【鹿児島県南九州市】温州みかん発祥の地から世界へ、スピリッツ・マンダリンの誕生 / 佐多宗二商店/赤屋根製造所
インタビュー
温州みかんは鹿児島の最北端・長島町が発祥の地といわれています。その長島産の温州みかんを原料とした『スピリッツ・マンダリン』が昨年11月に誕生しました。一般社団法人長島大陸まちデザインと連携し、商品開発に携わったのは南九州市の『佐多宗二商店/赤屋根製造所 』(以下:赤屋根製造所)です。その背景について、工場長の福倉洋一さんからお話を伺いました。
温州みかんを原料としたスピリッツ造りの挑戦
赤屋根製造所は2006年に誕生し、
100年以上の長い歴史の中で磨き続けられてきた日本の蒸留技術と
10年以上かけて学んできたヨーロッパの蒸留酒造りの技術・哲学を融合させることで、蒸留酒のうまさの可能性を追求しています。
背景として、佐多宗二商店・代表取締役の佐多宗公さんがヨーロッパの蒸留所を巡り、その中でフルーツ・ブランデーの第一人者・ジャン・ボール・メッテ社の故フィリップ・トラベ氏(以下:トラベ氏)と出会い、それが大きく運命を変えたそうです。
ヨーロッパのお酒造りでは果実や香草・穀物を使用し蒸留していく文化が長く、その技術は世界最高レベルといわれています。
“ヨーロッパのお酒造りの技術を日本での酒造りに繋げていきたい。”
そんな想いが佐多さんの中で芽生え
トラベ氏を師とし、何度も足を運び、時にはトラベ氏が赤屋根製造所に来て、知識や技術、哲学を学んだことが現在の骨格となったといわれています。
そこからヨーロッパ製の間接蒸留機を導入し、スピリッツ製造をスタートさせました。
現在、赤屋根製造所では
スピリッツ(ジン・ウォッカなど)のお酒造りを中心に行っています。
新しい挑戦として
鹿児島産の原料を使用したお酒造りに取り組むために
情報収集されていた昨年8月のこと。
佐多さんと蔵人が
長島町の日本マンダリンセンターを訪れます。
運営するメンバーと話をしていると
温州みかんの発祥地が長島町だということを初めて知ったというのです。
「長島町と耳にすると、養殖ブリやジャガイモのイメージが強かったので、温州みかん発祥の地という話を聞いた時はびっくりしました。」
「お酒造りをする上で、味を確かめながら原料選びをしていきます。長島町産の温州みかんは非常に美味しかったですし、何より発祥の地であること。その文化をお酒として、世の中に出したいと思いました。」
日本マンダリンセンターのメンバーとも意気投合し、温州みかんを原料としたスピリッツ造りの挑戦が始まることになります。
温州みかんの魅力を最大に引き出したスピリッツ・マンダリン
みかんを原料としたスピリッツは世の中にまだ少なかったため、
赤屋根製造所としても初めての挑戦。
香りを出すための度数やつけ込み方、その期間など、
原料の良さを一番引き出せる造り方の細やかな検証を行い
最大限温州みかんの香りや味を引き出せるように作業を進めていきました。
そして、造り手の技術と特殊な蒸留機がうまく融合し、
温州みかん本来の味と香りがしっかり残るスピリッツに仕上がりました。
「蔵元として、こだわったものを特化して酒造りをしたい。いろんなことにチャレンジしていきたい。そのマインドが弊社の造り手にはあります。」
「さらに“これをこうしたら、こうなるよね”と想像していきながら造っているので、探究心が強いメンバーが多いのも一つの強みです。」
焼酎文化が根強い鹿児島でスピリッツを造る意義についてもお話してくださいました。
「“スピリッツって何?”とおっしゃる方がほとんどだと思います。でも、それでもいいと思っています。温州みかんを使ったスピリッツがあることをまずは知ってもらって、そこから、若い世代や地元の方に少しずつ浸透してもらえたら嬉しいです。」
「身近にある資源の魅力に気づくのは難しいですが、違うカタチに変えて“あ、美味しい”と付加価値をつけることで、地元に対する誇りも生まれますし、次の世代にもその感覚が繋がっていくと思っています。」
一般社団法人長島大陸まちデザインの松本弘さんも今回の商品開発にあたり、手応えを感じているといいます。
「温州みかんに特化した農家さんは少ないのが現状です。法人として、付加価値をつけた取り組みをしたいと思った矢先にスピリッツの話が出てきたので、非常にありがたい話だと思っています。」
「実際飲んでみると、想像以上に温州みかんの味や香りを感じられるお酒になっていました。その時の喜びはひとしおでした。」
万人が喜ぶお酒として、世界へ
昨年11月。
発売日に合わせて、日本マンダリンセンターにてローンチパーティが開催されました。
ほとんど参加者がスピリッツを飲むのが初めてだったのだとか。
“焼酎じゃないんだね。スピリッツって何だろう?”
“これ、どうやって飲むの?”
最初は不安げにグラスをとった参加者も
香りを嗅いだ瞬間に“うん、うん”と頷き、
口にすると“飲みやすいよ!これ!”と造り手に伝える光景もあり、
終始、造り手と参加者の会話が弾んでいました。
「長島町のカフェがケータリングとして入り、長島産の食材を使ったおつまみを提供していたので、楽しみ方や食材との相性を知ることができたので、マンダリンの魅力を堪能することができました。」(参加者)
「焼酎だと上の世代が飲む人が多いので、若い世代と中々交流できなかったが、スピリッツなら、どの世代も楽しめる味や香りなので、これをツールに若い世代と交流したい。」(参加者)
ローンチパーティで感じた手応えを踏まえて、
今後の展望について伺いました。
「みかんは世界中の人が食べているフルーツです。だからこそ、私たちの技術と温州みかんの味があれば、国内だけではなく、海外でも広めることはできると思うんです。」
「私たちは生産地のことを第一に思っています。単に“私たちはこういうお酒を造っています”ではなく“どこの、どんな特徴のある原料を使っている”“この原料だから、このお酒ができている”と伝えていきたい。」
「次のステージとして、温州みかんを原料としたリキュールを今月発売予定です。長島町の皆さんと一緒に作ったマンダリンが世界に飛び立ってもらえるように、チャレンジ精神と探究心を常に持ち続けて、お酒造りに臨んでいこうと思います。」
屋号 | 佐多宗二商店/赤屋根製造所 |
---|---|
URL | |
住所 | 鹿児島県南九州市頴娃町別府4910番地 |
備考 | ●一般社団法人長島大陸まちデザイン ●長島大陸マンダリンBASE ●AKAYANE 販売サイト |