【福井市】新栄商店街探訪 商店街と関わり続けて10周年!! 福井大学原田研究室
連載
新栄商店街の探訪記。今回は、新栄商店街を飛び出して、福井市文京にある国立大学法人 福井大学へお邪魔してきました。なぜ、大学へ?と不思議に思われるかもしれませんが、新栄商店街のことを10年にわたって調査し続けてきた研究室がここにあるのです。
地道な調査とヒアリングを行なってきた原田陽子准教授と、修士2年の成田悠真さんに、新栄商店街の歴史や出来事をまとめたパンフレット「新栄ヒストリー」の生まれるまでをお伺いしてきました。
新栄商店街の動きについてはこちら↓↓↓
・新栄商店街のこれまでとこれから
https://www.reallocal.jp/105651
・新栄商店街を陰ながら支えて
https://www.reallocal.jp/106379
・新栄商店街との関わりのはじまり
・2013年から調査し続けて10周年!
・これからの新栄商店街のこと
正門をくぐって、工学部へ。学舎を入っていくと、建築の模型図や図面などが雑然と置かれた部屋の奥に、福井大学工学部 建築・都市工学科の原田陽子准教授の研究室があります。
原田研究室は、2013年に福井市の都市整備室から2年間の共同研究の依頼を受け、新栄商店街の地権者の意向調査を実施することをきっかけにして、新栄エリアに関わることになりました。当初、福井市は郵送でのアンケート調査を想定していたようですが、直接会って話を伺うべきだと思い、ヒアリング調査中心でまわったそうです。
その結果、これまでに新栄商店街が再開発計画や構想がありながらも実施に至らなかったことから、今すぐできる改善方法として暫定的に低未利用地を利用して歩いて散策したり、緑のある小広場を求める声が多いことがわかりました。そこで、原田研究室では当時コインパーキングとして利用されていた空間を、ウッドデッキの広場として活用する「新栄テラス」を2014年に実施しました。
暫定的な取り組みとして始まった新栄テラスでしたが、「不自然ピクニック」など、老若男女が楽しめるイベントが多数企画され、その都度多くの参加者がこの場所に集いました。
2016年には新栄テラスが常設化し、民間に運営が委託され、現在も新栄テラスが商店街の中の憩いの場になっています。イベントがない間も駅前を訪れた人や周辺で働く人々が、テイクアウトのコーヒー、お弁当、本などを片手に常設のベンチでひと休みをする光景が見られるようになったのです。
こうして2013年から関わり続け、今年で10周年となった原田研究室と新栄商店街のアニバーサリーとして、新栄商店街の歴史や出来事をまとめたパンフレット「新栄ヒストリー」を作成しました。江戸時代から始まる新栄商店街周辺の街の変遷を、時代と共に追うことができる情報満載のパンフレットです。原田研究室の修士2年の成田悠真さんをはじめとした4名の学生がチームとなって、聞き取りや調査を実施し、パンフレットにまとめました。
「いやいや、調べた内容を全然載せきれてないんですよ。第二弾も作れたらいいなと思ってます。学生が中心にまとめたものですが、私の思った以上のものが出来上がってきて驚いています」と原田先生も頬を緩ませます。
取材には2ヶ月、制作には4ヶ月かかったという「新栄ヒストリー」。愛知県出身の成田さんは新栄商店街はどのように見えたのでしょうか。「正直言って、狭くて怖い雰囲気があったので、とても入りづらいと思っていました(笑)。でも、調査を進めていくうちに、思ってもいないような深さがありました。お店の方も個性的な方が多く、建築的な視点から見ても変わった作りになっているところもあり、どんどんおもしろくなりました」
刷り上がったパンフレットを配布に回った時、お店の方からは『よく作ったね〜』と声をかけてくださったとか。
新栄商店街での調査や関わりの道のりは簡単ではなく、時にとても難しい局面もあったそうですが、こうして継続できたのはなぜだったのでしょうか?「新栄商店街は土地が複雑に分かれていて、ヒアリング調査も非常に難しく、継続的に深く掘り下げて調査対象にしようとする人はなかなかいないかもしれません。でも、福井市中心市街地にとって絶対大事な地区です。これは自分の性格ですが、難しいからこそおもしろいし、私がやりたいんだという思いで取り組んでいます」物腰柔らかな印象の原田先生から、このように強い言葉を聞くと、知れば知るほどつき動かされてしまう新栄商店街の土地の魅力が伝わるようです。
今後、原田研究室では、新栄地区の更新などに関しても新栄商店街の地元の人の声を丁寧に調査しながら、「新栄の未来を考える会」のサポートメンバーとして、報告やアイデアの提案を行なっていきます。アカデミックな視点からも注目される新栄商店街。中と外のやりとりが活発になり、また新たな展開が生まれることを応援したいと思います!