【鹿児島県鹿屋市】大隅半島の地で感謝と感動を積み重ね、夢へと繋ぐ / 合同会社シスルナベース 浜洲充哉さん
インタビュー
鹿児島県鹿屋市の旧高須中(パーク高須中)を拠点にスクール・ドローン教育事業や空中散布、人命捜索・災害支援・鳥獣対策などの事業を展開されている『合同会社シスルナベース』・代表取締役の浜洲充哉さん。そんな浜洲さんから、ドローンを軸にした事業を始められた背景を中心にお話を伺いました。
小さい頃からの夢を追いかけて
お父様が海上自衛隊のパイロットだったこともあり、高校まで全国を転々とされていた浜洲さん。
そんな浜洲さんが小さい時から思い描いていた夢が2つあったといいます。
一つ目はパイロットになること、
二つ目は宇宙飛行士になること。
その気持ちは変わらず、大学卒業後はお父様の背中を追い、海上自衛隊へ入隊されました。そして、数年間の教育研修を終え、ヘリコプターのパイロットとなったのです。
長崎の部隊に所属していた2016年春。
熊本震災が発生し、情報収集として被災地へ出動した際のことをお話してくださいました。
「阪神・淡路大震災や東日本大震災の教訓もあり、先輩たちから色々教わりながら支援に臨めました。」
「人命救助の際、ヘリコプターを飛ばすと、天候や空域の状況により、救助までの時間がかかってしまうことも目の当たりにしました。」
「その経験を活かし、現在ドローンを活用した人命救助にも取り組んでいます。許可申請もすぐできますし、低高度で飛ばせられるので、時間のロスを防ぐことができます。」
海上自衛隊のパイロットとして経験を積みながら、思い描いてきた道を進んでいた最中、突然の病魔が襲います。
それは目の病気でした。視力が低下し、パイロットとしての道を諦めざるを得なくなってしまったのです。
そんな時、JAXA(※1)が宇宙飛行士を募集することを知った浜洲さん。
“昔から夢だった宇宙飛行士に挑戦したい。”
最終的に合格はできなかったものの、宇宙飛行士選抜試験を受け、次のステージとしての道が見えてきたのだとか。
「実は、退職する数年前から趣味でドローンを操縦していました。飛躍しすぎるかもしれませんが、ドローンを使って宇宙に少しでも近づけるかもしれない。そう感じたんです。」
「大学時代を鹿児島で過ごしましたし、パイロットとしての配属のうち数年が鹿屋基地でした。鹿児島にはロケットが発射される種子島や内之浦(※2)もあります。だから、鹿屋を拠点に起業を決意しました。」
2022年。
「大隅半島をベースに地域から信頼されるヘリポートに」をビジョンに『合同会社シスルナベース』を設立し、新しいスタートを切ったのです。
(※1)宇宙航空研究開発機構のこと。宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行う組織。
(※2)鹿児島には「種子島宇宙センター」と「内之浦宇宙空間観測所」の2つがJAXAに関連する組織として挙げられる。
人との関わりから、想像しなかったモノを生み出す
「まずは、農家さんの声を聞くことから始めました。そこから、自分ごととして捉えるために、農業を始めることにしたんです。」
農家や関係機関に何度も足を運び、話を聞きながらコミュニケーションを積み重ね、同時に自身でも農業をしながら現状や課題を自分ごととして落とし込んでいく日々…。
そこから信頼関係が生まれ、ドローンを活用した農薬散布だったり、地域向けのドローンスクールなど、少しずつご縁を広げていったといいます。
「最初のお仕事は芋を栽培している畑に農薬散布する内容でした。頭ではわかっていても、仕事としての現場が初めてだったので、想像以上に時間がかかってしまいました。」
「クライアント様や農家さんたちからは“おかげで他の作業に専念できたよ”“ドローンって、どんどん進歩しているんだね”といった嬉しい言葉をいただいています。」
「ドローン自体の認知度がまだ低いと感じています。だからこそ、直接コミュニケーションをとりながら、重要性をお伝えするようにしています。そこから、ドローン以外のお仕事や関係性づくりにも繋がりました。たとえば、野菜の収穫のお手伝いなども依頼があるので、サポートに伺っています。」
「私も農業をしているので、少しでも農家さんの抱えている苦しみや悩みを自分ごととして共有できることは大きいです。そこから、ご提案できることもあるので、皆さんから教わることも多く、想像もしていなかった事業も生まれてきています。」
会社設立後は旧高須中を活用したパーク高須中に拠点を移し、活動の幅を広げています。
昨年はドローンフェスタを初開催し、子供たちや地域の人たちが多く集まったそうです。
さらに、海上自衛隊の経験も活かし、災害支援についても行政と連携しながら行っています。
「何をするにも地域の皆さんとの信頼関係やサポートが必要です。日常のコミュニケーションやイベントを通して、ドローンのこともですし、私たちが考えている理念や想いを共有できたらと思っています。」
「ドローンも技術が日々進歩しています。常に探求は欠かさず、社会や地域のニーズに応えながら、私たちだから・大隅半島を拠点にしているからこそできる事業をクリエイトしていきたいです。」
「私の夢だった宇宙飛行士に絡ませて、ドローンを活用して宇宙ステーションに農家さんの作物を届けられる仕組みを構築していきたいです。そのために、まずは目の前にある一つ一つの課題と向き合っていこうと思います。」
越境しながら、多くの人に感動と感謝されるものを
昨年から『大隅半島ノウフクコンソーシアム』の一員にもなった浜洲さん。初めて触れる福祉や農福連携(※3)は学びが多く、ドローンの新しい可能性も感じているのだとか。
最近は障がい福祉の利用者にドローンの技術を指導しながら、一緒に農業の課題解決ができないか模索中だそうです。
「ドローンは障がいの有無もですし、分野の壁なんてないと感じています。今まで関わる分野の皆さんと繋がりが持てたことで、新しい視点での取り組みもできそうで楽しみです。」
「ドローンに初めて触れる人たちの個性や能力を活かしながら、どのように関わってもらうか。そこについて考えることも増えてきて、新しい選択肢も増えてきました。」
他にもドローンを活用した鳥獣対策について、同業者や別のエリアの団体と検討を進めているといいます。
「ある地域では毎年恒例の地域行事でドローンを飛ばして、空撮するパフォーマンスから始めました。そこをファーストステップに認知していただき、鳥獣対策の仕組みが作れたらと模索しています。」
(※3)農業と福祉の連携。障がい者が農業分野での活躍を通じ、自信や生きがいを持って社会参画を実現していく取り組み。
最後に今後の展望について伺いました。
「会社名の“シスルナ”とは月と地球の間の空間を意味しています。その空間は科学や技術などに多大な恩恵をもたらすと言われているんです。そこを拠点にドローンだけでは終わらない、時代の変化に応じて、様々な事業を展開できたらという想いを込めました。」
「ありがたいことに最近は大学の講義や離島での防災訓練など、起業当初は想定もしていなかったところからの声かけもいただくようになりました。どんなフィールドに行っても、ビジネス視点ではなく、一人の人としてお話するようにしています。」
「一番大事にしているのは、関わった皆さんや地域に感謝していただき、さらに感動を与えられるような事業や活動を展開することです。そうなって初めて利益というカタチで返ってくると思っています。その気持ちは常に持ち続けていきたいです。」
屋号 | 合同会社シスルナベース |
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URL | |
住所 | 鹿児島県鹿屋市高須町1250(パーク高須中) |
備考 | ●ドローン教室について https://cislunarbase.com/school ●電話番号 070-9116-3307 ●営業日 平日9:00~18:00 ●問い合わせ先 |