real local 鹿児島【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編- reallocal|移住やローカルまちづくりに興味がある人のためのサイト【インタビュー】

【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-

インタビュー

2024.04.12

エッセイ漫画家の“つくしゆか”さんは十数年にわたる闘病生活を赤裸々に、ユーモアを交えてつづったコミックエッセイ『極度の心配性で悩む、強迫性障害でした!!』を出版され、多くの人から反響を呼んでいます。そんなゆかさんから、強迫性障害(※1)と診断された前後の様子や葛藤等についてお話を伺いました。

(※1)自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れない、わかっていながら何度も同じ行為・確認を繰り返してしまう性質の病気のこと。たとえば、不潔に思えて何度も何度も手を洗う、ガスの元栓や鍵や戸締りなどを何度も確認せずにはいられないとった症状がある。強迫神経症は別名で、現在は強迫性障害といわれている。

【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-

あたりまえとの戦い

今から19年前、ゆかさんは病院の看護師として勤務していました。その中である悩みがゆかさんを苦しめていたといいます。

「看護師は仕事上、手指衛生のために手洗いをしっかりしないといけません。しかし、他の同僚よりも長い時間手洗いをしていて。長い時は20分かけて洗うこともありました。」

それを見かねた上司から精神科を勧められ、その結果、強迫神経症と診断され今に至るのだとか。

「上司から勧められた時は、嫌な気持ちになったのを覚えています。だって、自分のやっていることは看護師として、あたりまえの行為だと認識していたのですから。」

「でも、その行為をきっかけに手が荒れ、真っ赤になり、皮が破れてしまい、痛みが出ちゃって、それで苦しみました。精神科に行くのは、かなり勇気が必要でした。」

【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
エッセイ漫画家 つくしゆかさん
“自分の中ではあたりまえと思ってやっていることなのに、それに対して、薬を処方して「はい、終わり」とできるのか…。治療法なんてあるのか…。”
 
病院で主治医からアドバイスをしてもらっても、薬を飲んでいても、胸の中は不安でいっぱいだったそうです。結局、通院治療は長続きせず、病院に行かなくてなってしまったのだとか。
 
「症状が良くなっているのかどうか。それは目には見えないものだからわからないですし、それが不安となってしまったのだと思います。気持ち次第というか、自分との戦いですよね。」
 
「看護師の仕事は続けました。でも、通院中だった時は薬の副作用として目眩や睡眠障害の症状が出て、仕事中にポーッとしてしまい、仕事上の失敗が増えてしまったんです。」
 
「それでも、看護師の仕事を続けたのは一つの症状だったかもしれません。そして、何より大きかったのは“看護師でいないといけない”という強迫概念だったかと思います。」
 
「看護師になることは簡単ではありません。何より、日々の現場を頑張っている同期や同僚を見ていると“自分だけリタイアするのが恥ずかしい”と思ってしまったんです。」
【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
画像提供:つくしゆか 当時の様子を漫画で描いたもの
【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
画像提供:つくしゆか 当時の様子を漫画で描いたもの

病気の苦しみを漫画で表現することで

「他の選択肢を知る機会がなかったからこそ、そんな思考になっていたのかもしれません。“それに早く気づいていたら、もっと早い段階で当時の苦しみから解放させてあげられたのに”と思う瞬間は今でもあります。」

当時の苦しみをそのように振り返ります。

その後、病院を退職。福祉の仕事をしながら今後の道を模索するゆかさんに一つの転機が訪れます。それは絵の世界との出会いでした。

「実は、夫がイラストレーターなのですが、彼は全く別の仕事をしていた人なんです。でも、思い切って仕事を辞めて、今の世界に飛び込み、日々挑戦を続けています。」

「その姿を見て“羨ましい”“自分も絵を描くのが好きだから、それを仕事にしたい!”と思い、福祉の世界から飛び出しました。最初は夫への対抗心もあったと思います。でも、絵の勉強を始めて、漫画を描いていたらすごく楽しくなってきました。」

最初にチャレンジしたのは4コマ漫画。次第に、作品も増え、それをSNSにて発信したところ反響を呼ぶことになるのです。

「強迫性障害の内容を漫画にすると“とてもわかります”“私もそうなんです”といった声が多かったです。落書きするような感覚で描いていたんですけど、そこで需要を知りました。」

【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
画像提供:つくしゆか 自身が描いた4コマ漫画の一つ

“こんなふうに描くことで、気持ちが楽になれる人がいるんだ。”

“もし、症状がひどい時に、こういう漫画を読んだら、少しでも救われるかもしれない。自分以外にも、似たような症状を持っている人はたくさんいるんだ。”

そんな手応えが自身の背中を押し、ある決意をすることになります。

“強迫性障害の経験を漫画にして世の中に出したい!”

そこで描いた本の出版をサポートしてくれたのが燦燦舎でした。

「燦燦舎のご夫婦はお子さんが3人いるのですが、私が帰った後に原稿を読んでくれたそうなんです。漫画で描いていたからか、とても楽しそうに読んでくれたようで。」

「“テーマは重たいかもしれないけど、どの世代も楽しんでもらえるのでは?”と思っていただけたようで、正式に本として出版が決まりました。」

そこで誕生したのが『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』。

デフォルメキャラ(※2)で描いているからこそ、重たい内容でもあまり感情移入せずに読めるようになっています。

「不安の象徴としてハッくんというキャラクターがいるのですが、もし不安が生まれたとして“ハッくんみたいなものが出てきた”と思ったら、それを払いのければいいのかなと考えてて。そんなイメージでいると、心を守ることにもつながるので、そこも伝われば嬉しいです。」

(※2)キャラクターの頭身を極端に下げ、小さくて可愛い印象を与えるような表現。

【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
写真提供:つくしゆか 出版をサポートしてくれた燦燦舎の鮫島さんと
【鹿児島県鹿児島市】病気とともに生き、小さな幸せを一つひとつゆっくり描く / エッセイ漫画家 つくしゆかさん -前編-
写真提供:つくしゆか 『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』中に出てくるキャラクター ハッくん

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屋号
つくしゆか
URL

https://twitter.com/hrm_i0630

備考

●『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』のお買い求めは以下のリンクから。

https://tsukusi.thebase.in

●SNS

インスタグラム

https://www.instagram.com/tsukushiyuka/