鎌倉市小町|可愛いだけじゃない!ブレックファーストの店「EENY(イーニー) breakfast & shop」が目指すサステナブルな店づくり
地域のお店
鎌倉の鶴岡八幡宮への表参道としても知られる若宮大路から1本通りを入った、隠れ家的な場所にあるオールデイブレックファーストの店「EENY(イーニー) breakfast & shop」。2024年2月にオープンし、鎌倉の美味しい朝食の店としてはニューフェイスな店です。今回はお店を運営する「手描き結社WHW!」代表の吉田幸平さんにお話を聞きました。
出店の経緯を教えてください。
吉田さん:私たちは手描きコンテンツ、手描きグラフィックやカフェの看板などを作成するデザインの会社をやっています。手触りのあるコンテンツを生み出すことには自信があり、飲食業へのチャレンジはいつかはと思っていました。たまたま鎌倉R不動産のサイトで、この物件の募集を見て「よくわからないから、とりあえず見に行ってみよう」と、軽い気持ちで内見したのが出店を決めたきっかけです。
この物件の印象はどうでしたか?
吉田さん:昭和の住宅でとにかく変わった造りだなと思いました。2~3階部分は完全に住宅仕様で、間取りも細かく分かれており、和室なんかがありました。3階はロフトみたいで、すごく急こう配の階段がついていましたね。入口も若宮大路側にはなくて回り込む感じで入るんです。でも、ところどころ昭和っぽいガラスブロックが可愛かったり、そもそも構造が木造ではなく鉄骨造だったりと自由度が高そうで、リノベーションしたときのことを想像してワクワクしました。
とはいえ、設計の方に相談した上でできないことも多くありましたし、住宅から店舗へのリノベーションは人から聞いていた以上に大変でした。内装工事にかけられる資金はもちろん限られているので、まずは店舗として利用する面積を抑える工夫をしました。そして、自分たちでDIYできる工事は、積極的に参加しました。店舗の床に貼ったテラコッタは実はスタッフみんなで貼ったもの。とても愛着があります。
最初の工事で手を付けなかった部分は、解体工事までは終わらせて、ポリカーボネート板の簡易的な壁を造るにとどめました。結果として、自然光は遮らず店内に入ってくるし、未完成感があって「いつかは着手するぞ」というモチベーション維持につながっています。そして現在この未着手の部屋は、イベントで使う物品やお店で出る生ごみを処理するためのコンポストなどを置いて活用しています。
お店をはじめる時のコンセプトはどうやって決まったのですか?
吉田さん:そもそも、まったく異業種の私たちが飲食店をやると決めたとき、可愛くてたぶん美味しい店はできると考えていました。そこに、飲食店としてなにか付加価値としてできることはないか、と思っていたときにベトナムに視察に行く機会があったんです。ベトナムでは同じ飲食店としてサステナブルな取り組みを実施している「Pizza 4P’s」を視察しました。
「Pizza 4P’s」は、最近日本初上陸(麻布台ヒルズに出店)を果たした飲食店です。「廃棄を出さずに資源として活用し続ける仕組みづくり」をレストランビジネスとして導入しているピザレストランで、ベトナム・ホーチミンに1号店があり、アジアを中心に32店舗ほどを展開しています。フードロスの問題への取り組みや、資源を循環させる仕組みづくりなどを積極的に行っており、また訪れるお客様に対して、自分たちの取り組みを見せる仕組みがあることが印象的でした。
「サーキュラーエコノミー」が日本でも注目される中で、この視察はとても有意義なもので、ぜひ取り入れたいし、スタッフにも全員にこの取り組みを伝えたいなと思いました。でも、さすがにみんなをベトナムに連れていくことは出来なかったので、国内でリサイクルに積極的に取り組む自治体のひとつとして徳島県上勝町へ視察に行きました。全国平均の約4倍と言われるゴミのリサイクル率80%を達成した自治体として、実際に見に行ったらとても勉強になりました。
お店の取り組みとしては、まずオープンしてからこの半年間で一度も生ごみを廃棄していません。コンポストを設置し、生ごみは全てそこで処理しています。最近は微生物型よりも分解速度が早いみみずを使ったコンポストも導入し、その成果を観察中です。また、コンポストを利用していると、その他のごみを捨てる際にもリサイクルに対する意識が高くなります。スタッフみんなで協力して、極力ごみを出さない営業に取り組んでいます。
お店の雰囲気はとても可愛いのですが、かなり骨太な取り組みですね。
吉田さん:まさにそうですね。今後はコンポストでできた栄養分が高い土を使ってプランターで野菜を育てることにもチャレンジしたいと思っています。また、コンポストに興味がある人には実際に見てもらえるような仕組みも作りたいですね。お店に興味を持っていただいている方は「可愛い、美味しい」というところから、入口のハードルは低くなっていると思うので、そこからさらに私たちの活動に興味を持ってもらえたら嬉しいなと思います。
お店のメニューは、どうやって決まったのですか?
