私たちはここにいる。“いる”ことから始まる幸せな未来への繋がりづくり。/ コミュニティナース鹿児島 けだなの保健室
インタビュー
「人と繋がり、まちを元気に」をコンセプトに鹿児島県内を中心に活動されている任意団体『コミュニティナース鹿児島』(※1)。現在、鹿児島市の『けだなの薬局』の協力のもと、不定期に“けだなの保健室”を運営しています。その背景について、代表の玉井妙さん、けだなの薬局・代表取締役の原崎大作さんにお話を伺いました。
(※1)コミュニティナースは「人とつながり、まちを元気にする」ことを目指し、暮らしの身近なところ、「毎日の嬉しいや楽しい」を一緒につくり、心身そして社会的な健康やウェルビーイングの寄与することを目標としている
地域と関わりを持ち、まずは存在を認識してもらうことから
コミュニティナース発祥の地である島根県雲南市で2年程活動し、鹿児島へUターン後、本業のお仕事の傍らコミュニティーナースとして活動してきた玉井さん。
無理をせず細く長く続けていくこと、楽しむことを大事に
少しずつ県内で仲間を増やしてきたといいます。
昨年7月に任意団体『コミュニティナース鹿児島』を設立し、現在4名のメンバーで活動を展開しています。
「全国で頑張っているコミュニティナースの仲間たちからアドバイスをいただき、持続可能な活動にしていくために任意団体を設立しました。まずは、メンバー同士のことを知り合う、それぞれの活動を応援することから始めました。」
「それ以外であれば、医療従事者の専門学校で学生さんに向けた講義でお話したり、健康の土台である食の大切さを子どもたちに伝えるためにお味噌づくりのワークショップも開催してきたりしたところです。」
今後の活動を模索している中、けだなの薬局を運営する管理薬剤師の原崎大作さんから声がかかり、”けだなの保健室”が始まったそうです。
“けだなの保健室”はフリーコーヒー(※2)形式で行われています
どうして、フリーコーヒーなのか。どうして、薬局で行っているのか。そこには地域との関わりを意識した理由があったのです。
「けだなの薬局は福祉事業所と連携し、コーヒーを焙煎して、それを販売する取り組みをされています。就労支援の課題である工賃を上げることにチャレンジもされていたので、私たちなりの応援をしたい気持ちがあったことがまず一つの理由です。」
「二つ目は、地域と関わりを持つためです。日常生活の動線上で、どのように地域の皆さんと出会っていけるかと考えたときに、手段としてフリーコーヒーが浮かんできたんです。」
「道行く人たちに声かけをしたり、地道に一軒一軒訪ねながらチラシを配布したり。そうすることで、まずは私たちの存在を認識してもらい、ふらっと立ち寄ってもらって“最近どうですか?”という会話や悩み事相談を受けられるように、ゆるく開催しています。」
「薬局は地域との繋がりが強い社会インフルの一つです。だからこそ、そこで開催できる大きな価値を感じています。“あそこに行けばコーヒーを飲めるし、おしゃべりができるらしいよ”“立っている人たちは看護師さんらしいよ”と少しずつ認識してもらえたら。まずは、そこを意識しています。」
(※2)見知らぬ人同士をコーヒーという媒介を通して繋いだり、人とまちを繋ぐこと。
“いる”だけでいい
続いて、けだなの薬局・代表取締役の原崎大作さんにお話を伺いました。
原崎さんがコミュニティナースのことを知ったのは数年前のこと。その時、頭を過ったのは課題点でした。
「コミュニティナースは社会的意義がある活動だと感じた反面、収益をつくるのが難しい活動だとも感じました。何か自分にもできることはないかと考え“それなら、薬局がコミュニティナースのエンジンやガソリンのような存在になればいい”と思ったんです。」
「玉井さんがUターンし県内で活動しているのを聞いていました。それなら広告や場所の提供を薬局がサポートすることで、コミュニティナースの課題点の解決に繋がり活動しやすくなるのではと考え、“けだなの保健室”が誕生したんです。」
今回の取材時で“けだなの保健室”は4回目。
