【クリエイティブシティセンターQ1/展示企画】建築家・濱定史「技術の再実装」
イベント
※終了しました。
やまがたクリエイティブシティーセンターQ1 にて、建築家・濱定史の個展が開催されます。
■展覧会ステートメント
「技術の再実装」 濱定史+山形大学濱研究室
山形大学濱研究室では、伝統的な建築の構法・デザインについて、生活を成立させる器としての民家やその周辺の倉庫や作業小屋、塀や生け垣などの付属物を主な研究対象として、その形のもつ機能や生産工程・組織・生業や資源の関係、これらの歴史的背景を読み解いて研究している。
民家にみられるような伝統的な建築の構法・仕組みは、その形状がもつ物理的な特性や機能だけでなく、気候・植生などそれらが建てられた土地の風土、職人技術やその場所の制度などの文化的背景等、これらの事柄が複雑に作用して地域的特徴として現在にあらわれているとみることができる。一方で多くの情報・物資が一瞬で世界中に広がり集められる現在において、地域性や独自の形は見えづらくなっている。
茅葺きの屋根はわずか100年前には日本で最も普及していた屋根の葺き方である。燃えやすく腐りやすいこと、ススキや葦といった茅を栽培して収穫することに労力がかかること、かなり短いサイクルでメンテナンスが必要であること、職人の減少・高齢化など現代の社会生活や需要から離れたために、その数を減少させ、希少な屋根となっている。難しい課題がある一方で燃えやすい、腐るといった特徴は、建築の更新時に懸念される廃棄物や環境負荷軽減・資源循環など現代的な重要課題をすでに解決している材料ともいえ、社会に再び実装できる可能性が高い。
今回の展示では、過去より続く伝統的な技術を現在の生活に再び実装する試みである。文化財に見られるような伝統的な技術を保存し継承していくことは、後世に技術を伝える意味でも重要である。一方でテクノロジーや生活習慣も変化した我々の生活の中で、懐古趣味的な技術を愛でるということではなく、伝統的な技術を新しい形や異なる用途に見立てて現代の生活に実装してもよいかもしれない。
2つの技術を再実装する装置としての小屋をアーティストの永岡大輔氏、中崎透氏とともに提案している。永岡大輔氏との小屋では、白鷹町における民俗技術のリサーチをもとに、白鷹町民俗資料館より貴重な民俗資料をお借りして藁縄・和紙・背負子などの民俗道具・材料を現在の生活に再実装する。
中崎透氏との小屋では安価に倉庫や下屋などDIYでつくることができるポリカーボネートの小屋に茅葺きの技術を再実装する。
現在の技術は過去と地続きにあるとすれば、これまでの歴史を反映させた民俗的・土着的な技術にはその地域を反映させた新しい形となると考える。
【作家プロフィール】
●濱定史(はま・さだし)
山形大学工学部建築・デザイン学科助教(伝統木造構法、保存改修設計)。1978年茨城県生まれ、2002年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業、2004年筑波大学大学院修士課程芸術研究科修了、2004年−2006年里山建築研究所、2009年筑波大学大学院博士課程人間総合科学研究科修了(博士[デザイン学])、2010−12年東京理科大学工学部建築学科補手、2012−17年東京理科大学工学部建築学科助教、2017年より現職。
●永岡大輔(ながおか・だいすけ)
1973年山形県生まれ、神奈川県横浜市在住。Wimbledon School of Art 修士課程修了。現在は横浜と山形を拠点に活動している。記憶と身体の関係性を見つめ続け、創造の瞬間を捉える実験的なドローイングや映像作品などを制作する。2017年より建築的ドローイングのプロジェクト「球体の家」を始動。日常を取り巻く多様な側面を検証しながら展開している。東北芸術工科大学大学院非常勤講師。
●中﨑透(なかざき・とおる)
1976年茨城県生まれ。水戸市を拠点に活動。武蔵野美術大学大学院造形研究科博士後期課程満期単位取得退学。言葉やイメージといった共通認識の中に生じるズレをテーマに自然体でゆるやかな手法を用いて、看板をモチーフとした作品をはじめ、パフォーマンス、映像、インスタレーションなど様々な形式で制作を展開している。個人としての活動に加え、2006年にアーティスト・ユニット Nadegata Instant Party を結成、2007年にはオルタナティブ・スペース「遊戯室(中﨑透+遠藤水城)」を設立。「プロジェクトFUKUSHIMA!」では2011年発足当初より主に美術部門のディレクションを担う。