【鹿児島県日置市】全ての人が、自分らしく生活を送れるような地域社会の未来を / 地域交流・活性拠点 ひよし吉日
地域の情報
2023年9月にオープンした日置市日吉町の『地域交流・活性拠点 ひよし吉日』。「食×モノ×体験」で日置や福祉の魅力を発信する複合コミュニティ施設として社会福祉法人日置福祉会が運営しています。今回はオープン1周年を迎えるにあたり、このプロジェクトが立ち上がった背景や“福祉×地域”といった関わりを通して見えてきた福祉の可能性等について伺いました。
障がい福祉と地域の縁づくりを
まずは社会福祉法人日置福祉会(以下:日置福祉会)理事長の東正樹さんに今までの変遷を伺いました。
2000年に障がい福祉を軸とした日置福祉会を設立し、
・“働く”をサポートする「就労継続支援事業」
・“楽しむ”をサポートする「生活介護事業」
・“暮らす”をサポートする「共同生活支援事業(グループホーム)」
といった3つの事業を展開してきました。
そのなかで大切にしてきたこと。それは“地縁づくり”だといいます。
法人内だけで完結するのではなく、地域行事に参加したり、公的施設に足を運ぶなどして、利用者(障がい福祉サービスを受けている人)と地域、福祉と地域という関係性を紡いできたのだとか。
「私たちの役割の一つとして、利用者さんと地域の縁を紡ぐことが挙げられます。法人を立ち上げて24年経ちますが、地域の皆さんが温かく見守ってくれていると感じています。」
「利用者さんが地域へ散歩に出かけていると住民の方が声をかけるシーンを目にしますし、中には一人ひとりの名前や性格を把握されている方もいらっしゃいます。まるで地域全体が家族のように感じる環境で事業ができていることはありがたいです。」
日置発、の面白いことをもっともっと増やす
“今まで以上に社会と福祉が密接に関わっていくようにしたい。これまでの福祉のあり方を変えていきたい。”
次第に芽生えてきた東さんの想いと、地域の活性化と地域コミュニティの希薄化といった近年課題視されている点が重なり、2023年9月に公益事業として『地域交流・活性拠点ひよし吉日』(以下:ひよし吉日)をオープンさせました。
「日置発、の面白いことをもっともっと増やす!」をビジョンに掲げ、食・モノ・体験の3つの分野で福祉を身近に感じてもらうコンテンツが用意されています。
1つ目のコンテンツは「食」(喫茶室)。
日置市内・鹿児島県内の食材を中心としたイートインコーナーになります。日置福祉会が利用者と毎年作っているお米を使用したおむすびや、スイーツ、ドリンクなどが楽しめます。
2つ目は「モノ」(吉日ファーム・吉日マーケット)。
吉日ファームでは施設内の一角に無人販売形式で生産者が作った野菜・果物・鮮花が販売されています。農家だけでなく、家庭菜園規模の個人の野菜も販売できるのだとか。野菜を作った人と喫茶室のお客さんが会話をするシーンもあり、新しい繋がりのきっかけにもなっているそうです。
吉日マーケットはmade in 日置・鹿児島の“よかもん”を取り揃えたセレクトショップです。それぞれの商品や日置市内・鹿児島県内の企業の魅力を認知してもらうきっかけにもなっています。
さらに、日置福祉会の利用者がデザインしたハンカチやタンブラーなどのアイテムも並びます。「これ、可愛い!」と何気なく手に取ったアイテムから、作り手のことを知ってもらう…。そうすることで、福祉を身近に感じてもらう動線にもなっているそうです。
3つ目は「体験」(吉日企画部)。
こちらでは地域の活性化に繋がるイベントを企画運営しています。主催だけでなく、日置や鹿児島の事業所等の課題に応じて共同企画を提案したり、ワークショップやビジネスシーンで空間を貸し出すシェアスペースも運営。交流を深める場となっています。
たとえば、ヨガインストラクターによるレッスン体験や老舗茶屋による日本茶の座学教室、日置のモノ・コト・ヒトが交差するプレゼンイベントを過去に開催。「こんなイベント面白そう」「いつかやりたいと思ってた!」ことを実現させるアシストを行っています。持ち込み企画の募集要項は自由なのだとか。ひよし吉日と企画者がタイアップすることで「あんなことをやってみたい」「これは面白そうだ」を実現するお手伝いをしています。
