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Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々

連載

2023.12.27

2023年4月。山形にUターンした。山形に戻るのは、高校卒業以来。

Uターンするまでは、大学卒業から6年間、公務員として働いてきた。29歳のアラサーにして、脱・公務員からの就農。退職前、周囲からかけられた声の中で多かったのは「頑張ってね」という応援と、「辞めるなんてもったいない!早まるな!」という声。後者は、主に身内や親戚から(笑)。どちらの声もありがたく頂戴して、約10年ぶりに山形に戻ってきた。

Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
雪が降り、畑もすっかり冬景色。

12月。全ての収穫が終わり、ラ・フランスの出荷作業も残りあと少しとなった。果樹農家だと、冬場の主な農作業は枝の剪定のみ。Uターンして1年目の農作業がひと通り終わった。

今年の4月から受講してきた農林大学校での研修も、12月で最後となった。月に2日ほど、新庄市にある山形県立農林大学校で講義を受けてきた。私が受けた新規就農者支援研修は、就農を目指す人のうち、農家出身等で県内に農地を有するなど就農基盤の目処が立っている者を対象にするものだ。私のような実家が農家だったり、義父母や親戚の経営を引き継いだり、定年退職とともに農業を始めたりと、さまざまな研修生がいる。そのため、年齢も経歴も幅広い。そんな20代〜60代に至る幅広いバックグランドを持つ方々と、同じタイミングで就農を目指すいわば同期であることは、とても不思議な気持ちだった。

研修では、研修生それぞれが先進農業経営者や県内の試験研究機関で農作業実習を受けるとともに、農林大学校で品目別の栽培技術や農業経営等に関する講義を受ける。

Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
研修施設の外観(提供:山形県立農林大学校)

今年の4月。農業について何も分からないまま、研修の開講式を迎えた。研修生約40名のうち、女性は私を含めて2人ほど。農林大学校以外の研修でも、参加者のうち女性は私だけという状況は頻繁にある。その度、1人ポツンと浮いてしまうことも少なくない。

性別云々以前に、栽培技術や農業経営について何にも分かっていない私。皆についていけるだろうか?うまく交流の和に入れるだろうか?と不安だった。

研修の内容は、植物の生育環境や土壌肥料、農薬の使用、税金関係、農業簿記、ブランディングや情報発信、販路開拓など、多岐に渡る。始めの頃は知識レベルが追いつかず、正直なところ、ちんぷんかんぷんだった。もちろん、講師の先生方はとても丁寧に教えてくださるので、どんどん質問すれば良かったのだが、周りの研修生が「うんうん」と頷きながら話を聞く様子を見て、「これは当たり前の知識なのかな?」と質問することを臆してしまった。

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講義の様子(提供:山形県立農林大学校)
Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
視察研修の様子。(提供:山形県立農林大学校)

ある時、ロープワークの技術実習があった。農業をする上でロープワークは、トラックの荷台の荷物を固定したり、木や支柱などを固定したりと、必須の項目だ。

講師の先生は「こうして、こうして、はい。完成。」という感じで、シュルシュルっと巧みにロープを結んでいく。

おっと全然分からない…。案の定、うまく結べなかった。1人では完全にお手上げだったため、「できました…?」と近くにいた研修生に聞いてみると「まったく分がんねっす…」と元気のない返事が返ってきた。「私だけじゃなかった…!」と安堵して、そこからは一緒に講師の先生や他の研修生に教えを乞うた。

「こうすると簡単にできるよ。」と何度も実践して、とても丁寧に教えてくれた皆さんには感謝しかない。それからは肩の荷が下りて、分からないと思うことを口に出すハードルも低くなり、少しずつ他の研修生とも雑談の機会が増えていった。

Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
ロープワークの実習。トラック荷台の荷物を固定する様子。(提供:山形県立農林大学校)
Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
チェーンソー操作の実習。(提供:山形県立農林大学校)

最後の講義は、自分の農業の事業計画を作成するという内容だった。各研修生が、どんなビジョンで、売上目標はいくらで、そのために何をするのか戦略を練った。

その後、5〜6人ほどのチームになって、自分の事業計画を発表するグループワークを行った。各自で育てる作物も違えば、同じ作物でも、売り方、理想とする収益、働き方などは違って、聞いているだけでとても興味深かった。そして、それぞれの事業計画に対して他のメンバーは「こうしたら良いんじゃない?」「こんなのはどう?」と、実現できるかどうかはさておき、付箋を使ってどんどんアイデアを書き出していく。

私の事業計画に対しても、同じチームの研修生からたくさんの応援やアイデアをもらった。
「受粉樹用のさくらんぼを加工するの、すごく良い!」
「栗と柿のセット販売はどう?」
「農福連携もできるかも。」
「SNSで消費者に見えない農作業をアップするのはどう?」

自分1人で考えているだけでは思いつかなかったアイデアがいっぱいだった。こうして自分の悩みを相談したり、夢や目標について一緒にブラッシュアップできる仲間に出逢えたことは、本当にありがたいなと思った。最初のうちは「女性だから」とか「農業について何も分かってないから」と1人で悶々と心配していたが、そんなことは関係ないと実感した1年だった。

Uターン次女の就農日記(4)/農林大学校での日々
グループワークの様子。(提供:山形県立農林大学校)

来年の4月以降、研修生はそれぞれの就農地で本格的に農業を開始する。研修生みんな、色んな人生を歩んだ上で、山形で就農する決意をした。これだけ熱い思いを持って、イキイキと農業について語る人がいるなら、山形の農業は、これからもっと面白くなると思う。私も、今回農林大学校で出逢った方々とのご縁を大切にしながら、農業に励んでいきたい。

▶︎山形県立農林大学校HP
https://www.ynodai.ac.jp/

▶︎【募集中】令和6年度新規就農者支援研修
https://www.ynodai.ac.jp/college/news/news-3153-2-2/