【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.8
連載
山形市長町にある〈エンドー〉は、地域密着型のスーパーである。創業は昭和40年。以来、地元の人々に親しまれ続け、日々、さまざまな顔が集う。そこにある時間と、ここにしかない風景。今日のエンドーでは、どんなことに出会えるだろうか。
エンドーの休日。
普段は仕事着を身にまとい、エプロンを腰に巻いてお店に立っている店主・遠藤英則さんは、5人のお子さんの父親でもあります。エンドーは日曜と月曜が定休日。子どもたちは学校があるため、家族みんなが揃うのは日曜日です。そこで今回は、遠藤さん一家がどんなふうに休日を過ごしているのか、少しだけのぞかせてもらうことにしました。
日中はどこかしらに出かけていることが多いので、夕方のちょっと小腹がすいたタイミングで一杯やりながら、軽くつまむ程度に焼肉を味わうのがちょっとした幸せですね、と遠藤さん。初めに向かったのは〈焼肉苑〉。夕飯前なので、お腹いっぱいになるまでは食べないのが大前提。自転車に乗ってやってきたのは、英則(ひでのり)さん、娘の花香(はなか)ちゃん、息子の有輝(ゆうき)くん。まだ外が明るい時間帯から、年季の入った暖簾をくぐります。
ここで、エンドーファミリー流の焼肉の味わい方を伝授します。まずは牛タンからいきましょう。分厚いタンをよく焼いたら、食べやすいようにハサミで一口大にカットします。これで子どもたちにとっては食べやすく、大人にとっては豪華な“つまみ”の完成。もちろん、ちゃんと夕飯としてお腹いっぱい食べたいときは、白いごはんもセットで頼みます。この日は“おつまみ焼肉”ということで、こんな感じのスタイルなのでした。
“ゆー君”でお馴染みの有輝くん。本当にいい顔で食べますね。お肉大好き、茶色い食べもの大好きな4歳です(もうすぐ5歳!)。エンドーキッズの中では最年少の人気者。
花香ちゃん(9歳)。小学校の授業では図工が好きなのだそう。お父さんと一緒にお肉をテキパキ焼いてくれました。食べるときはこの笑顔。
山形の人にとって焼肉というのは、ラーメンと同じぐらい身近な食べものでもある気がします。そして、みなさんが食べているお肉のクオリティが高く、尚且つリーズナブル。これは山形の食において、広くいえることかもしれません。焼肉、というシチュエーションでいえば、自分の年齢とともに行く人が変わったり、頼むものが変わったり、あるいは戻ってきたりします。そのなかでも家族での焼肉の風景というのは、やっぱりいいものです。
続いてやってきたのは、遠藤さんが仕事帰りに毎日のように通っている〈芭蕉の湯〉。看板のネオンについて、銭湯の方は「切れちゃってるから見た目がアレなんだよね」といっていたけれど、市民にとってはこの“切れちゃってるサイン”こそが、ここまで含めての〈芭蕉の湯〉こそが、愛されているのではないかとも思うのです。ある人は、これが目印にもなっているともいっていたし。入り口には鮮やかなグラデーションに光る“ゆ”のサインがあるので、このぐらいのバランスがちょうどいいような気も。本当に勝手ながら、ですが。
「じゃ、19時ぐらいまで」といって、男湯と女湯に分かれる3人。サウナは92℃ぐらいあり、山形市内でのトップレベルの熱さ。高温を好む遠藤さんには最適なのだとか。「夜遅くまで営業しているのもありがたいですね」とも。湯に浸かった後、サウナ6分を3セットほど。そのあとは至福の水風呂、のち、ととのう。一日の疲れた身体を癒やし、明日への充電タイム。
仕事の日はもちろん休みの日でも、出かける先々で自然と仕事のことを考えたり、これは仕事につながるかもしれない、などと考えたりしていることも多いそうで、銭湯とサウナの時間が唯一のON・OFFの切り替えに役立っているともいいます。毎日のように銭湯に通っていることについて、妻のえりさんは以前こんなふうに話していました。「ずっと仕事してるから、そのぐらいの楽しみはあってもいいのかなって」。だれかにとっての大切な時間を寄り添うように尊重できるのって、素敵だなあと思います。
一足先に、花香ちゃんはお風呂上がりの一杯。ここで飲む冷たい牛乳は、いいですね。
お、ゆー君も牛乳ですか。二人とも牛乳が好きなんですね。
湯に浸かって良い感じに心身ともにほぐれたのか、お風呂上がりのゆー君はすごく元気でした。
今回は、地域密着型スーパーならではのローカルスポットを案内してもらいましたが、エンドーファミリーの休日ルーティンはいろいろ。海や山、川といった自然を求めて出かける日もあれば、今回のように銭湯や温泉の日もあるし、スーパーでお弁当を買って公園で食べる、なんて日も。「山形市内の至るところに出没するので、どこかで見かけたら気軽に声かけてくださいね」とのこと。
繁忙期になると、休みの日でも仕込みを行うことがあるそうで、定休日とはいいつつも束の間のひとときといったところ。仕事も大事、家庭も大事。だからこそがんばれる。それぞれの立場や職業は違えど、どんな人でもそうやってバランスを保ちながら、私たちは生活しているんじゃないかと思います。
家族との良い時間を過ごした遠藤さんは、明日からまた、変わらずにお店で魚をさばいたり、お客さんと会話したりしながら、いつものようにお店に立っていることでしょう。
【撮影にご協力いただいたお店・施設】
焼肉苑
山形県山形市城北町2-10-15
023-644-8883
芭蕉の湯
山形県山形市北町3-7-30
023-681-4126
DATA
エンドー
住所 山形県山形市長町2-1-33
電話番号 023-681-7711
営業時間 10:00-19:00(日・月曜休)
https://gesoten.jp/
写真:伊藤美香子
文:井上春香