(終了しました)【鹿児島県大崎町】人口73人の限界集落で、新しいコミュニティづくりのモデルを / 宮園自治公民館
クラウドファンディング
鹿児島県大崎町宮園(みやぞん)は世帯数39戸、人口は73人の小さな集落です。今回、自治公民館の有志でクラウドファンディングに挑戦されます。その背景と概要について、集落の皆さんからお話を伺いました。
お互いの違いを受け入れ、同じ目線で接する
2021年の春。
地域おこし研究員(※)として田中力さんが大崎町に着任し、
宮園集落を拠点に活動を始められました。
そこで2つの活動を地域に提案したといいます。
・地域の厄介者になっている放置竹の炭化による竹林整備
・未収穫のタケノコ利用など未利用資源の掘り起こし
そして、それらは
地域住民や心身にハンデを持つ障がい者施設の利用者と一緒に行う活動を軸としたものだったのです。
田中さん自身、聴覚障がいがあり、
障がいという特性がある人でも、誰かに必要とされるような世の中に創りたい。
障がい者が暮らしていけるきっかけを創っていきたい。
そんな想いで提案されたそうです。
たまたま
集落が抱えていた課題として竹林整備が挙がっていたこともあり、想いを実現する手段として、
地域住民と町内の障がい者就労支援事業所『ひふみよベースファーム大崎』(以下:ひふみよ)にも声をかけ、活動がスタートしました。
“一体、これから何が始まるんだろう?”
当初は地域住民も“ひふみよ”も困惑した様子だったとのこと。
その両者に対し、
活動内容や協働の意義について丁寧に説明を続け、
少しずつ協力者を増やしていったのだとか。
(※)地域おこし協力隊の仕組みを活用して、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と連携する地域が進めるプログラム。大学院生が地域に住み込みSFCと行き来しながら実践に基づく研究開発を行っている。
ある住民はこのように振り返ります。
「竹林整備って、一人でやると、心が折れると思うんです。途方に暮れるというか…。でも、それが10人、20人という人数でやっていくと、あっという間に景色が変わって、それで達成感を感じるようになりました。」
「地域の人たちは70歳を超えた人たちばかりです。そんな人たちが“まだまだやれる”と自信を持つこともですし、他にも健康維持に繋がったりと良いことばかりでして。」
「ひふみよの利用者の皆さんと接していると“私たちと同じだ…”と感じました。自分たちも年を重ねたら、耳が遠くなるし、目も視えなくなってくる。それって、障がいがあるのと全然変わらないよねって。」
「次第に、打ち解けてきて、一緒にご飯やお茶をする時間も含めて、楽しみになってきました。お互いが“地域に住んでいる仲間”と捉えるようになって、笑顔で接する空間が広がっていきました。」
「夏場が休みなのですが、それを伝えると皆さん“えー!”“他に何かやることないの?”と涙目になりながら、そんな声が上がっていた光景は忘れられないです。」
「いろんな立場や特性をもった人たちが同じ場所で、同じ時間を共有する。それは今の時代に必要なものではないかと感じるようになりました。」
ちょっと時代を戻したような、みんなが集まれる居場所を
新しいコミュニティや楽しみが生まれ、
少しずつ地域住民の中である想いが芽生えたといいます。
“宮園集落をもう一花咲かせたい…。”
20年程前まで集落内には小さな食料品や日用品を扱う個人商店があり、夕飯時には買い物に地域のお母さんたちが集まり、毎日のように井戸端会議が行われていたのだとか。
それが
・お互いの現状報告や家族の安否確認
・子どもの進路相談 などに繋がっていたそうです。
当時を知る住民に話を伺いました。
「おしゃべり(=対話)を通じて、昭和のSNSともいうべき、対面によるお付き合い(=コミュニティ)が存在していたんですよね。」
「その一方で、お付き合いがおせっかいだとか過干渉だと言われ、この濃い関係性を嫌って県外へ出ていく若者がいたことも事実です。」
「それから約20年が経過して、宮園集落も全国的な傾向には逆らえず、世帯数、人口ともに三分の一がいなくなり、また大型スーパーやコンビニの進出で、集落唯一の個人商店も閉店してしまいました。」
今回のプロジェクトメンバーの一人は次のように話します。
「限界集落を持続可能なものにするためには、ただ単に昔のように人口が増えて再生すればいいというわけではありません。」
「既存の住民だけでなく高齢者・障がい者・外国人など、多種多様な方々を快く受け入れ、お互いに助け合う心理的安全性が担保された、そして、それぞれの役割がある集落を創っていく必要があります。」
「そのために障がい者や高齢者が参画者となり、協働で未利用資源を活用したメンマづくり、民泊、カフェなどのコミュニティビジネスを立ち上げてみては?“という話になったんです。」
「そして“その収益をもとに空き家改修や維持管理を行い、新たな移住者の受け入れ態勢を創り、持続可能なみんなの居場所を創ろう”と。」
「宮園集落は、壇ノ浦の戦いで負けた平家の落人たちが移住してきた場所ともいわれています。だからか、変化や他所者に対して寛容的な部分があるのだと思っています。」
「このプロジェクトを通して、70歳を超えた高齢者が新規採用となるような、会社組織に近いものが生まれつつあるのかもしれません。この現象に名前をつけるなら、新生・宮園ビレッジと名付けたいです(笑)。」
新しいコミュニティづくりのモデルとして
今回、クラウドファンディングの目標金額は100万円。
内容は以下のとおりです。
1.宮園集落内にある築90年の納屋を改修して国産メンマの加工場を創ります。
①メンマ加工場整備費用 約40万円
②メンマ加工場備品費用 約30万円
③リターン品準備等 約30万円
費用を抑えるため、基本的にはDIYで行います。
プロジェクトのサポーターとして
田中さん、ひふみよ、新平酒造株式会社という心強いまちの皆さんが協力してくださるのだとか。
プロジェクトを支援していただいた金額にあわせたリターン品は、大崎町のふるさと納税でも人気の品が揃っています。
最後にプロジェクトに関わる皆さんから応援してくださる方にメッセージをいただきました。
「もしよろしければ、応援だけじゃなく、宮園集落へぜひ来ていただきたいです。里帰りする場所が一つ増える感覚で捉えてもらうといいかもしれません。」
「今の時代、誰しもが心に不安を抱えて生きています。限界集落という、ある意味、日本の原風景が垣間見れる場所で、それを発散してもらえたら嬉しいです。」
「私たちは新しいコミュニティづくりのモデルとして挑戦しています。それに賛同していただけたら、そのノウハウは全部提供したいと考えています。」
「まだまだ小さなプロジェクトですが、次の世代も安心して笑顔で過ごせるような基盤づくりを、いろんな人の手を借りて、後悔のないように創っていきたいです。」
文化や特性の違いなど、
お互いの理解を深めるためのみんなの居場所づくり。
そして、新しい集落経営モデルづくり。
それが大崎町の人口73人の集落で始まろうとしています。
気になる方は是非チェックされてみてください。
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