【鹿児島県指宿市】私のミチシルベは人と関わり、のびのびと描くこと/ イラストレーター ことうのぞみさん
インタビュー
鹿児島県指宿市を拠点にイラストレーターとして広告デザインや講師業、そして、作家活動にも取り組まれている“ことうのぞみ”さん。そんなのぞみさんから、現在の道を歩まれたきっかけ等についてお話を伺いました。
人との関わりで拓くミチシルベ
幼い頃から絵を描くことが好きだったのぞみさん。
その気持ちはずっと変わらず、高校卒業後はイラストやデザインを学べる専門学校へ進学されました。
「母からは“のぞみは2歳の頃から丸を描いて遊んでいたよ”と言われました。襖に紙を貼って“好きに描いていいよ”とのびのび育ててくれたのが大きかったかもしれません。」
「父は私が中学生の時にノートパソコンを買ってくれて、好きなように使わせてくれました。外の人からみると暗い印象を持たれるかもしれませんが、それが好きな仕事で道具として使うようになり今に繋がっています。」
「専門学校に通ってからもその気持ちは変わりませんでした。雰囲気もゆるくて、恩師たちも温かくて、とても私に合っていたんです。」
「その時間を通して気づいたのは“人と関わりが好きなんだ”ということ。高校時代までそんなに積極的に人前に出るタイプではなかったのですが、チームで何か取り組む時に私が中心となることもありました。」
「恩師たちは良い意味では放置してくれました。それがあったからこそ、目の前に与えられたものをどう拓いていくかを自分で考える力が身についたんだと思います。」
就職は県内のデザイン事務所に所属しながら
グラフィックデザイナーとして広告の世界に飛び込まれました。
最初の1~2年は仕事に慣れず、毎日必死だったのだとか。
3年目になり、周囲の評価も上がり、仕事も任せられるようになり自信がついてきたそうです。
「仕事が遅くて“要領が悪い”と先輩に言われてショックを受けたこともありました。でも、必死に地道に続けていくと、私の案がコンペで通って“私、仕事できている!”と思えるようになって。」
「その事務所には4年間所属していました。ハードな日々でしたが、先輩たちや仕事で関わりがある皆さんに支えてもらって乗り越えることができました。その時の人たちは今でも付き合いがある方が多いです。」
そんなのぞみさんに一つの転機が訪れます。
それは卒業した専門学校の恩師からの電話でした。
“ことう!母校で先生をやってみないか?”
新しいことにチャレンジしたいと思っていたのぞみさんにとって、それは願ってもない言葉でした。
その1年後、デザイン事務所を退職し、
先生として専門学生と向き合う日々が始まるのです。
とりあえず、やってみる
母校の専門学校では担任として座学や実習、そして、三者面談等、学生と向き合う日々が続きました。
隙間時間を見つけては自身もさらに勉強を重ね、
時には思いついた手法を授業に取り入れ、学生の成長を見守っていったそうです。
「授業内容を考えるのは楽しかったです。その中でも意識したのは全てを教えないことでした。それは“自分で気づくこと”を大事にしてほしいと思っていたからです。」
「少しずつ成長した教え子のデザインが企業に採用されて、世の中に出た時の喜びは忘れられません。そうじゃなくても、卒業してから“こんな案件やったよ”と連絡をくれたりすることもあって、先生をやっていてよかったと思いました。」
「ある時、教え子と展示会を開催することになったんです。きっかけは“絵本を描きたい”という話からでした。一度開催すると、展示会に対する気持ちがさらに高まり、しばらくはグループ展形式で続けました。」
「来場者が笑顔で帰っていくのがとても嬉しくて。当時、簡易製本にして絵本にしたいと考えていた原画(絵)を飾っていたんです。すると“絵本にしてほしい”とありがたい言葉をいただきました。」
のぞみさんは恐竜を山にした絵を描くようになったのは10年程前のこと。
デザイン事務所時代にあるフリーペーパーの表紙のイラストを描いてほしいと依頼があったことがきっかけだったのだとか。その時に周囲からの賞賛の声が絵本の対する想いを強くしたそうです。
そこで誕生したのが『きょうりゅうのもり』でした。
「展示会を重ねていくうちに“まずは絵本をカタチにしよう”と思い、行動に移すことにしたんです。イラストだけでなく、ストーリーも自分で考えました。」
「想定以上の人が購入してくれたこともですし、何より“こんなアプローチもあるんだ”と教え子たちにとって刺激になったことが何より嬉しかったです。」
「今思えば“こうすればよかったかな…”と反省点も多いですが“とりあえず、やってみる”ことから新しい広がりがあることに気づけたことは大きな収穫でした。」
「それは専門学校の中での授業や教え子との向き合い方もですし、今フリーランスとして活動する中でも大切にしていることです。」
のびのびと楽しむ
専門学校を退職し、現在はご家族で指宿市へ拠点を移し活動されているのぞみさん。
出産を経て、鹿児島大学農学部の非常勤講師や
絵本関連のお仕事など、活動の幅を徐々に広げてきています。
「子育てをしながらのお仕事=ハード」という印象を持たれる人が多いと思いますが、のぞみさんからはそれを微塵も感じさせない言葉が出てきました。
「友人たちからは“フットワークが軽いね”とよく言われます(笑)。出産した半年後に大学の非常勤講師の仕事を始めましたし、今でも子どもと一緒にいろんな場所に行くようにしています。」
「人と関わりが好きな気持ちはずっと変わりません。そこから新しい繋がりが広がって、選択肢も増えてきました。特に私は展示会に行くのが好きで、それがきっかけになることが多いです。」
「常に自分が楽しむことは大事にしています。色を塗るのは好きだからか、いつもニヤニヤしながら描いています(笑)。出産してからゆっくり一つの作品に打ち込むがなかったので、今後はその時間をとれるようにしたいです。」
今年2月からは借家を使い、アトリエにできるように準備を進めているのだとか。単なるアトリエではなく、いろんな活用も妄想しているのだそう。
「指宿に住んで1年が経とうとしています。少しずつですが、地域の知り合いも増えてきました。私の作業する場所としてもですし、お絵描き教室やワークショップを開催できるようにもしていきたいです。」
「頑張ってお茶一杯提供できるようにすることで、私のように小さな子どもがいる親御さんや近所のおじいちゃん・おばあちゃんが気軽に来れる場所にもできたらと考えています。」
「実は、近くにある知人のアトリエで開聞岳をテーマにした展示会を開催する予定です。私自身、開聞岳が好きなので(笑)。いろんな人がそれぞれの視点で描くことで、足を運ぶ人たちの層も変わってきます。だから、とっても楽しみです。」
「今の私があるのはのびのび育ててくれた両親だったり、そんな私も受け止めて支えてくれた人たちです。だからこそ、ルールや価値観に制限されずに“のびのび”と表現できる場をつくることが、私の次のステップなのかもしれません。」
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備考 | ●SNS等 ●絵本について 『きょうりゅうのもり』(いしだえほん) 『アマビエさまの3つの願い』(燦燦舎) |