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山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

インタビュー

2024.03.25

#山形移住者インタビュー のシリーズ。「自分が理想とする子育てがしたい」という思いから、2人目のお子さんの妊娠を機に18年過ごした東京から、地元・山形県天童市に移住を決意した山﨑美波さん。情報収集に取り掛かってから実際に引っ越すまでの期間は、わずか2ヶ月。東京ご出身の旦那様、そして小さな娘さんとの怒涛の移住ストーリーを伺いました。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん
この日お邪魔したのは、天童市の山間部・田麦野地区にある山﨑さんのおばあさんのおうち。普段は市内の実家で暮らしているが、週末はここで4世代が集い団らんの時間を過ごすことが多い。

コロナ禍での孤独な子育て

初めての育児は東京でスタートしました。コロナ禍で外出を制限されたりして、「あれ、育児ってこんなに大変なんだ」と余裕もなく孤独を感じることがよくありました。2人目の妊娠がわかったときは当時のマンションも手狭になり、東京出身の夫の実家近くで住もうと考えて。しかし思うような物件がなかなか見つからず、そうこうしているうちに元々心の中にあった自然豊かなところでの子育てがしたいという事を思い出し、山形もありかなという考えが出てきました。

東京は自治体のサポートは手厚いのですが、やはり本当に手が足りないときは身近な人に手伝ってほしいのが本音です。夫が忙しかったりしたので自分も仕事をしながら2人の子育て…と色々考えたときに地元だとサポートが得やすいという思いがあり、そのことを夫に話してみて、考えてもらう時間をつくりました。

実家の山形に戻って子育てをしている友人にも相談しましたね。すると「山形は子育てしやすいし過ごしやすい、なにより自分の母親に頼れるのがすごくやりやすい」ということでした。でも、私は天童に住んだのは高校生まで。「今の山形ってどうなっているんだろう?」と思い、現在の天童の暮らしや子育て環境について「移住フェア」などで情報収集することにしました。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

地元・東京が大好きな夫を
どう巻き込むか?

東京出身の夫は地元が大好きで「絶対地元の方がいい、娘たちは自分の通った小学校に通わせたい」ぐらいに思っていたので、最初はダメもとで話を持ちかけました。工夫したのは、移住にかかる暮らしの費用や見通しを数字で見せて説明したこと。

これからもし山形に住むとしたら、本当にやっていけるかどうかを一度全部数字にして見せて「蓄えも少しはあるから、もし収入が減ったとしてもやっていけるよ」と持ちかけたら、それまでまったく聞く耳を持ってくれなかったのが、少しずつ前向きに考えてくれるようになりました。

それからは夫も一緒に山形に移住して子育てをしている方にお話を聞いたりして、だんだんと具体的なイメージをもってくれて。それから両親や職場に説明する準備に移っていきましたね。

住居のことは期間があまりにも短かったので考えられず、とりあえず子どもが少し大きくなるまでは天童市内にある自分の実家に入らせてもらうことにしました。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

出産をゴールに
仕事も思い出づくりも

夫は仕事を辞めずに転勤するということも考えましたが、結局山形で転職する選択をしてくれました。先に私と長女が山形に移り、その2ヶ月後の出産目前に夫が引っ越してきました。その頃はもうバタバタで記憶がないくらいです(笑)。

夫はこちらに来てから就活をして、無事仕事が決まりました。私は当初退職して山形で新たに職を探そうと考えていたんですが、山形にご縁のある上司のおかげで辞めずに転勤にしていただけることになりました。本当にまわりの方々の協力のおかげでここまでこれたなと思います。

2人目の出産というゴールが見えていたこともありますが、決断してから引っ越すまではめちゃくちゃ早かったですね。出産予定日から逆算していくと、必然的にいろいろな準備のタイミングが決まっていきました。期限があったから、追い込まれて勢いで実行できたという感じです。

東京の思い出を作るためにディズニーランドに行ったりと、土日の予定もギュウギュウでした。怒涛の2ヶ月、その中でも不思議なことにいろいろなことがトントン拍子に決まっていきました。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

一番の変化は
人とのふれあいが増えたこと

長女は偶然にも移住してきてすぐに近くの保育園に一枠空きが出て、そこに入ることができました。一人目のときと比べると、東京と山形では子育ての環境は変わりました。まわりに大人が沢山いるのですぐに相談できるし、病院や美容院などちょっとした自分の用事を済ませたいときでも子どもをパッと家族に預けられる。車で運転中にふっと目に入る周りの山や田んぼの景色に癒されてほっとできる。自分の時間も心の余裕も持つことができています。