吉田さん:メニューは、スタッフの冨士枝が中心となってコンセプトや店名を決める際に話し合って決めました。まずはスタッフそれぞれが好きと思うお店をピックアップして、それらに共通することが「いろいろ選べる」ということだったんです。そこから自由に組み合わせを選んでプレートを作る、いまのメニューが誕生しました。お店の名前は英語の数え歌「eeny meeny miny moe!(日本のどれにしようかな~に似ている数え歌です)」から取りました。
組み合わせもそうですが、食事の量もS、M、Lとサイズを選べるようにしています。これは、フードロスをなくす取り組みにもつながっていて、お客様は自分が食べられる量をオーダーしてくれるので、ほとんど残さないでお召し上がりいただけるんです。そして、朝食を当店で召し上がっていただいた後に、もしかしたら他のお店でランチを食べるかもしれない。おなかの具合に合わせて自分で決められるから、鎌倉のいろいろな店を巡ってもらうことにもつながると思っています。
なるほど、ちなみにオーダーシートはお客様が自分で手書きするスタイルですね。
吉田さん:そうですね。私たちは手触り感のあるコンテンツを作る集団なので、そこにはこだわりました。最初はスマホでのオーダーも検討しましたし、紙のゴミがでるのでは?という声がスタッフから上がりましたが、紙もしっかりと分別すればリサイクルできるので、このスタイルに収まりました。お客様はみなさんメニュー表とにらめっこして「どれにしよ~。選べないよ~」と楽しんでくれているので、こちらも楽しくなりますね。
各イベントへの出店にも積極的ですね。
吉田さん:はい。今年はすでに「森、道、市場」に出店させていただき、藤沢駅前の「藤沢夜市」にも出店しました。
イベントでは、リターナブル食器を活用していて、お皿もカトラリー類も捨てずに回収して洗って使い回せるようにしています。洗うという手間はかかりますが、エコですし、イベント用に一度買いそろえれば、その後もずっと使えるから効率的なんです。野外のイベントでは皿洗いは水を使うので大変なのですが、それを解消したのが「米ぬか」を使った洗い物です。戻ってきたお皿に米ぬかを塗ると、油等を吸い取ってサラサラの状態にしてくれます。その後はアルコール消毒をしているので衛生面でも問題ありません。米ぬかはお米屋さんに行ったらタダでもらえました。本来捨てられてしまうものを活用できるのもいいですね。ちなみに、この洗い物の方法は、昔ながらの日本の生活の知恵でもあります。みなさんも、よかったらキャンプのときなどに真似してみてください。
お店はポップで可愛くて、食事も美味しくて楽しい。そして、サステナブルな取り組みをコンセプトとして導入し、地域や地球環境への貢献も積極的に行うという意気込みを感じるお店。オリジナルグッズの店頭販売はこのお店だけなので、それを目当てに来てくれる方も大歓迎!お店でイベントを行うこともありますので、ぜひInstagramで確認して訪れてみてください。
名称 | 「EENY(イーニー) breakfast & shop」 |
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業種 | 飲食店(オールデイブレックファースト)・オリジナルグッズ販売 |
URL | |
住所 | 鎌倉市小町2丁目15−6 石渡ビル2階 |
営業時間 | 8時-17時(L.O.16時) |
定休日 | 火曜 |
アクセス | JR横須賀線・江ノ島電鉄線「鎌倉駅」より徒歩4分 |
備考 | イベントなどの詳細については、お店のInstagramからご確認ください。 |