【大阪】「庭」を楽しむ暮らしを。 グリーンスペース/辰己兄弟
読者の皆さんの中にも、「庭のあるお家に住みたい!」と思っている方は多いのではないだろうか。近年、関西でもグリーンのニーズは増えているというが、庭のある暮らしの魅力とは何なのか。大阪を拠点に活動する、庭づくり専門の会社「グリーンスペース」の代表であり造園家の辰己耕造さん、二朗さんにお話を伺った。
生まれも育ちも大阪の通称「辰己兄弟」は、もちろん実の兄弟。二人の地元では、小学校の頃はクラスの約7割が造園家の子どもだというほど、造園業は地場産業としてメジャーだった。家業の会社を引き継いだ当時は、ハウスメーカーから発注される外構工事の仕事が割合を占めていた。しかし、「お客さんの顔が見える仕事がしたい」という想いが強くなり、今から8年前に一念発起。庭づくりを専門に、直接受注する事業形態に切り替えた。
「庭とは、暮らしの中で四季の移ろいを身近に感じる時間を提供してくれる存在。毎日同じ庭を見ていても、その日だけすごくきれいに見える瞬間があります。また、木の葉が揺れると、『風が見えたり』もしますよね。そんなふうに、小さな気づきや発見ができて生活が楽しくなるような存在って必要だと思うんです」
「だからといって、庭は主役ではありません。生活の後ろにあって、豊かにしてくれる脇役。僕たちはそんな素敵な脇役をつくっていきたい」
家づくりの初期段階から関わり、庭空間を活かしたプランを建築家と共につくり上げることも多い。プランニングからデザイン、実際の庭づくりから管理・メンテナンスまで一貫して自分たちで行う。分業をせずに最初から最後まで、自らがお客さんと関わるのは彼らのこだわりである。
だが一方で、昨今、庭そのものが減少するという問題に直面している。
「元々都会は土地が狭いこともあり、庭になるべくスペースも駐車場などに取って代わられ、庭自体がどんどんなくなっているという現状があります。造園業界を盛り上げるために、庭の価値を見いだしてもらうにはどうしたらよいかを常に考えています」
2人が行っている活動のひとつに、2010年から主宰している「ニワプラス」がある。関西を中心として、庭や緑に関わる仕事をしている人たちが集まる会だ。同業者同士で競い合うのではなく、団結して庭の存在を守っていくことが目的。職人さん同士の情報交換の場としてだけではなく、新しいアイデアが生まれたり、各々の得意分野を活かした協力体制が築かれることも多い。
「トークイベントやワークショップには、庭に興味のある一般の方が参加されることも少なくありません。職人からするとルーティーンな庭づくりの行為も、一般の方から見ると新鮮で庭を楽しんでもらえるきっかけになることに、ある時気づいたんです」
二朗さんがガイドとなり、一般の方を募って不定期に行っている、庭めぐりツアー「じろーのワンダフル探庭団(たんていだん)」では、実際に関西の古庭園に足を運んで、庭を楽しんでもらう企画。子どもさんも一緒に参加できる。
「関西には、かなりいい庭が残っているんです。大阪で言えば、天王寺動物園の側にある慶沢園や岸和田城庭園(八陣の庭)などの古庭園などです。イベントでは、庭の歴史や由来に加えて、庭のデザインポイントなどをお伝えしています。例えば、カッコいい建物やカッコいい食器ってピンと来るのに、カッコいい庭って、漠然としたイメージしかないでしょう?庭を見るための視点を持つことで、おのずと庭への意識も変わってくると思うんです」
庭の未来を考える、2人のチャレンジは続きます。
屋号 | 株式会社グリーンスペース |
---|---|
URL | |
住所 | 大阪府八尾市郡川3-75 |
備考 |
|