親戚もこの場所(祖母の家)を拠点に集まってくるので、おばあちゃんや親戚の子どもたちとみんなでわいわい遊べたり、とても良い環境です。それがきっかけなのか、長女はとてもお喋りが上手になりました。以前の人間関係は保育園の先生たちと職場の人ぐらい。コロナ禍で保育園のママたちとも気軽に誘い合えませんでした。移住後、一番変わったのは人とのふれあいが増えたことです。

逆に移住してから少し不便を感じているのは、病院にかかるときです。子どもが小さいので病院に行くことが多いのですが、どこに行ったらいいかわからなかったり、予約が取りにくかったりということがあります。あとは、歩いて行ける範囲に娯楽が少ないこと。東京ではちょっと散歩しただけで小さな店を見つけたりする楽しさがありました。また、山形に来た当初は運転ができなかったので妊娠中はリフレッシュできずに困ることがありました。こちらでは車が必須ですね。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

知らなかった
山形・天童の魅力

天童市の子育て遊戯施設「げんキッズ」や「わくわくランド(道の駅天童)」が大好きでよく行きます。山形には天童市以外にも児童遊戯施設がたくさんあるんですが、どこも無料って東京では考えられないです! 大きい公園も多くて、思い切り体を動かして遊べます。パパが週末仕事のときは、じいじとばあばが連れて行ってくれることもあります。

マルシェにもよく行きます。山形ってマルシェが多いんです。出店している方たちと話しながら、山形にはどんな食べ物や美味しいものがあるかな? どういう人がどんなことをしてるのかな? と会場の中を巡るのが楽しいですね。私みたいな普通のママがハンドメイドのお店を出していたりして、山形は思っていたよりもいろんなことをしてる人が多いなあと感じています。

最近行ったマルシェでは、山形の米粉を使ったシフォンケーキとパンを買いました。山形に来てからは、食への興味が高まってます。どうせ食べるんだったら山形産を食べさせたいと思ったときに、作り手も材料も見える山形産の食品やお菓子が身近に手に入るのは嬉しいですね。子どもたちも大好きです。

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天童は思っていたよりも
「ちょうどイイ」

子どもの頃の天童はとにかく娯楽がないイメージだったんです。でも今住んで暮らしてみると、思ったよりも発展しているなと感じます。自分と同じ子育て世代がとても増えた印象です。散歩をしていても、子ども連れの人をよく見かけるし、子ども用品のお店もあるのであまり不便を感じません。保育園の中にある支援センターでは、保育士さんに気軽に育児の相談を身近にできるので助かっています。

それからやっぱり一番は、美味しい食べ物が手に入ること。私、果物が大好きなんです。当時はあまり分かっていなかったんですが、こんなに美味しい果物がある天童って改めてすごいんだなと帰ってきてから感じるようになりました。子どもが産まれてから、そんな天童の魅力がより「見える」ようになりましたね。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

幼少期の原体験を胸に

元々私は仙台市出身で、この家は私の父親の実家なんです。小さい頃から夏休みなどにしょっちゅう来ていて、お盆やお正月は全国から親戚が集まります。

私が小学校5年生のとき、父の転勤をきっかけに家族みんなでこの田麦野地区に引っ越してきて、約2年間をこの地区で過ごしました。全校生徒は25人くらい。先生方がとてもあたたかくて、川遊び、自然観察、スキー教室など、自然の体験をたくさんさせてもらいました。中学校に入ってからは、市内の方に移ったんですが、ここ田麦野で過ごした2年間は強烈で全部覚えています。

だから小学校がなくなるときはちょっと寂しくて(平成18年閉校)、ここが衰退していくのが嫌だなという気持ちがずっと心の中にあり、今回の移住の決断にも影響していると思います。今後はここで子どもたちが自然体験をできる場所を作りたいなと、漠然とですが思い描いているところです。

山形県天童市・移住者インタビュー/ 山﨑美波さん

直感を信じて動いてみよう

私は普段、迷って慎重になることが多いんですが、今回の経験を通して直感を信じて動いてみることも必要だなと思いました。移住ってかなりの決断ですよね。私の場合、迷いがなかったのは、子育ては自然豊かなところでのびのびやりたいという思いがあったこと。そんな軸のイメージが崩れなければ移住は上手くいくと思います。もし行き詰まっているとしたら、気軽な気持ちで現地に旅行に行ってみたり、美味しいものを食べたり楽しんでいれば、自然にイメージが湧いてくるはずです。

 

取材・文:高村陽子
写真:伊藤美香子