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【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」

インタビュー

2024.01.25

1300年以上もの歴史を誇る長良川鵜飼の里・岐阜市鵜飼屋地区。伝統の香りが漂う風光明媚なこの場所に、廃業した木材問屋の倉庫をリノベーションし、個性が集結した複合施設に生まれ変わった「&n(アンドン)」があります。

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」

地域の魅力発信の場として2019年5月にオープンしたこの施設は、長良川リバースケープ有限責任事業組合(LLP)のみなさんが運営を担い、コロナ禍に見舞われながらも自然豊かな自慢のロケーションを生かし、イベントを継続して企画するなど、さまざまな取り組みを行っています。

正面の壁に設られた大きなガラス窓からは外光が差し込み、倉庫だったとは思えないような明るく居心地の良い空間に。この中に、現在10軒のショップやアトリエが入っているそうです。

今回、LLPを代表してインタビューに答えてくださったのは岐阜市出身の建築士、「エレファント・デザイン」の門脇和正さん。お話をお聞きする前に、まず&n (アンドン)内の主なテナントさんを紹介してくださいました。

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
織田信長ゆかりの岐阜城が山頂にそびえる金華山。その下を流れる清流・長良川の右岸に位置する市内随一の景勝地「鵜飼屋地区」は、長良川鵜飼の鵜匠らが暮らす家々が建ち並ぶことから「鵜飼の里」とも呼ばれ、観光客にも人気のエリア。
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川を望むように建つ木材倉庫を改装。戦後すぐの頃に建てられたものだそう。
【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
造りの堅牢さが一目でわかる太く重厚な梁。
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自然の外光がふんだんに入るよう、南側の壁に大きなガラス窓を設置。
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2階へ続く階段から1階フロアを見下ろす
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材木倉庫の名残を生かした3階の天井。いたるところに立派な材が使われている。
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建築士の門脇和正さんにインタビュー。

 

<1階> 

居酒屋「うかいや食堂」

庭師が本業の店主さんが長年の夢だったという居酒屋を開店。お店に集うお客さんは個性豊かな顔ぶればかり。自主企画で「音楽祭」を開催することもあるそう。

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1階の居酒屋「うかいや食堂」。その隣には建築家がマイペースでオープンするバー「カヤック」が並ぶ。

 

アウトドアショップ「フリーク」

冬はスノーボードのスクールをしているアウトドアのお店が、夏に長良川でサップを楽しむお客さんのための基地として受付を設置しています。

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長良川で人気のレジャー、SUPを楽しむ人たちの基地に。

 

「ゆいのふね」

長良川の漁師さんのPRコーナー。川魚の販売が行われることも。

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珍しい川漁の漁具などを展示。

 

アンティークショップ「ノマドライフ」

芝生の庭に面したアンティークショップ兼カフェ。ギャラリーやワークショップのためのレンタルスペースとしても利用できるそう。

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
眺めの良さと洗練された雰囲気が印象的。
【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
アート作品の展示やワークショップなどフレキシブルに利用できる。

 

<2階>

フラワーショップ「プハラ」

季節を感じる花やグリーンを使ったアレンジを完全オーダーメイドで。

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
まるでアートのようなレイアウト。センスが光る「プハラ」。

 

イタリアンカフェレストラン「ラ ルカンダ」

ミラノ・ベルガモエリア出身のイタリア人シェフによる本格イタリアンとスィーツが楽しめます。

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イタリアンカフェレストラン「ラ ルカンダ」(奥の扉)

 

<3階>
古美術アンドン

鵜飼屋地区で生まれ育った陶芸家、交田さんが営む骨董店。

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「古美術アンドン」

 

現代美術家 渡辺悠太さんのアトリエ

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」

 

「ノスタルジア・オブ・マッド」

コスチュームなどを手掛けるデザイナー、松田氏のアトリエ。 

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3階のアトリエは、広い窓からの緑豊かな眺めは最高。

 

違った個性が集まる〝長屋〟のような佇まい

ーー外から見ただけではわからない、迷宮のような造りがとても楽しいです。テナントさんもそれぞれ個性豊かですね。

「だいぶカオスな感じですよね(笑)。最初、ここをどんなふうに使おうかとみんなであれこれ考えたんですよ。

結果的には当初のイメージとは違う感じになりましたけど、庶民的な居酒屋もあれば、松田さんのようにものすごく洗練されたデザイナーのアトリエがあったりして、ただ似通った人やお店が揃っているのではなくみんながそれぞれ好きなことを楽しんでいるのがここの良さかなと思っています」

――大きな梁や柱をそのまま生かして大胆にリノベーションされているのも印象的です。

「建物自体は古いですが、造りは非常にしっかりしているんですよ。さすがは材木商さんの倉庫だなと感心しました」

――雑多な感じが意外に居心地よくて、他にない魅力を感じますが、そもそもこの「アンドン」はどのような経緯で誕生したのですか。

15年ほど前からこの界隈で毎月仲間たちと飲み会をやっていて、そこにこの物件の話が舞い込んだのがきっかけでした。

せっかくだからみんなで何かやろうということになったんですが、お金もかかることですし、最終的にはリスクを負ってもいいという本当にやる気のあるメンバー13人が中心となって借受けることにしました。

それを機に『長良川リバースケープ有限責任事業組合』(通称LLP)を立ち上げて、みんなで管理をすることになりました」

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
この場所ならではの使い方を模索しながら大胆にリノベーションされた木材倉庫。

 

――みなさん、最初は飲み仲間だった?

