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【福井市】新栄商店街探訪 人も地球も幸せにする「MAGO GALLERY FUKUI」

連載

2024.01.19

新栄商店街には個性的なお店が立ち並んでいます。今回訪れたのは「MAGO GALLERY FUKUI」(マゴギャラリーフクイ)です。廃材を素材にアート作品を制作し、サスティナブルキャピタリズム(持続可能な資本主義の構築)を提唱する福井出身のアーティスト長坂真護氏。今回は福井のマゴギャラリーを運営する宮田耕輔さんにお話しを伺いました。

新栄商店街の動きについてはこちら↓

・新栄商店街のこれまでとこれから
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・新栄商店街を陰ながら支えて
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【目次】
・真護氏がガーナへ渡るまで
・売れたらリサイクル工場をつくる約束をした
・人も地球も幸せに

真護氏がガーナへ渡るまで

長坂真護氏のアートギャラリー「MAGO GALLERY FUKUI」(マゴギャラリーフクイ)は新栄商店街のアーケードが交差する角に位置します。宮田さんが夫婦で開いているボクサーパンツ専門店「ラーナニーニャ」は目と鼻の先です。
2020年9月にオープン。築70年の店舗をリノベーションした内装は、古い木材の梁と敷き詰めたレンガが新栄商店街の雰囲気にぴったりとマッチしています。

【福井市】新栄商店街探訪 人も地球も幸せにする「MAGO GALLERY FUKUI」
新栄商店街の一角にあらわれるアートギャラリー。ギャラリーの鑑賞は無料ですが、メールでの事前予約が必要です。

運営する宮田さんが真護氏と出会ったのは13年前。まだ真護氏がアーティストとして試行錯誤をしている頃からの長い付き合いです。現在、真護氏はガーナの電子廃材をメインに、サスティナブルキャピタリズムを提唱するアーティストとして世界が注目する活動を行っていますが、どんな経緯でガーナへと渡ったのでしょうか。

「アーティストMAGOの作品作りはイマジネーション型。廃材を置いてから描きはじめます。MAGOはガーナの電子廃材をアート作品で一躍有名になりましたが、アート活動は25歳の時、新宿の路上の絵描きから始まりました」。
その後様々な縁があり、NHKの番組のアートディレクションなども手掛けるまでようになった真護氏。有名になるにつれ「なんで絵を描いているんだろう?」と根本的な疑問を抱くようになります。2012年、それまで手掛けていた仕事や契約を切って、単身アメリカ、ニューヨークへ武者修行に向かいました。
1年半のニューヨークでの生活の後は、福井で個展を開いたのち、クリムト(19世紀の画家)の『接吻』を見にウィーンへ行くなど、アートの本質を探す日々が続きます。そんな折、2015年11月、フランスのパリで同時多発テロが起こりました。

「MAGOは見に行かなければと思い、すぐにテロの起きた広場を訪れました。そこで圧倒的な自分の無力さを感じたけれど、ふとパリで見上げた空の大きな月から『月を見る時、人は武器を降ろす』ということに気づき、2016年月シリーズを描き始めることになるんです」。

 

【福井市】新栄商店街探訪 人も地球も幸せにする「MAGO GALLERY FUKUI」
写真中央に飾られている絵は月シリーズの1作。ちなみにこの絵は裏にボタンがあり、押すとMAGO氏の弾くピアノが流れるという仕掛けがあるそう。

「この絵に描かれているバタフライはMAGOくんそのもの。自分のことを、バタフライエフェクト(※小さな事象が因果関係を経て大きな結果につながる)になぞらえているんです」。

自分の作品を通じて世界に何ができるのか―。真護氏をよく知る宮田さんの説明があると作品に込められた想いがグッと感じられます。

売れたらリサイクル工場をつくる約束をした。

2017年ついに契機が訪れました。人と会うために待っていた喫茶店で電子機器のごみの中にいる少女の写真を目にします。それがガーナのアグボグブロシーでした。

ガーナのスラム街アグボグブロシーは元々マングローブ林の湿地帯。そこへ2000年頃から電子機器のゴミが捨てられるようになり、毎年50万トンもの電子機器が捨てられ、現在では汚染された電子機器の廃棄地帯のあるスラム街と化しています。
初めて行った人は30分で頭が痛くなるほどの悪臭があるそう。そこに住む人たちはゴミを燃やすことで生計を立てていますが、人体に影響のある有毒ガスによって若くして亡くなる人が多いスラムです。

