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【連載】 変わらない山形(1)/ ニジマス釣りに行ってみた

連載

2024.08.09

訪れるたび、山形の人に「何か変わったことは?」と聞けば、いつも「特に変わっていない」と肩すかし。最近は、それこそが山形の良さ、なのかなぁと思い始めています。

【連載】 変わらない山形(1)/ ニジマス釣りに行ってみた

現在の父母宅がまだ祖父母宅の頃、子どもだった私はよく親に連れられて、お盆を過ごしに山形に来ていました。山形には、そんな子ども時代とリンクして思い出される場所があります。私にとって山形の夏と言えば、ここ。新山釣堀です。

周りには緑のほかに何もない、山あいののどかなロケーション。久しぶりの訪問でしたが以前と同じく、昭和から時が止まったかのような、ひなびた風情がたまりません。糸と針だけのシンプルな釣り竿と練り餌が用意され、池の中にニジマスがうようよ見えます。糸を垂らせば、まさに入れ食い状態で、小さな子どもでも簡単に釣り上げられるはず。

釣った魚は全買い取りとなり、値段は重さで決まります。別料金で下処理や調理もしてもらえるので、わが家の場合は人数分のニジマスを釣り、塩焼きにして持ち帰るのがお決まりのパターン。釣りをしないで、食事だけ楽しむこともできます。定食や一品料理のニジマスは塩焼きのほか、刺身、フライ、田楽なども。しかも料金表を見る限り、釣りをして持ち帰るよりかなり安い値段で提供されているようです。

さて、釣ったあと、塩焼きにしてもらう間は、この食堂でしばし待つことに。昔ながらの畳敷きの席で適当に座布団を敷いて、セルフの冷水機からコップに注いだキンキンのお冷やをいただき、ホッとひと息。窓の外からは蝉の声と川のせせらぎが聞こえてきます。海外暮らしが長いせいか、こうした日本の田舎らしい情緒にぐっと来ます。

「昔植えた木がこんなに大きくなって…」
一緒にいた父が感慨深そうにつぶやいています。ちょうど川沿いに植樹された頃、ここに来たことを覚えていました。
「そう言えば、この釣堀っていつからあるの?」
「子どもの頃からあるなぁ」
「え!?」
古いとは思っていましたが、そんなにも昔から?

出来上がった塩焼きを受け取りながら、早速尋ねてみました。
「ここはいつから営業しているんですか?」
やや間があって、
「たしか昭和37年だね」
とのこと。
事情があって現在は休業中ですが、宿泊施設や宴会場が隣接し、立派な庭園も整備されているので、最盛期はさぞにぎやかだったのでは。この日は終了間際ということもあってか、私たちのほかに客は見当たりません。

昨今の若者の昭和レトロブームに乗っかるとか、日本のローカル色を求めるインバウンドの海外客をターゲットにするとか、もっと商売っ気を出していいかもしれないのに。良いのか悪いのか、やっぱり変わらないのが新山釣堀。新鮮なニジマスの塩焼きは、今回も絶品でした。

【連載】 変わらない山形(1)/ ニジマス釣りに行ってみた