「そうなんです。そもそもは僕がこの近くに引っ越してきたことがきっかけなんですが、『長良会』という名前で毎月集まっていたのがはじまりです。それまで僕は岐阜市内でも少し離れた地域に住んでいて、このエリアの良さをあまりわかっていなくて。

でも歩いてみるとプロムナードから見る長良川と対岸の金華山の眺めが素晴らしく、鵜飼という日本が誇る伝統的な文化も根付いていてすごく魅力的な場所だと感じ、この場所でコミュニティを作りたいなと思ったんです」

――みなさん地元に縁のある方たちですか。

「鵜飼屋地区で生まれ育った陶芸家や、長良川畔の老舗旅館の方など、ほとんどがこのエリアに住んでいる人たちです。しかし、地元にずっといると自分の暮らしているまちの魅力や価値に気づいていない人が多いんですね。

こんなに素晴らしい景色なのに当たり前すぎて特別な感慨もないみたいで。僕は別の地区から来たのでここの良さをより強く感じたのだと思います。

当時はその思いを地元のみんなに熱弁していました。そんなことから、このエリアでのまち歩きイベントや「こよみのよぶね」(http://www.koyominoyobune.org)というアートイベントなど、地域の魅力を生かした取り組みが始まりました」

 

基本のスタンスを問い直したことで見えてきた

この場所で集まる意義

――最初に目的を掲げて集まったのではなく、まずはみんなで飲み会を続けていくうち目的や目指すものが具体的になっていったというような感じですか。

「そうですね。だんだんと仲間も増えて多い時には数十人にもなりました。基本的には単なる飲み会なんですが、一方で、それだけではいけないという思いがありました。僕としては『長良会』はこのエリアの未来に繋がっていかなければ意味がないとずっと感じていたんです」

――メンバーが増えるほど、思いを共有することや一人一人がモチベーションを維持していくことって難しくなっていく気がします。

「途中から、僕自身、これって何のためにやっているんだろう?と感じるようになってしまったんです。そしてあらためてよく考え、みんなにもその思いを投げかけました。

長良会は地元に縁のある人たちの自由な集まりには違いないし、関わり方もそれぞれ自由でいい。けれどその中心には、この川と山を愛する気持ちがあることが重要で、メンバーみんなが同じ認識を持っていなければ意味がないと。

思い切ってそう投げかけたことで長良会の意義や方向性がより明確になったように思います」

【岐阜県・岐阜市】長良川の畔に灯る  まちを愛する人たちの拠り所「&n~アンドン」
この場所で集まることの意味を自問自答し、結束を強めた「長良会」

 

――思いを再確認したことが大きな転機になって、アンドンの誕生につながっていたんですね。そうしてできた拠点を中心にみなさんでイベントなども企画されているそうですが。

「毎年511日の鵜飼開きの日と1015日の鵜飼じまいの日に、川沿いのプロムナードを利用した『夜市』を開催します。ほかに毎月第二日曜日に地元のおいしいお店や手作りの作家さんたちを募って『あんどん楽市』なども行なっています」

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「長良川夜市」を毎年鵜飼開きと鵜飼じまいの日に開催。

 

アンドンが担う役割とこれからのこと

――メンバーのみなさんの思いを繋いでいるのは、なんといってもこのロケーションの魅力ですよね。圧倒的な求心力になっているような気がします。

「地元の人たちが忘れかけていた自分のまちの魅力、それを再発見できたことだけではなく、このまちを好きになって何度も訪れているうちに本格的に移り住むようになった人もいます。

価値のある建物がまだたくさん残っていますし、とにかくポテンシャルのあるエリアであることは間違いないのでもっともっと有意義に生かしていきたいですね。そのためにはまず地域のみなさんとの関係性づくりが重要です。

アンドンができたことで、あいつら、まちのために頑張ってるな、ぐらいの認識はしていただけているんじゃないかなと思いますが、そういうことからまちの困りごとを相談してもらったり、お手伝いできる場面で力になったりりしながら丁寧に関係性を深めていけたらと思っています」

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――最後に、門脇さんが思うこのまちの一番の魅力は?

「そうですね…この素晴らしい景色は言うまでもなく、僕にとって、ここは暮らすのにちょうどいい場所だなって思っています。名古屋に出かけるにしても電車で20分ぐらいの距離だし、駅からもバスがたくさん出ているので足には困ることもありません。

電車で出掛けた帰りに岐阜が近づいてくると、どの方向からでも岐阜城がそびえる金華山が目に入るんです。長良の人にとってはまさに〝我が家〟の象徴なんですよ。家に帰ってきたなーって思う。

この美しい金華山がホームタウンのランドマークだなんて、最高に贅沢ですよね。そんなふうに僕らがこのまちを誰よりも愛して、ここで楽しむことこそがまちの魅力発信につながると信じています」

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&n(アンドン)の1階と3階はレンタルスペースとして利用可能。
屋号

n アンドン 

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502-0071 岐阜県岐阜市長良45−1
うかいミュージアム 北隅

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