【鹿児島県阿久根市】ボンタンの付加価値を高め、次の世代へ託せる土壌づくりを / ボンタンプロジェクト
インタビュー
鹿児島県阿久根市にてボンタン農家4名で結成された『ボンタンプロジェクト』。農家として従事しながら、ボンタンを未来にのこすために様々な取り組みを行っています。その背景等を伺いました。
ボンタンの付加価値を上げるために
阿久根はボンタンの産地として知られ、
12月上旬になるとボンタン農家の農園では黄色く実った果実を見ることができます。
そのまま食べる
ボンタン漬けにする
お菓子やアイスの加工品にする 等
様々なカタチとして多くの人に愛されてきました。
しかし、
果実が実る樹木の老木化や専業農家の後継者不足もあり
ボンタン文化が途絶える危機に扮しているのです。
そんな状況を打開するため、
2017年に『ボンタンプロジェクト』が立ち上がりました。
きっかけは当時着任していた阿久根市の地域おこし協力隊からの一声だったといいます。
“ボンタンアメの存在は知っていましたが、果実そのものを見るのは初めてです。もっといろんな人に知ってもらえるように一緒に何かできませんか?”
そこでボンタン農家の後継者として日々奮闘されていた4名と一緒に、販路拡大やボンタンの付加価値の向上を目的として活動を始めたのです。
「昔から個人の付き合いはあったのですが、ボンタン農家としてみんなで一緒に取り組むことはありませんでした。」
「それで、協力隊の方が“ぼんたん会議”と名づけて、毎月集まる場をセッティングしてくれたんです。抱えている問題や取り組みたいことを意見交換し、次のアクションに繋げていきました。」
その中で特に挙がったのが
ボンタン青果一つ一つにおける単価の低さでした。
“それなら、青果の単価を上げるために、何ができるかをまず考えよう。”
加工品に力を入れている先進地へ視察を行い
それを踏まえてジャムやジュースといった商品開発を進めていきました。
いろんな案が出ましたが、壁にぶつかり、思うような取り組みができませんでした。
そんな時、鹿児島の浴場組合とご縁もあり、
一緒にある取り組みを行うことになるのです。
地域や職種を越えることで
鹿児島市内の浴場を中心に10軒程、
『ボンタン湯』というイベントを開催。
シンプルに湯船にボンタンを浮かせて
香りを楽しみながら銭湯を利用してもらう内容でした。
その後、2018年に全国浴場組合の集まりが鹿児島で開催されたタイミングで、プロジェクトのメンバーで会場に足を運んだそうです。
そこで東京の銭湯組合と繋がり、気がつけば都内の200軒の銭湯でボンタン湯が広がったのだとか。
「銭湯も私たちと同じで、後継者がおらず、廃業するところが増えてきているのが現状でした。それなら、お互いの力をかけ合わせることで、集客できるのではないか。そんな話になり、県外でもボンタン湯のイベント開催に至ったんです。」
「ボンタンは皮が厚いので、剥けたり、潰れたりしないので、排水溝に詰まる心配もありません。香りの良さもですが、安心して長く銭湯に浮かべることができるということで、銭湯組合の皆さんからの評価も高いです。」
他にも、北海道や宮城、大阪、愛知など、全国浴場組合の集まりで仲良くなった人を介し、活動を展開されていきます。
特に大阪の銭湯組合の皆さんとはお互いの地を行き来するほどの交流が続いているといいます。
「以前、ボンタンの収穫時期に阿久根に来てくださったんです。しかも、出荷の作業まで手伝ってくださいました。“あれ?数が合わない”と慌てる場面もありましたが、それはそれで良い思い出です(笑)。」
「今年の夏は、阿久根を満喫してもらおうと思って、自然を満喫できるアクティビティのプランを用意して、楽しんでもらいました。」
「コロナ渦も、継続してボンタン湯を開催してくださるところもあって、感謝しかありません。だからこそ、ある想いが芽生えてきました。」
お世話になった人たちに還元を
“お世話になった銭湯の皆さんに恩返しをしたい。”
そんな気持ちが発端となり、ボンタンサイダーが2021年に誕生しました。
「銭湯でボンタンの香りをお客様に楽しんでいただいていましたが、ボンタンそのものの味を知ってもらうにはどうすればいいか。そう考えた時、風呂上がりに気軽に手にとれる飲料水にしてみようと考えたんです。」
「弱炭酸にすることで、どの世代にも飲みやすくできましたし、何より、少しでもその利益で銭湯に還元しやすい仕組みになるのではないか。それがボンタンサイダー誕生の背景です。」
「パッケージデザインは阿久根在住のデザイナーさんにお願いしました。丁寧に向き合ってくださり、味だけではなく、パッケージも含めて、子どもから大人まで楽しめるものになりました。」
ボンタンサイダーの輪は銭湯だけではなく、
阿久根市内外にも瞬く間に広がっていきます。
「クラウドファンディングを行ったのですが、阿久根在住や出身者の皆さんがSNSで拡散してくださり、多くの支援をいただきました。」
「阿久根市内の子どもたちにボンタンを知ってもらうために、学校給食として無償提供をしたこともあります。それで、子どもたちから親御さんへ伝わり、地元のスーパーへ買いに出かける方もいらっしゃったと聞いています。」
「小さい時にボンタンに触れる機会があることで、大人になった時に少しでもその子たちがボンタンに携わる何かをしてもらえたら。そんな気持ちも込めています。」
「私たちも歳を重ねれば、今できている活動も農業もできなくなる時が来ます。でも、次の世代に人たちにとって、ボンタンが良い記憶として刻まれることで、いつかは阿久根に還元できるのではないかと信じて、活動しています。」
試行錯誤を止めず、良いモノをつくり続ける
他にもボンタンコーラの商品開発、
鹿児島大学と連携したボンタンの研究など
常に先を見据えて取り組まれているボンタンプロジェクトの皆さん。
活動を通して大事にされていることを伺いました。
「ボンタンそのものの付加価値を高める。それを目標に活動を展開してきましたが、まだまだ道半ばだと思っています。商品もですが、ボンタン青果そのものも良いモノをつくり続けていきたいです。」
「プロジェクトを通して、ボンタンを使ったお菓子を製造する企業さんとの関わりを持つようになりました。自分ごとにように、私たちのことを気にかけてくださって、とても心強いです。」
「阿久根市内の企業や飲食店との関わりも増えてきています。販売やイベントを通して、皆さんにお願いできるところはお願いして、地域内で良い循環をつくれたら嬉しいです。」
「ここまで来れたのも、プロジェクトの立ち上げや、その後の伴走をしてくださった協力隊の方のおかげです。その気持ちはずっと忘れないでいたい。」
最後にプロジェクトを通して、見えてきた阿久根の可能性について伺いました。
「ずっと阿久根に住んでいたからか“阿久根は何もない”と思っていました。でも、プロジェクトに関わってくださった仲間を通して“阿久根ってまだまだ捨てたものじゃないよね”と思うようになったんです。」
「ここ数年で、入ってくる情報や湧き出るアイデアも変わってきたと思います。それも仲間が私たちの固まった価値観を耕してくれたおかげなんです。」
「うまくいかないことも大変なことも多いと思います。それでも“私たちに何ができるか?”を常に頭に置き、仲間と一緒に試行錯誤を繰り返すことで、ボンタンを未来にのこす一端を担えたらと思います。」
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