【鹿児島県肝付町】岸良の心地良さを、“でで”の香りにのせて、お裾分けする / 岸良リトリート 坂田蔵人さん・みのりさん
インタビュー
鹿児島県肝付町の岸良地区では、古くから地域に自生する固有種の香酸柑橘・辺塚だいだいが存在します。その辺塚だいだいを材料に“ででこしょう”と“ででスコ”を製造されている岸良リトリートの坂田蔵人さん・みのりさんに現在の活動に至った背景等を伺いました。
岸良に広がるシンプルなモノに魅かれて
2015年に岸良へ移住された坂田さん夫妻。
“自分たちの手で、安心・安全な暮らしをつくっていきたい。”
“直感や感覚を信じて、暮らす場所を探したい。”
東日本大震災を機に、そんな想いが強くなり
今後の拠点探しを進めていったといいます。
「逗子に住んでいた時に、何となく入ったカフェで今まで嗅いだことのない良い香りがしたんです。それが辺塚だいだいと岸良との出会いでした。」
「“何だ、この香りは…”と思うくらい、辺塚だいだいの香りに魅了されたこと。岸良に何度か通ううちに、日常の中で広がるシンプルな風景が、自分たちにとって際立つものだったこと。それが決め手となって、岸良に移住しました。」
岸良では毎年9月から辺塚だいだいの最盛期を迎えます。
特に専業農家はおらず
家庭菜園として、生活の範囲内で育てている人がほとんどだそうです。
「移住すると、辺塚だいだいが気軽に手に入るようになり、まずは家庭料理として色々試すようになりました。例えば、絞って揚げ物や魚にかけたり、ジュース用に使ったり。」
「元々、農業で生計を立てることに興味があったんです。でも、辺塚だいだいを使って商品開発をしようとは思っていませんでした。」
「柚子こしょうが好きだったのですが、岸良では中々手に入らなくて。ちょうど、無農薬の唐辛子を自分たちの畑でたくさんつくっていたので、辺塚だいだいの皮と合わせてみたんです。それが“ででこしょう”誕生のきっかけでした。」
主役でもなく、脇役でもない存在
辺塚だいだいは地元の方言で“でで”と呼ばれています。
柚子こしょうをイメージしてつくったこともあり
“ででこしょう”と名づけたそうです。
「最初はつくったものを友人にお裾分けするレベルでした。すると“美味しい”“これ、イケるじゃん!”と嬉しい声が広がって、気がつけば商品開発に至っていました。」
「マスキングテープに書いた文字を友人がそのままラベルにしてくれました。包装は、使われていないリーフレットを使用しています。いろんな方のサポートをいただいて、商品として素敵に仕上がっています。」
そして、2017年の秋。
ついに“ででこしょう”として商品を販売することになったのです。
“ででこしょう”のオススメの使い方について伺いました。
「卵かけご飯や脂の乗ったお刺身にチョンとかけるだけでも贅沢な味になります。“ででこしょう”自体が旬なモノなので、何も味付けをしていない旬の食材と合わせて食べるのが一番のオススメです。主役ではないけど、脇役でもない。そんな存在です。」
「他にも“ででスコ”という商品もあります。辺塚だいだいの果汁とハバネロのフルーティさがマッチして、中毒になるくらいハマる人も多く、特に洋食にオススメです。」
「どちらの商品も偶然生まれたものなんです。まだまだ分析できていないところもありますが、だからこそ、さらなる可能性を感じています。」
“良い”と思ったモノをお裾分けする感覚
最近は地道な活動が功を奏し
県内外にご縁が広がっているといいます。
その中でお二人が大事にされていることを教えてくれました。
「辺塚だいだいは旬が限られます。だからこそ“この商品の良さや出会える喜びを一緒に味わおう”という気持ちで、お客様と接しています。」
「辺塚だいだいに助けられていると実感する日々です。岸良に移住して、いろんな方と繋がって、日々の営みができているのは、辺塚だいだいがきっかけなんだなって。」
「繁忙期以外では、例えば、デイサービスを利用されている方を私たちの拠点へ案内したり、保育園の子たちと一緒にさつまいも掘り体験といったイベントごともですし、日常を通した地域の皆さんとのコミュニケーションも大事にしています。」
「振り返ると、いろんな方のおかげで地に足をついて、岸良での暮らしを心地よくできていると感じています。自転車に乗ったり、景色をみていると“気持ちいいな”“今日も綺麗だな”って。」
「“これ、美味しんだよ”という、素直な気持ちが毎年続いていて、その感覚を皆にお裾分けしている感じなんです。商品や販売を通して、味だけではなく、私たちが“これがいい!”と思っている岸良の日常も届けているのではないかと思っています。」
「辺塚だいだいの魅力を発信するためには、細く長く続ける、ことが大事だと感じています。」
「“辺塚だいだいの時期だよ”“ででこしょうを楽しめる時期が始まったよ”と毎年9月に言えるように、気負わずに今の活動を続けながら、岸良での暮らしを楽しもうと思います。」
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