【移住者インタビュー】山形で、モロッコ。/アミン ヌハエリさん
インタビュー
山形市七日町の路地裏の、外壁の青が鮮やかな、ちいさなお店。名を「café de maroc(カフェドマロック)」という。オープンしたのは2022年10月のこと。「maroc」は「モロッコ」の意。ここはモロッコ人オーナーシェフ、AMINE NHAIRY (アミン ヌハエリ)さんがひとりで厨房に立つお店だ。本格的なモロッコ料理に加えて、モロッコワイン、そしてモロッコの雑貨も並び、
「モロッコを旅するみたいに楽しんでもらいたい」
とアミンさんは語る。
来日は約10年前。モロッコの首都カサブランカから日本にやってきた。はじめは静岡で、その後は東京や神奈川、北海道といったさまざまな都市のレストランやホテルで働いてきた。そしていつしか「じぶんの店を持って、日本のひとたちにモロッコ料理を食べてもらいたい」と考えるようになっていた。
日本人の奥さんの転勤をきっかけにこの山形のまちにアミンさんがやってきたのは、2021年12月のこと。それからわずか一年たらずのうちに、念願だったじぶんの店をこのまちでひらいた、というわけだ。
「東京や神奈川でも、以前から物件を探してきました。ここを紹介されたとき、家賃も、ちいさな空間も、ちょうどいいと思いました。また、東北にはモロッコ料理のお店がほかにありませんから、チャンスのようにも感じました。ここでじぶんのお店をひらいて、料理をつくり、お客さんが食べにきてくれる。それはとてもうれしいことです。これはわたしの仕事でもありますが、趣味でもあり、夢でもあります」
モロッコ料理の代表といえば、クスクスとタジン鍋だ。カフェドマロックでも、クスクスやさまざまな種類のタジン鍋をはじめとしていろいろなメニューを用意している。どれもがさまざまなスパイスを用いてつくられており、とても色鮮やかな見た目をしている。
もちろん本格的モロッコ料理ではあるが、そこには山形の素材がたくさん使われてもいる。
「山形の野菜はすごくおいしいですね、とてもフレッシュでとても味がいいです。牛肉も鶏肉もいいですし、お水もいいですし、果物もいい」
とアミンさんは語る。
華やかで独特な色と模様のタジン鍋。サハラ砂漠をラクダに乗って渡る絵画。さまざまな器や雑貨類…。日本から遠く離れたモロッコという異国の地のイメージが、この山形の路地裏に佇むちいさな店の空間を満たしている。
かつてモロッコに旅したことがあるというひとたちが、懐かしいような想いを抱いて店を訪れるという。鶴岡や仙台などといった他のまちからも、アミンさんのモロッコ料理に出会えるのを楽しみにしてわざわざやってくるのだ。
オープンから一年が経つ。アミンさんは、
「これからお店をもっと大きくできるようにしたい。今はまだまだ」
と言う。
アフリカとヨーロッパの接点のような場所にある国、モロッコ。その遠い国のことをとても身近なものに感じることは、この山形のまちに暮らしていてもできることだ。
カフェドマロックのアミンさんに、会いにいってみてはいかがですか。
INFORMATION
山形市七日町1-2-56
https://www.cafedemaroc.com/
Photo Fuse Kaho(strobelight)
Text Nasu Minoru(real local Yamagata)