「何も知らないけれど、とにかくガーナに行こうと思い立ったみたいで。僕に電話をかけてきてガーナへの行き方を聞いてきたくらい。黄熱病のワクチン打って、たったひとりでガーナのアグボグブロシーを訪れたんです。当時、悪質な中国人が来ていたこともあり、アジア人にネガティブなイメージがあって罵られたりもしたそうで。
そんな中でも優しくしてくれる人もいて、『僕はここで何ができるのか』と考え、『ガスマスクを持って帰ってくる』と約束して日本へ戻りました」。

有言実行をするのが真護氏。帰国後に参加する予定だったアートイベントのスポンサーが3M (スリーエム/アメリカに拠点を置く化学・電気素材メーカー)だったそうで、すぐに会社の上層部に手紙を書いてガスマスクを50個寄贈してもらい、そのガスマスクを持って再びガーナへ。
「ジャーナリストは取材に来るけれど、また来ますと言って帰ってきたのはお前だけだ」と信頼を得て、そこからアーティストとしてガーナの電子ゴミを使った作品づくりが始まりました。

【福井市】新栄商店街探訪 人も地球も幸せにする「MAGO GALLERY FUKUI」
ガーナの電子ゴミを使った作品は大きな反響を呼びました。そして今まで100万円程度であった真護氏の作品が1500万円でオークションされるように。

「背景にSDGsの浸透などがあるけれど、きっとMAGOの考え方に『共感』してくれたんだと思います。まさにバタフライエフェクトが起こった瞬間ですよね」。

ガーナで、ゴミが減って作品が売れる、そしてそのお金で産業や教育ができるという循環が生まれました。現在真護氏が提唱する経済・文化・環境(社会貢献)の3軸が好循環する新しい資本主義の仕組み「サステナブル・キャピタリズム」の誕生です。

絵が売れたらリサイクル工場をつくると言った真護氏は、ガーナで常に新しい取り組みを続けています。リサイクル工場をつくり、現在はプラスティックリサイクル率100%のブロック素材『マゴブロック3』を試作。またマゴモータースという会社を設立し電動キックボードの制作をしたり、モリンガやコーヒーを育てる農場を立ち上げ、より多くの人に知ってもらおうとクラウドファンディングで農場の規模を広げたりと、八面六臂の活動を行っています。

人も地球も幸せに

マゴギャラリーは現在日本国内では福井を含め7ヵ所、海外では4ヵ所の計11ギャラリーがあります。真護氏はガーナで学校も作りました。初めてガーナに訪れた時、優しく接してくれた青年が先生を勤めています。(※ガーナ大学で教員免許を取得していたけれど、就職率が50%と低く、資格があっても働けない状況でした。)

「その学校で生徒たちが描いた絵をギャラリーで販売しています。ゴミを燃やして賃金を得る生活を抜け出し、アーティストとして教養のある人生を送ってほしいというMAGOの想いですね」。

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宮田さんの後ろに飾ってあるTシャツは受注を受けてから作成されるそう。SDGsの考えから不要なモノを作り出さないようにしています。

世界が抱える大きな問題をテーマにしたものが多い真護氏の作品たち。
私たちは彼の作品をどう捉えればよいのでしょうか。

「一言でいうと、世界を変えるアートです。彼はアートを環境保護や人権課題を解決するひとつのツールと考えています。古今東西みても課題解決型アーティストは他にいません。例えば作品を所有することで起業イメージアップや志に賛同する意思表示になると思います」。

この地球上で、私たちの生活につながっている様々な問題が現在進行形で起きています。それを「どうせ自分は何もできない」と思うのではなく、「世界からみたら小さなこと、でも誰かがやらなきゃはじまらない」と考え、行動に移す真護氏。
ここに来れば宮田さんがその考え方を、作品を通じて教えてくれます。「人も地球も幸せに」。福井の駅前の小さなアートギャラリーからその想いや挑戦するパワーを感じに訪れてください。その小さな一歩もバタフライエフェクトのひとつかもしれません。

名称

MAGO GALLERY FUKUI

業種

ギャラリー

住所

〒910-0006 福井県福井市中央1丁目13-4

備考

観覧は無料(事前予約制)
mago.g.fukui@gmail.comまで観覧希望日時をご連絡ください。