【鹿児島県阿久根市】自由と開放感から生まれる誰かにとっての居心地良い日常 / ともまち珈琲 松木竜太郎さん・鈴木晴子さん
インタビュー
鹿児島県阿久根市の海沿いにて小さな珈琲屋『ともまち珈琲』を営む松木竜太郎さんと鈴木晴子さん。今年の3月でオープンして2周年が経ちました。オープンに至る経緯や2年間の振り返り等についてお話を伺いました。
たまたま辿り着いたもの
お二人の出会いは12年前のオーストラリア。
当時、日本から遊びに来た晴子さんにワーキングホリデーで滞在していた竜太郎さんを共通する友人から紹介されたのがきっかけでした。そこから親しくなり、パートナーとなるにまで至ったそうです。
そこから数年経ち、転機が訪れます。
それは竜太郎さんのご両親の引越しでした。
「両親は10年程インドに住んでいました。それが6年前に阿久根に家を移したので、僕もそのタイミングで阿久根へ里帰りしました。元々父が阿久根出身というのも大きかったかもしれません。」(竜太郎さん)
「私はそれまで鹿児島へ行ったことがありませんでした。ふらっと遊びに行くと、居心地がとても良くて。そのタイミングで仕事を探していたら阿久根市の地域おこし協力隊の募集を発見し、応募することにしました。」(晴子さん)
少しずつ準備を進め、2019年。
竜太郎さんは道の駅阿久根の珈琲スタンドの店員として
晴子さんは阿久根市の地域おこし協力隊として
ともに阿久根へ移住することになります。
それぞれの仕事を通し、まちの人たちと信頼関係を築きながら
阿久根に馴染んでいったお二人。
そんなある時、脇本エリア(阿久根市内)の海沿いにある小屋を発見したといいます。
「小屋の前を通るたびに“ここ、いいな…”と思っていました。海も綺麗に見えましたし、蔦の絡まる小屋の雰囲気も良かったですし。」(晴子さん)
「でも、ここでお店を始めたとしても、メインの道路から外れているし、人通りも少ない場所だったのでビジネスとして成立するのかという不安もありました。“ここしかないよな…””でも…お客様が来てくれるかな…”の繰り返しでした。」(竜太郎さん)
地元の家主と話し合いを重ね、小屋を活用し珈琲屋として開業することを決意。ご縁の中で繋がった仲間たちにデザインや看板について相談しながら準備を進めていきました。
「阿久根に移住した時は独立も珈琲屋をやることも考えていませんでした。結果として、たまたま珈琲屋だったんです。珈琲だったら、いろんな人とコミュニケーションがとれますし、自分たちでお店をやれば好きな空間もつくれると思ったので。」(竜太郎さん)
誰かにとっての日常の風景に
2022年3月。
色々なタイミングが重なって『ともまち珈琲』として珈琲屋をオープンさせました。
オープン日にはお二人が移住してから親しくなった人や地域の人たちがお祝いに駆けつけたそうです。
「ともまちの由来はお店前にあるバス停が塘町(ともまち)だったことからです。カッコいい名前にしようかなと思ったのですが、しっくりこなくて。ファーストインスピレーションで“ともまち珈琲”にしました。」(竜太郎さん)
「地域の皆さんからオープン日にお花を贈ってくださったりして、応援していただけてありがたいなと思いました。」(晴子さん)
ともまち珈琲の日常の一つとして挙げられるのが、地域の人たちが集まって珈琲を飲んだり、スパイスカレーを皆で食べている風景。日常の楽しみの一つとして、ともまち珈琲に毎日来る人もいるのだとか。
「今まで日本茶を飲んでいた人たちが日常に珈琲を飲んでくれるようになったのは一つの驚きです。珈琲を片手に、海を見ながら会話を楽しんでくださる地域の方も増えてきました。」(晴子さん)
地域の人たち以外にとっても、ともまち珈琲に足を運ぶことが日常となっている人も増えたのだとか。
「お客様との会話の中でテラス席の寒さ対策の話をしていたら、隣町からの常連さんが厚意で薪を持ってきてくれたんです。それを使って、みんなが暖をとるために焚き火をしてくれました。」(竜太郎さん)
「別のある常連さんは“ともまちに来れば友達ができる”と言ってくださる方もいます。実際、珈琲飲みながら仲良くなった人と飲みに行ったりしたと聞きました。普段いるコミュニティでは出会わない人と出会えるきっかけになっていると思うと嬉しい気持ちになります。」(晴子さん)
暑さ・寒さ、天候の懸念点はあれど、外で営業しているからこその開放的なコミュニケーションや出会いは生まれやすいように感じます。
小学校の下校時間に“ともまち珈琲”を通る子どもたちに声かけをすることもお二人にとっての楽しみの一つなのだとか。
「先日、高校の卒業式があって、よく顔を出してくれていた学生さんたちがその日に挨拶に来てくれました。“帰省したらまた来ますね”と来てくれたことが印象的でしたし、このお店をやってきてよかったと思えた瞬間の一つでした。」(竜太郎さん)
自由と開放感が生み出す居心地良さ
先日、ともまち珈琲のオープン2周年イベントが開催され、常連客や地域の人が絶え間なく足を運びました。
2周年イベントを終え、お二人が大切にされていることを伺いました。
「“自由に”というのは一つのテーマかもしれません。お客さんによって、お店には来る理由は様々です。いろんな人と交流したい人もいれば、一人でボーッとしたい人もいます。各々が自由に居心地良く過ごせる時間にしてもらいたいです。」(竜太郎さん)
「気楽にフラッと来てもらえるような場所でありたいと思っています。そんな場所になってきているからこそ、自然とここでいろんな人が交じり合うようになったんだと思います。」(晴子さん)
「お店を経営していると“ターゲットを絞るといいよ”と周りからアドバイスをいただくことがあります。でも、僕らは敢えて絞っていないことで、いろんな人が来るのが面白いと感じています。老若男女問わずいろんな人が混ざり合う、そんなお店を目指したい。」(竜太郎さん)
「あと“この人とこの人が会ったらいいな”と思う人が同じタイミングでやってくると、それが面白いんです。そこからどんどん輪が広がっていくのも見ていて嬉しくなります。」(晴子さん)
オープンしてから特に感じているのは多くの人たちの支え。
だからこそ、お二人もお客さんやお世話になった人たちに対して「自分たちにできることは何か?」と意識するようになったといいます。
「私たちは“人”を大事にしています。それはお客様だけでなく、関わってくださる方や、見守ってくださる地域(まち)の方々だったり、様々です。そんな方々にこれからも出会いの交差点となり、元気になれる場所でありたいと思っています。」(晴子さん)
「地域の皆さんはお店の前を通れば声をかけてくれますし、忙しい時に時間をズラしてきてくれたり、さりげない心遣いがありがたいなと感じています。周辺エリアの仲間たちとはお互いにお客様を紹介し合ったりして、少しずつご縁も広がってきています。この場所で珈琲屋をやらせていただけることに日々感謝しつつ、もっと多くの人たちにとっての居心地の良い場所にしていきたいです。」(竜太郎さん)
屋号 | ともまち珈琲 |
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URL | |
住所 | 鹿児島県阿久根市脇本13955-4(塘町バス停前) |
備考 | ●営業日について 水曜日〜日曜日 11:00~17:00(月曜日・火曜日は定休日) 金曜日はカレーの日 ※インスタグラムの営業日カレンダーもご参照ください。 ●その他 ともまち珈琲のギフトカードが販売されています。ともまち珈琲の全商品に使えます。有効期限はともまち珈琲がある限り。1枚500円(税込)から。 |