原崎さんにとって、薬局を媒介にして、コミュニティナースが場を開くことの意義は何なのか。そこについてもお話してくださいました。
「世の中の評価軸は、たとえば、お客さんの数だったり、どんなことをしたのか、どんなリアクションがあったのか、といったdoの視点が多いと思います。その視点だと、活動しているのに地域の人が薬局に来なかったら、彼女たちにとっては辛いことかもしれません。」
「でも、僕から彼女たちには“お客さんが来なくてもいい、君たちがいるだけいいんだよ”と伝えています。お客さんが来ないから役に立っていない、やる意味がない、わけではありません。彼女たちの“存在(be)”があるから、何かあった時に駆けつけられる場所がある。それだけでいいんです。」
「薬局の中で作業していると、彼女たちの笑い声が聴こえてくるんです。それがいいんです。そんな空間だから“ちょっと世間話しに行こう”“若い人たちが何か楽しそうにしている”と地域の人は思ってくれるかもしれない。そのゆるい感覚がもしかしたら、結果的に小さなことでも誰かを救うかもしれない。」
「やった(do)ことではなく、いる(be)に対して僕は評価しているし、彼女たちの存在がその空間を訪れた誰かにとって、良い未来に繋がるとも感じているので、この活動は100点満点だと思っています。」
一人の人として関わることで
「地域の皆さんと関わる時、看護師としてではなく、一人の人として関わることを大事にしています。」
コミュニティナース鹿児島として活動する上で大事にされていることを力強く語る玉井さん。
「看護師として関わってしまうと、看護師と患者といった関係性が固まってしまいます。そうではなく、一人の人として関わることで体調といった医療的な部分だけではなく、気持ちの開示にも繋がると考えています。」
その他にも、余白をつくることを大事にされているのだとか。
たとえば、花を飾るだったり、風船やシャボン玉を準備して子どもたちが遊べるようにしたり、余白をつくることで、どの世代にも楽しんでもらえる場でありたい。そのようなことを妄想しているのだとか。
「チラシを配布させていただいた世帯の方が“楽しみにしていたよ”と嬉しい声をかけてくださったり、中には家へ入れてくださり、お茶をしながら趣味について語ってくださったりした方もいらっしゃいました。ほんの小さなことかもしれませんが、病院の中ではできないことなので、開催してきてよかったなと思う瞬間でした。」
団体を設立し、1年。その中で、支えてくれる仲間を増やしながら、その存在をジワジワとゆっくり認知してもらえているように感じます。
最後に今後の展望について伺いました。
「本当に困っていて行政の支援が必要だけど、そこにアクセスできない、もう一歩踏み込みが必要としている方はここには来れないと前提に置いた上で、私たちに何ができるか。それは、支援な必要な人たちにアクセスできる元気な人・公的な機関とどれだけ繋がれるかが鍵だと思っています。」
「そのためには、まずは仲良くなって信頼関係をつくることがベースにありますし、その回数を重ねることで“あの人たちに相談すればいいんじゃない?”と存在を認識してもらえて初めて本当に支援が必要な人へアクセスできるのではないかと考えています。」
「本業がある中での活動なので頻度は不定期ではありますが、だからこそ、この場が開催でき、繋がりができることの大切さを感じています。」
「最終的には、けだなの薬局の周辺地域の皆さんの得意なことを活かし合いながら地域全体がより豊かになっていくコミュニティづくりができたらと思っています。」
屋号 | コミュニティナース鹿児島 |
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備考 | ●けだなの保健室について 上記のコミュニティナース鹿児島インスタグラムにて随時ご確認ください。 ・ボランティアメンバー募集中。 お問い合わせは上記インスタグラムDMかメールからお願いします。 メールアドレス:communitynursekagoshima@gmail.com
●けだなの薬局の住所 鹿児島市吉野2丁目30-12 |