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鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」

ショップ情報

2024.08.03

鎌倉市内にはいくつかの「まちの本屋」が息づいている。裏駅にある「たらば書房」や若宮大路沿いの大型書店「島森書店」など。それらと共存するさらに小さなまちの本屋たち。そのひとつが長谷にある「Books&Gallery海と本」だ。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
まちの小さな本屋である「海と本」

長谷駅という観光地のど真ん中で、しかも長谷寺の表参道に面しているにも関わらず、店の場所は分かりにくい。鎌倉では少し珍しい古いビルの一室で、入口が分かりにくいし、入ってもその後に長い階段を上がっていく。そうしてやっと店内にたどり着くと、そこには窓の外に長谷寺が見えるというまるでエアポケットのような清々しい空間が広がるのだ。

店主の鎌田さんは、この場所について「鎌倉R不動産のサイトを見ていたら、そこにこのビルが将来こんな風になったらいいなというコメントがあって、なんとなく共感して。背中を押されて借りてしまった」と笑いながら話してくれた。

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「海と本」店主の鎌田さん

物件の募集時のタイトルは「ジャンクとご利益」。ジャンクな雰囲気の雑居ビル感と、室内に入ると窓からの風も景色も心地よく、バルコニーもあるというのんびりとしたギャップがたまらない物件だった。室内はもともとは何の変哲もない事務所仕様の内装だったが、リフォームすれば光るものを感じた。自身が運営するウェブサイトの制作会社の事務所と、本屋を兼ねることは当初から決めていたが、内装をどうするか、どんな本を集めるかなど運営のことをいろいろと考えていたら開店まで1年かかってしまったのだが、鎌田さんにとっては、この物件の持つゆっくりした雰囲気もあって、その1年は焦りつつも穏やかな時間だったと振り返る。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
物件の募集時の写真。鎌倉でこういう古い雑居ビルは少し珍しい
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内装はシンプルに改装した。ドアも新しく造作している

「海と本」はある意味で兄弟で運営する店だ。きっかけとなったのは弟の遺した本棚だった。そう、実は鎌田さんは7年前に弟を病気で失くしている。衣類などは引き取ってくれる友人などが見つかって、最後に残ったのが弟の本棚。よく内容を見てみると、真面目な弟の性格もあるのか、小学生時代に大切にしていた漫画本から、つい最近の仕事に関する本(日本庭園をつくる庭師をしていたので、その関連書籍が多かったという)がそのまま遺されており、そこには弟の人生がそのまま表れているように感じたそうだ。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
鎌田さんがセレクトした本が並ぶ

そこで鎌田さんは、店をやるなら自分(兄)がライフワークとして続けてきたサーフィンと弟が大切にしてきた本をかけ合わせた店をやりたいと思ったという。こうして海と本が好きなひとのための本屋兼ギャラリー「海と本」は誕生した。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
基本的には、海にまつわる本がセレクトされている

鎌田さんのセレクトする本は主に海にまつわるものだ。セレクトするときには「この本なら弟も満足してくれそう」という基準で選んでいる部分があるかもしれない、と鎌田さん。セレクトする本は、写真集もあれば詩集、絵本など様々だ。出版不況と言われるご時世でも、手元に置いておきたくなる本をセレクトするようにしていて、例えば装丁が美しく、文章とあいまって「本」としての価値があるものを選ぶのだという。「本」はモノであるから、モノとしての佇まいがあるものが、結局人生の最後まで残るのだろうと鎌田さんは考えている。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
中には絵本もあり、懐かしい気持ちになれる

「海と本」には様々なひとがSNSなどを見てやってくる。分かりにくい場所なので、たぶんちゃんとリサーチして訪れるのだろうと思う。本を買うという行為は、なにかのきっかけがあったりするもので、それは人生の節目であることもある。もしくは、あとから振り返ったときに「ああ、あのときはこういう心境でこの本を買ったのだった」と思い返したりする。本という媒体は、文章の内容はもちろん、手触りや紙のにおい、重さなどによって記憶されることもあると思う。それが本来の「読書体験」というものなのだろう。

やってくるお客さんは、多くが鎌田さんと本の話から始まって最後には他愛ない雑談をして帰っていく。「以前海外の方が来てくれて、気づいたら4時間くらい盛り上がって話し込んだことがあった」と鎌田さん。仕事も年齢も国籍もバラバラの人たちがやってきて、店主とお客さんという一期一会の出会いで雑談をするというのは「店」をやることの醍醐味であり、とても心地いいことだと感じるそうだ。

鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
お店の窓の先には、長谷寺が見えている。
鎌倉市長谷|本屋兼ギャラリー「Books&Gallery海と本」
お店の入口は少し分かりにくい。そして少し急な階段を上がる

鎌田さんがこのビルの3階に最初の入居者としてやってきてから約3年が経ち、この度他の3区画もテナントが入り満室となった。ビル全体がワクワクするような過渡期にある今、鎌田さんは本屋をやりながら少しチャレンジした企画を進行中だとのこと。

ぜひ足を運び、鎌田さんとの会話も楽しみながら、本というものを通しての体験を味わってほしい。

名称

Books&Gallery海と本

業種

本屋・ギャラリー

URL

https://umi-to-hon.jp/

住所

鎌倉市長谷3-12-11 つたやビル3階

営業時間

日曜:12時〜17時/平日:13時〜17時

定休日

月・火・土

アクセス

江ノ島電鉄線「長谷駅」徒歩3分

備考

詳しい営業時間、営業内容等は店舗のInstagramをご確認ください。