【鹿児島県鹿児島市】 地に足をつき、寄り添い、ともに育てていくモノづくりを / dokkoi 吉満瑞貴さん
インタビュー
鹿児島県鹿児島市を拠点に『dokkoi』の屋号でデザインからコーティングまでのウェブサイト制作やグラフィックデザインをされている吉満瑞貴さん。そんな瑞貴さんから現在のお仕事に至った背景等を伺いました。
地に足をつく
中学時代から海外への憧れが強かった瑞貴さん。
将来は国際協力関連の仕事をしたいという夢を抱いていた時期もあったそうです。
高校生になると国連が主催する弁論大会で賞を獲ったこともあるのだとか。
そんな瑞貴さんに恩師が放った一言が今でも頭に残り続けているといいます。
“君は地に足がついていないのではないか?”
「当時は、その言葉の意味がわかりませんでした。大人になってから、いかに自分が遠い世界にばかり憧れを強め、身近なところに目を向けていなかったかに気づかされました。」
高校卒業後の進路は、自分なりに考え、海外の大学へ行く選択をすることになります。
「海外に出てみたい気持ちと、好きな芸術分野を学んでみたい気持ちがありました。それでアメリカの学校を中心に探していました。」
「探しているうちにサンフランシスコの美術大学を見つけました。そこでは当時はまだ珍しかったウェブデザインの専門学部があったんです。」
「ウェブデザインはきっと独学では難しいと感じていたので、それを専攻してみることにしました。」
「大学では私の色彩感覚を日本的だと褒めてくれる人が多くて。それには非常に驚きました。」
当時のことをそのように振り返ります。
「当たり前だったことを褒めてもらうことに戸惑いを感じながらも、自分のアイデンティティに気づくきっかけにもなりました。」
「ある講義では、日本の言葉や技術が頻繁に出てくることもあって、先生たちもかなり評価していました。」
「日本の文化や技術を褒めてもらえることの凄さもですが、何よりも嬉しい気持ちが強かったです。」
「“あ、私って日本人なんだな”って思ったんです。サンフランシスコで過ごした時間は日本人として、一個人として、当たり前だと思っていたことの良さを教えてくれました。」
「そうしているうちに卒業を控えて思ったのは、“何のためにデザインするか?”を意識して仕事したい。有名なデザイン会社よりも、小さくても共感できる案件に携われる会社で働きたい。そう思うようになりました。」
調べているうちに、偶然見つけた東京の会社の求人を発見。
タイミング良く、代表とサンフランシスコで会うことができ、その会社へ就職することになったのです。
1つのモノを一緒に育てていく
入社した会社ではウェブサイトの制作の他にもPRの案件等、幅広く実践を積まれていきました。
しかし、次第に自身の中で疑問に思うことが出てきたといいます。
“納品したウェブサイトは、その後、どうなっているのだろうか?”
“作って終わり、ではなく、長期的に関わって一緒にウェブサイトを育てていくことはできないだろうか?”
