【連載】山形のぶどうとワインに恋焦がれ vol.2
連載
2012年4月、東京から山形にUターン。「井の中の蛙になりたくない!」そんな思いで山形を出て、10年ぶりに山形に戻ってみると、そこは面白い人と面白いコトがたくさんある場所だった。そして、今、私はワイナリーの広報営業として、日々、ぶどうとワインと愉快な仲間たちに囲まれ生きている。そんな広報営業の畑とワイナリーの日常を、季節のお便りとしてお届けします。
ALEX来日。
ALEXとの出会いは5年前。
2月はニュージーランドからアドバイザーであるアレックス・クレイグヘッド氏(以下ALEX)が山形に来た。私がこの会社に入ると決めて、まずワインを勉強しなくてはと思い、向かったのは山形市のすずらん街にある「オリエンタルバル」さん。友人からグレープリパブリックに入るならば、この人に会ってワインを勉強すべし!とオススメされたのが、当時オリエンタルバルのマネージャーをしていた佐藤洋一郎さん。現在は近くの桜町で「プルピエ」というナチュラルワインのお店の店主をしている。
ワインについて右も左もわからず、何をどう選んでいいかわからない、そんな私に「最初はラベルで選んでもいいんですよ」と教えてくれ、選んだワインの土地や造り手について、とても丁寧に教えてくれた。ワインに関する知識を伝えるというよりも、洋一郎さんが造り手に会ったり、その土地を訪れてワインを飲んで感じた経験をもとにお話ししてくれるので、ワインを身近に感じることができ、これまでとは違うワインの面白さがあった。もともと海外に対して憧れのある私にとって、ワインを通して知る海外の話は遠い世界ではなく、もしかしたら身近になるのかもしれないと感じられる話だった。
そして、そこで洋一郎さんがオススメしてくれたのが、ALEXのワインだった。これまで飲んでいたワインとはあまりにも違いすぎて、頭を殴られたような衝撃だった。なんて表現していいかわからないけれど、とにかく香りが好き。ずっとワイングラスに鼻をくっつけてクンクンその香りを嗅いでいた。そして、口に含むと口いっぱいぶどうのジューシーさ。こんなにもぶどうを感じられるワインがあるんだと、ただただ感銘を受けたことを覚えている。そこから私のワイン沼人生は始まった。
テイスティング祭り。
スティルワインのブレンド。
さて、ALEXが何をしに山形に来たかというと、スティルワイン(非発泡性ワイン)のブレンドを決めるためだ。去年の秋に収穫し発酵させたぶどうのワインをステンレスタンクや樽で熟成させブレンドし、初夏に瓶詰する。そのブレンドを決めるために山形に来ている。35種類もあるワインを一気にテイスティングし、その配合を決めていく。私からするとマジックでも見ているかのごとく、すぐにブレンドが決まっていくのだが、そこはブレンドの魔術師と呼ばれるALEXの長年の経験があるからだろう。
2023年の夏は非常に暑く、ぶどうの熟度が高かったが、ALEX曰く、全体的にワインの状態はとてもいいとのことだった。今回のブレンドでどのようなワインに仕上がっていくのか今から楽しみである。
ぶどうの枝を支えるための番線。
番線取りと番線張り。
現在、グレープリパブリックではワイナリーのすぐ裏手にある畑から、遠いところだと車で20分ほど要する畑まで計13か所の畑で、ぶどうを有機栽培で育てている。全体で約3haほどの広さがあり、棚仕立てと垣根仕立ての2つの仕立て方を採用している。大半の畑は、ぶどうが頭上になる棚仕立てという仕立て方であり、2月は主にこの棚仕立ての畑の番線取りと番線張りをしている。今年は雪が全然降らないため、例年よりもスムーズに畑作業が進んでいる。
番線とは、ぶどうの枝を支えたり、誘引をするためのものである。ぶどうはブドウ科の落葉つる性植物で、支えがないと立っていられない植物である。そのため、この棚仕立てにおいて番線は非常に重要な役割を担っている。また、グレープリパブリックでは、以前の農家さんが使っていた棚を使うことが大半であるため、老朽化した棚の番線は外してきれいに整えていく。
2月は先月に引き続き巻きつる取りと番線張りを行い、3月はこの整えた番線を使って、ぶどうの枝の誘引を行っていく。そして、4月からの本格的な畑作業に備える。
日本ワインが初参加。イタリアのワインフェア
「SLOW WINE FAIR 2024」への出店
2月はビックイベントとして、イタリアのボローニャで開催された「SLOW WINE FAIR 2024」に出店した。「SLOW WINE FAIR 2024」とはイタリア国内外の1,000のワイナリーが参加するイベントで、世界各地からクリーンで美味しいワインが集結する。今回日本ワインは初出店とのことで、栃木県の「ココ・ファーム・ワイナリー」さんと一緒にイベントに参加してきた。日本で2社しか呼ばれないうちの1社に選ばれることは大変光栄なことだが、ワイン大国であるイタリアで日本ワインがどのように評価されるかが非常に心配でもあった。
しかし、実際ワインを提供してみると、日本ワインのブースの前には大行列ができ、特に若い方々を中心に非常に喜んでいただけたとのことでホッとした。今回醸造責任者の矢野しか行かなかったため、ワインを提供することで手一杯で、しっかりと参加者の皆さんとお話する時間を得られなかったことが反省点である。現在14か国に輸出しているが、今回のイベントを通じてイタリアにも輸出できたらと願うばかりだ。
さて、あっという間に2月が終わった。3月は畑の誘引作業、台湾とアルバータへの輸出、東京や広島へのイベント出店と大忙し。加えて、栽培醸造スタッフの3人はニュージーランドの収穫醸造研修に1か月間参加と、スタッフもあちらこちらに散っていく。4月になるとフランスからの研修生も来る予定なので、ますます賑やかになりそうな予感(笑)。いつもバタバタと日々を過ごしてしまうので、来月はしなやかに伸びやかに過ごし、スマートな新年度を迎えられるように心がけたい。それでは、また来月。
■ナチュラルワインと気まぐれキッチン「プルピエ」
https://www.reallocal.jp/80095
■SLOW WINE FAIR
https://slowinefair.slowfood.it/
■ココ・ファーム・ワイナリー
https://cocowine.com/