【福島・郡山市】“命をつなぐパンを作りたい”「La Plume(ラ・プリュム)」
インタビュー
パン作りをされているある方に出逢いました。その方は、手間暇をかけることで、小麦本来の美味しさを活かした作り方をされているそう。今回は、心も身体もそっと包み込んでくれる優しい三原幸佳さんに「La Plume」の天然酵母パンへのこだわりから想いまでを、沢山伺ってきました。
「La Plume」という名前に込めた想いとは?
三原:「羽毛という意味です」。
ここにはどんな言葉の繫がりがあるのだろうか、私は続けて三原さんにお話を伺いました。
三原:自由で囚われることなく、ふわふわと舞う“羽毛”のように、心も身体も軽やかになれる。そんなパンを目指しています。とても美味しい!という幸せ、かつ身体にもたれない、すぅーっと馴染んでゆくような身体に負担のないパン。悲喜交交の日々の中でほんの少しでも癒しのひとときになれるようなパンを届けられたら、という想いを込めました。
パンという姿をした、愛と幸せを届けたい。
お客様へ対する優しい心遣いや素敵な想いを温厚な雰囲気の口調で語ってくださった三原さん。話を続けていくと、今は地元の福島県郡山市に工房を構えていますが、以前は東京でバーテンダーやソムリエをしていた経験があるとのこと。
―なぜ、数ある選択肢の中から「パン」を選んだのでしょうか。
三原:パンは人を幸せにしてくれると思うからです。独特の香り、ぬくもり、その温かさ。パンを好きな方は多い。うわべや綺麗事ではない、中身のあるものを作りたかった。私が届けたいものは、パンという名前と形をした、愛と幸せです。
―続けて、どのような想いで「La Plume」を立ち上げたのでしょうか。
三原:心から良いと思える、自信と責任を持ったパンを作るための絶対的な選択でした。心から納得できるパンを作るためには、自分でやるしかない。理想は自分で形にするしかない。パン職人を志した7年前から変わることない想いをやっと実現できました。
「店舗を持たない。」今の私には、これが最善の選択でした。
「La Plume」は店舗を持たない形で開業当初から工房を構え営業しており、福島県内の自然食品のお店などに卸しています。また、SNSを通してご注文をいただいたお客様のもとへパンをお送りするという方法でも営業しています。そこで、「店舗を持たない。」その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。
三原:今の私にはこれがベストの選択だったからです。まっとうな良い品質のものを作る。良いパンを作り、必要としてくださる方に届けられる。それが私の望みであり、品質を守れる方法であればどんな形でも良い。天然酵母や自然な材料だけで作ろうとする仕込みは、何日も、1週間程度かかるものもあります。1人で全てを行うのは無理ですので、お店に立たない選択は自然でした。お店を構えたい…が、最優先な訳ではなく、お店を持ちたくない訳でもない。良いパンを作る…。一番大切な信念を貫きながら、色んな形に進化していければとも思います。そして、とても大切なこと。パン屋であれば決して避けては通れないフードロス。パンが残ることは涙が出る程嫌です。お店にしなければパンを残さずに済む。これはとても幸せなことです。
自然に起こした唯一無二の天然酵母から生み出されるパンの滋味深い味わいとは。
天然酵母だからこそ引き出せるパンの深い味わいというものを三原さんはどのようにこだわって作っているのでしょうか。
―天然酵母パンを作るときのこだわりはありますか?
三原:自然に起こした、唯一無二の天然酵母から生み出されるパンを、本当に美味しいと思っています。ですので、今の方法にたどりつきました。心から酵母に敬意をもっています。扱いが非常に難しく、中途半端な技術ですと、ひどくお粗末な結果になります。少しでもよりよいパンにするため思考を巡らす毎日です。決して手間を惜しまないこと。酵母のリズムと呼吸を尊重すること。酵母のサインを決して見逃さないこと。美味しくなければ意味がない。自己満足では意味がない。内側に宿っている滋味深い味わいを引き出すこと。しっかり発酵させて、きちんと膨らませ、香ばしく焼き上げること。酸味を極力ゼロに近づけて、できる限り出さないようにすること。何よりも、綺麗で透明感のある、かつ芳醇で奥深い味わいに仕上げること。天然酵母のパンは、ちゃんと扱ってあげれば、決して酸味の強い、粉のかたまりなんかじゃない。しっかり発酵させた、天然酵母の素晴らしさを知っていただけるようなパンを目指しています。
命をつなぐパンを作りたい。
「命をつなぐパンを作りたい」を信念に仕事をしている三原さん。この言葉にはどのような想いが込められているのでしょうか。
三原:大切な子どもたち、大切な人達に安心して口にできるものを届けたい、美味しいパンは粉と塩と水だけでできる。こんなあたり前のことがパンに限らず、今は難しい世界です。口にしていい素材だけで、食べ物を作ること。本来、お台所にあるべき材料だけで食べ物を作ること。本当は自然栽培や全て有機の材料で作りたい。古代小麦など、理想はまだまだあります。しかし、そうすると、やはりお値段が上がってしまい…皆様に届けられなくなってしまう。限られた方にしか届けられなかったら意味がない。まずはできることから一歩ずつ。その時にできる最善をつくし、この先どんどんと進化していけたらと思っています。手間や時間をかけることで、引き出せる旨みや深い味わいがあれば、余計なものは入れなくとも、納得できる美味しいパンが作れる。パンはお菓子じゃない。身体が喜ぶものを。身体と心の声をちゃんと聞いて、幸せになれる、心を満たせるパン。大切な自分を守ってあげられるのは、自分だけだから。もしも、何かが心に響いた方の選択肢の一つになれたら幸いです。
日常の一コマを幸あるものに。
お客さんへ愛と幸せを届けたいと、日々パンを作っている三原さん。ご自身はどのような時に幸せを感じるのでしょうか。
三原:幸せを感じる瞬間は、お客様に美味しいと言っていただけた時です。少しでも笑顔に変わる何かになれたとしたら、とても幸せです。
眩しい笑顔で温かく優しい雰囲気の三原さん。仕事に対する熱意溢れる方で、その熱意や想いが表現されているからこそ、美味しいパンができているのだと感じる瞬間が数多くありました。日々、お客さんへ愛と幸せを届けたいと心の底から思っている、そんな優しさに満ちた三原さんだからこそ作れる天然酵母のパン。是非食べてみませんか?