実情として、たくさんの案件で手一杯だったのもあり、納品後はクライアントから相談がない限りは、納品側が関わるのは難しかったそうです。
「“それでいいのだろうか?”と自問自答する日々でした。たくさんのウェブサイトを作るよりも、1つのウェブサイトについて時間をかけて育てていきたい気持ちが強くなりました。」
「日本の伝統工芸や雑貨が好きだったのもあり、手仕事や暮らしの道具を紹介する店を運営する会社へ転職することにしました。」
その会社ではオンラインショップの制作を担当しました。
販売が目的の中で、どんな課題があり、そこをどのように改善していくか。
1つのウェブサイトに集中して関われるからこそ、そういった過程と向き合うことができたのだとか。
「継続的に売上を伸ばすには、お客様に支持され続けるサイトである必要があります。“常に現状に満足せず、ちゃんと育てていかないといけない”といった気持ちになりました。」
自分の力を活かして地域と
日本に戻ってから身近な文化や日常に対する興味がさらに深まった瑞貴さん。
故郷・鹿児島に対しても同様でした。
「帰省して、改めて鹿児島を巡っていると、面白い人やお店が多くて。自分も鹿児島で何かできるのであれば、いつか戻ってやってみたい。そう思いました。」
「そんな時『移住ドラフト会議』というイベントを見つけたんです。それに参加し、県内の様々な地域で活動されている皆さんと接点を持つことができました。」
その中でも深く交友を築いたのが日置市の美山地区。
そのエリアでは2ヶ月に一度『美山の朝マルシエ』(以下:朝マルシエ ※)が開催されていたのです。
「現地で活動されている方々と話し合って、朝マルシエのフライヤーを制作することになりました。」
東京で仕事をしながら2ヶ月に一度は朝マルシエのお手伝いへ。
そんな生活を1年間送りました。
※現在、開催されておりません。
“自分のできる力を活かして地域の人と一緒に何かができたらいいな。”
そんな想いが少しずつ湧き出てきたといいます。
「実は、朝マルシエのフライヤーがきっかけでお仕事の相談をいただく機会がちょくちょくあって。地域に関わりながら、挑戦させてもらったことが、さらに違うきっかけに繋がるのは嬉しいです。」
朝マルシエ以外にも美山の人たちが東京でイベント出店された際はお手伝いをされたのだとか。
他にも、帰省したタイミングで他の地域にも通い、鹿児島の文化を感じつつ、関係性を築かれていったそうです。
そして、2021年。
Uターンし、鹿児島にてフリーランスとして動き始めます。
「屋号はdokkoi(どっこい)にしました。大きな大切な何かを、一緒に“どっこいしょ”と汗を流しながら持ち上げるような、そんな関係性を築けるお仕事がしたい。そんな想いで名づけました。」
「クライアントさんが我が子のように大事に育てたもの。誰かに伝えたい何かが、しっかり伝わるように、ウェブサイト制作やグラフックデザインを通してお手伝いしています。」
自分事として寄り添うこと
Uターンされてから現在に到るまで長期的にウェブサイトの伴走を続けている案件の1つが『東シナ海の小さな島ブランド社』が運営する『山下商店』のオンラインショップです。
本社のある甑島へ定期的に通い、現状を分析し、試行錯誤を繰り返しているといいます。
「山下商店のオンラインショップでは、消費者に単に購入していただくのではなく、甑島の風景を感じてもらえるような動線づくりを意識しています。」
「担当のスタッフさんも熱心に関わってくださり、ウェブサイトもですが、私たち自身も一緒に育っていっている感覚がして嬉しいです。」
「ずっと関わらせていただけるからこそ、結果が如実にわかってきます。その責任の重さも感じています。」
他にも鹿児島で15年以上続いているデザイン関連のイベントにも関わるなど、繋がりや仕事の幅も広がってきているそうです。
「先輩たちが築き上げてきた土壌の中で関わらせていただくと“これをどうやったら次の世代に引き継げるのか?”と自然に考えるようにもなってきました。」
最後に瑞貴さんが大切にされていることを伺いました。
「直接クライアントさんのもとへ会いに行くことは大事にしています。現場で目と目を合わせて話し、その土地の空気を肌で感じないと、いいものは作れないと思っているからです。」
「仕事をしているとき、自分が楽しめているかも重視しています。仕事なので大変なこともあるけれど、やっぱりワクワクする気持ちは大切にしていたいです。」
「鹿児島へUターンしてから、暮らしと仕事の間で過ごしている気がします。だからこそ、ちょうど良い距離感で誰かと関わりながら、一緒にお仕事ができているのではないかと思います。」
「フワッとしていますが、将来的には自分自身もお店をやってみたいと考えています。お店を始めることで、関わらせていただくお仕事が今まで以上に自分事として捉えられると思っています。まだ先のことかもしれませんが、私の力を求めてくださる方にもっと寄り添っていけるようになりたいです。」
屋号 | dokkoi |
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URL | |
住所 | 鹿児島県鹿児島市名山町8-7 HAY 2F |