出せるのだと感じています。」
屋号 | より処“きてん” |
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URL | |
住所 | 鹿児島県阿久根市大川8201 |
備考 | 問い合わせ先 090-6294-2247(川畑) |