【福井市】新栄商店街探訪 チーズ愛に溢れるチーズの伝道師。HAPPY CHEESE(ハッピーチーズ)
連載
新栄商店街には個性的なお店が立ち並んでいます。一体、どんなお店があるのでしょうか?real local 福井では、実際に訪れて店主さんの声を聞いてみることにしました。
今回のお店は、チーズ専門店「HAPPY CHEESE(ハッピーチーズ)」さん。福井でチーズ屋さんといえば、このハッピーチーズさんに他ならないのです。チーズにまっすぐで誠実な思いを持つ、チーズの伝道師・オーナーの高橋かず子さんのインタビューです。
新栄商店街の動きについてはこちら↓↓↓
・新栄商店街のこれまでとこれから
https://www.reallocal.jp/105651
・新栄商店街を陰ながら支えて
https://www.reallocal.jp/106379
【目次】
・福井でチーズの普及活動をスタート!
・地方でチーズ屋さんはできるのか?
・本場フランスからチーズ伝道師の称号を授与
・少量の量り売りで美味しいところを確実に伝えたい
福井でチーズの普及活動をスタート!
新栄商店街の中央にある広場「新栄テラス」を囲むようにして並ぶ店の一角。2014年11月11日にオープンしたHAPPY CHEESEさんは、今年2023年の11月で丸9年となりました。オーナーの高橋かず子さんは、2012年にチーズの資格(C.P.A.チーズプロフェッショナル協会認定)を取得しました。
福井生まれ福井育ちで大学も就職も福井。海外の本格的なチーズにふれる機会のない生活の中、31歳の時に参加したワイン会で本物のナチュラルチーズに出会い、感動。チーズの道にのめりこんでいったそうです。
福井では各国のチーズを買ったり食べたりする場所も少なく、学ぶところもなかったため、しばらく大阪に移り住み、毎日チーズを食べながら勉強を続けていた高橋さん。資格習得後も大阪に住み、チーズ仲間とイベントをしながら過ごしていましたが、それがものすごく楽しかったそう。「これを福井でもやりたい!そして福井のみんなにも美味しいチーズを知ってもらいたい」と福井に戻ることを決意しました。
福井に戻ってからは、印刷会社の在宅ワークをしながら、週末だけ公民館やレストランなどでチーズの講習会やチーズの食べ比べ会を開催。「ここでやらせてください!」とお願いしながら自主的に交流の場を作って行きました。突然の依頼にも関わらず、意外とみんな「いいよ」「面白そう〜」と言ってくれたそう。
すると、少しずつですが、「うちのところでもやってほしい」と声をかけてもらえるようになり、つながりが増えていきました。
地方でチーズ屋さんはできるのか?
しかし、イベントを開いていくうちに、参加者に薦めたチーズが購入できるお店が福井にないことに歯痒さを感じるようになりました。
当時は「これ美味しいからどこで買える?」と聞かれても、自分で都会に行ったときに買ってもらうか、ネットで買ってもらうしかありませんでした。そんな中、新栄商店街で開かれていた「キチバル」という集まりに参加するようになり、駅前の人たちとつながりができました。
みなさんとの会話の流れの中で、現在のHAPPY CHEESEの場所が開店休業状態であることを知り、前のオーナーに相談したところ引き渡していただけることに。
「チーズ屋さんは基本的に都会にしかなく、業界の人にも無理ではないかと言われていたんですよ。でも、いろんなチーズがあることを見てもらうだけでも価値があると考えました。駅前に新しくオープンするテナントへの家賃補助も盛んに行われていた時期だったので、これを機に店を出すことを決めました」。
2014年の1月に店舗を見学し、11月には店を出していたというスピード感。店の設計や電気工事は、つながりのできた新栄商店街の人にしてもらいました。「看板は在宅ワークをしている会社に頼みました。副業に理解があるばかりか、応援してくれる会社だったからこそ始められたんだと思います。今でも会社の人たちがチーズを買いに来てくれるんですよ」。
本場フランスからチーズ伝道師の称号を授与
そして昨年の2022年、高橋さんはチーズの生産国フランスから「ギャルド・エ・ジュレ」の称号をもらいます。この称号は、チーズの普及活動に努めている人に与えられる国際的なもの。10年以上のキャリアを持ち、関係者の方々から推薦をもらって授与されました。高橋さんは現在、フランスお墨付きのチーズ伝道師です。
「まだまだ勉強不足でお恥ずかしいのですが……。製造のことも分かっていないといけませんし、季節の草の状態から乳の状態が変わってくる原理なども理解していかなければ。正直、生産者の方々には敵わないですね」と、どこまでも謙虚な姿勢を見せる高橋さんからは、もっとチーズの勉強をしたい!という気持ちが伝わってきます。
実は筆者もチーズ好きで、HAPPY CHEESEがオープンした当初にウキウキとお邪魔したことがありました。年に一度ご褒美チーズを購入する人でもあるのですが、高橋さんの一番のお気に入りである「コンテ」を食べさせてもらった時の感動は忘れられません。
「コンテ」はフランスのコンテ地方で作られたチーズ。高橋さんはその生産地まで足を運んでいます。「コンテは、顕著に季節の味を感じられるチーズなんです。春と秋とでは全く違うものになるんですよ」と言いながら、コンテを一口試食。「目から美味しい匂いがこぼれそうで閉じてしまう〜」とぎゅーっと目を閉じながら味わう高橋さんの顔は幸福そのものです。
少量の量り売りで美味しいところを確実に伝えたい
HAPPY CHEESEの最大の特徴は、グラム単位で量り売りをしてくれるところ。一人でも食べ切れる少量を買える店はなかなかありません。少しずつ色々なチーズを楽しめる盛り合わせが大人気です。チーズは1週間以上置かないように徹底して9年続けているのも、チーズ愛に溢れた高橋さんだからこそできること。
「チーズが一番美味しいうちに食べてほしい。その状態を管理するのがチーズ屋の仕事だと思うんです。少しずつ一番美味しい食べ頃を持って帰って、美味しいうちに食べきってほしいと思っています」。
当時、中学生だった女の子がお小遣いを握りしめて10gの少量のチーズを買いに通い続け、今では近くの眼鏡屋さんで働きながら自分で稼いだお金でチーズを買いに来てくれるとか。なんというチーズヒューマンストーリー。
高橋さんの愛情たっぷりに並べられたチーズたち。どれも美味しさで溢れているに違いありません。個人的には、今年はチーズフォンデュ用のご褒美チーズをホールで買おうと決めました。皆さんも、お気に入りのチーズを探してみてはいかがでしょうか?
次も新栄商店街のお店を引き続き紹介していきます。どうぞお楽しみに!