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【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.12(終)

連載

2024.01.30

山形市長町にある〈エンドー〉は、地域密着型のスーパーである。創業は昭和40年。以来、地元の人々に親しまれ続け、日々、さまざまな顔が集う。そこにある時間と、ここにしかない風景。今日のエンドーでは、どんなことに出会えるだろうか。

【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.12(終)

エンドーというお店に通い続けるということ。

地域密着型スーパーに1年のあいだ密着取材する連載、「地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ」。ほぼ毎月通っていたにもかかわらず、訪れるたびに新しいことが始まったり情報がアップデートされたりしていて、そのスピード感に追い付けていないことも多々ありました。エンドーというスーパーはそれぐらい目まぐるしく変わり続け、進化してきたともいえます。

今回は、これまで取材を共にしてきたフォトグラファーの伊藤美香子さんと私(井上)によるエンドーさんのこぼれ話や好きなもの、1年間かけて熟成されていった考察のようなものについて、雑談も交えながらいろいろとお届けしていきます。

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厨房で作業する遠藤さん親子。店主の英則さんの姉・陽子さん(左)と母・悦子さん。
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今日も鮮魚コーナーのショーケースの中はぴっかぴかのキラキラだった。

井上:そういえば伊藤さんは、取材後によくお惣菜を買ってましたよね。何が好きですか?

伊藤:ポテトサラダをいただいたんですけど、めっちゃおいしかったです。なんていうんだろう。普通で馴染みのある味なんだけど、どこにもない味っていうか……。ときどきむしょうに食べたくなるんです。あとはじいちゃん手づくりの浅漬けと白キムチが好きだなあ。

井上:じつは私、お惣菜はそんなに買ったことがなくて。おにぎりとかげそ天はイートインで食べることが多いんですけど。唐揚げが好きな人もけっこう多いですよね。

伊藤:唐揚げおいしいですよ!井上さんはほかに好きなのってありますか?

井上:自家製塩辛!イカがおっきくて濃厚なんです。まだの人は一度食べてみてほしい。げそ天に使われるイカの胴体部分はこの塩辛に使われているそうです。

伊藤:さすがエンドーさん、やはりイカにはこだわりがあるんですね。お酒も豊富に揃ってますしねえ。酒呑みにはたまらない空間です(笑)。

井上:以前、エンドーさんのインスタで見たんですけど、あるお客さんが店内でグリル使って干物を炙りながら呑んでたんです。そんな楽しみ方というか隠れたオプションがあるのか!と思いながら、いつかやってみたいなと思ってたんですよね。

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ここはスーパーの店内。ヤナギガレイの干物を炙り、げそ天や塩辛、じいちゃんの手づくり漬物、ポテトサラダなどの惣菜をつまみながら呑む。

伊藤:うわー、最高ですね! スーパーの店内でそんなことができるなんて。

井上:ですよね。とりあえずお酒頼みましょう。ビールはいくつかあるんですけど、げそ天を頼むなら「げそIPA」。遠藤さんやお客さんで好きな人が多いからハートランドも常時ストックしてるらしいです(笑)。

伊藤:そうなんだ(笑)。遠藤さん、ちょっと聞いてもいいですか? 干物って店内でもいただけるんですか?

遠藤さん:食べたかったらできますよ。グリルがあるんで。

井上:いいんですか? ではお借りして。こんな豪華な角打ちスタイルを覚えちゃったら、エンドーの住人になってしまいそうです(笑)。あとはそうだ、おにぎりも新しくなったんですよね。

遠藤さん:そうです。若干値段は上がったんですけど、海苔が新しくなったのと、種類がいっぱい増えたのと、サイズも少し大きくなりました。海苔は食べてみると今までと違うってみなさんおっしゃいますね。

伊藤:どれもおいしそうですね〜。しらすネギとかワサビ海苔とか、焼きサバなんていうのも。

遠藤さん:はい。しらすネギはけっこう人気ですよ。

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左上_イカは肉厚、肝は濃厚。とにかくうまい塩辛。右上_種類豊富で満足感があると定評の干物も手づくり。右下_常連さんの買い物カゴをのぞくと新商品の「ノリオ」が。左下_ときどき思い出して食べたくなるのがこのポテトサラダ。

井上:せっかくなので頼んでもいいですか。海苔のパッケージの「ノリオ」も新たなキャラクターとして登場してましたね。

伊藤:海苔のヒゲがかわいい。(おにぎりが運ばれてくる)では、いただきます。本当だ。海苔、めちゃくちゃおいしい!なんか風味が全然違いますね。

井上:たしかに。イートイン冬限定「のり塩」げそ天もいただきます。げそ天の季節メニューでは去年の夏に食べた「台湾」もおいしかったです。

伊藤:うん、これもおいしいですね! 今のところ私、おいしいしかいってないけど大丈夫かな。

井上:全然大丈夫ですよ(笑)。今、ポテトサラダ食べながら思ったんですけど、伊藤さんがさっき話してた意味がわかりました。ありそうでどこにもない味ってこういうことですね。

伊藤:そうなんですよ。というか、この調子だといつまでも延々といけちゃいますね(笑)。エンドーさんには引き続き通わせていただくと思うので、近々またきましょう。

井上:はい、ぜひに。新たな企画もあるみたいなので、次に伺うのが楽しみです。

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厨房からお客さんに声をかける店主の遠藤さん。黄色いポップにあるように、取材翌日には子供食堂が始動。「考え過ぎてやるまで時間がかかったけど、まずはやってみたいです」とのこと。

ちょっとずつ、顔なじみになる。
目が合えば、自然と挨拶を交わすようになる。
どちらからともなく会話が始まり、だんだんと距離が縮まる。

お店に通い続けるっていうのは、こういうことなのか。そんなことにもあらためて気付かせてもらいました。

“さまざまな人が集うエンドーには、あらゆる人を受け入れる『やさしいカオス』がある。初めて訪れたときに感じたのは、不思議な居心地の良さ。その理由を探るべく、これからは少しのあいだ、この地域密着型スーパーを追いかけてみたい”

こんなふうにして始まった当連載。毎回訪れるたびにエンドーさんの新しい一面に出会わせてもらい、迎え入れてもらっているような感覚がありました。今となってはカオスという言葉の表現に違和感を感じるぐらい、お店のあらゆる部分が慣れ親しんだものになりました。

私の場合、取材に伺うときは決まって電車で、ほがらかな「げそ天」ののぼりが羽前千歳駅から見えると自然と明るい気持ちになっていたことを思い出します。

夕方16時前になると必ずシルバーカーを押しながらやってくる常連さんがいて、店の前にそれらが並ぶ様子がエンドーさんらしくて好きでした。いつもだいたい同じ時間に買い物にきてお茶を飲み、おしゃべりをして帰っていく。そんな場所が住む街にあるのは、心から羨ましいなあと思うのです。

この連載は最終回になりますが、これからもエンドーは街の人にとっての居場所であり、街の風景としても在り続けます。それではまた、きっとそのうちに。山形市長町の地域密着型スーパー、エンドーでお会いしましょう。

【山形/連載】地域密着型スーパー〈エンドー〉へようこそ Vol.12(終)
夕方前になるといつも決まった顔が揃う。するとじいちゃんの流れるようなお茶出しと接客。そこに小さな赤ちゃんが現れ、なごやかな時間が流れている。エンドーらしい風景。

DATA
エンドー
住所 山形県山形市長町2-1-33
電話番号 023-681-7711
営業時間 10:00-19:00(日・月曜休)
https://gesoten.jp/

写真:伊藤美香子
文:井上春香