「支援をする/支援を受ける」立場に捉われず、できることをともに探求する
「全ての人が、自分らしく生活を送ること」
それが日置福祉会の考える「社会福祉」だといいます。
どんな特性があろうがなかろうが「支援をする/支援を受ける」立場で終わらせず、ともに生活を送る地域住民の一人として、今の自分たちにできることを探求する姿勢が空間に散りばめられます。
それを表すことの一つがプロジェクトメンバーの構成です。
福祉の現場に従事してきたスタッフもいれば、福祉の経験がない新卒のスタッフ、別の業種で従事してきたスタッフ、そして、日置福祉会の利用者など様々…。
あらゆるマイノリティに捉われないフラットかつ自由な空間で、地域社会の未来作りを目指しているといいます。
利用者のAさんは週に2~3回、喫茶室で配膳や厨房業務を担当しています。とくに、メニューの説明をした際に、お客さんのリアクションを見ると嬉しい気持ちになるのだとか。
「オープン当初は慌ててしまい、失敗することも多かったです。次第に接客にも慣れてきて、冷静に対応できるようになりました。」
「先日、親戚がランチに来てくれて働いている様子を見てもらえたのは嬉しかったです。できないことがまだまだあるので、少しずつ覚えていきたいです。」
プロジェクトメンバーの河野さんと玉利さん。
河野さんは大学でデザインを学び、新卒で。
玉利さんは大学で福祉を学び、プロジェクト立ち上げのタイミングでサブリーダーに、とそれぞれ背景が違います。
お二人は、この1年で今までと違った環境に携わることで何を感じたのでしょうか?
「大学卒業後は、別業種に勤めようと思っていました。恩師の薦めでこのプロジェクトを知り“福祉の世界に触れたことがないけど面白そう!”と感じたんです。」(河野さん)
「僕はずっと障がい福祉の就労支援B型事業に関わってきました。それまで福祉業務以外の経験がなかったので、プロジェクトに声がかかった時は新鮮な気持ちでした。」(玉利さん)
「この空間で働いているメンバーや関係者、お客様が楽しく過ごせることを意識しています。地域の皆さんとも直接的な接点が増えたので、関係性が深まってきたと感じています。」(玉利さん)
「もっとお客様や地域との交流の場を開けた場にできるように模索中です。ひよし吉日を訪れた人が、この場所だけではなく、ひよし吉日という空間、ひよし吉日のメンバー一人ひとりのファンになってもらえるように試行錯誤したいと思います。」(河野さん)
“自分らしく”が詰まった新しい福祉のあり方
ディレクターとして携わっている東りなさん。
オープンしてから1年が経ち、プロジェクトの手応えをこのように話します。
「利用者さんの能力を発揮でき、それを地域の皆さんに実際に体感していただく機会が増えたと感じています。“福祉”というワードは時としてネガティブな印象を持たれがちですが、このひよし吉日を通じて、福祉を身近に感じていただくことで、そのイメージを少しでも払拭するきっかけに貢献できたと思っています。」
「今まで違った役割を担うことで、近い存在である私たちも気づかなかった利用者さんの新しい一面を知ることが増えました。私たちも含め、もっと違う場面でも活躍できる機会を作っていきたい。そんなワクワクも感じています。」
「嬉しいことに幅広い年齢層の方や地域の方が気軽に施設内に入ってくださる機会も増えてきてありがたい気持ちでいっぱいです。この1年間で培ったノウハウを活かし、皆さんのお力を借りながら、想像もしていなかった空間作りに励みたいです。」
地域のコミュニティ施設として、様々なニーズに合わせて自由に空間を楽しんでもらいたい。
年齢・性別・障がいの有無…あらゆる特性を越えた多様な人々が集まることで、縁と縁を繋いでいきたい。
それが『ひよし吉日』の願いであり、目指すべき未来だといいます。
そんな未来を実現する道のりは遥かに難しく大変なことですし、だからこそのやりがいや楽しさがあるのだと思います。
ともに耳を傾け、悩み、前へ。
その先に新しい福祉のあり方があると信じ、日置や福祉の魅力を発信し続けるこの場所へ、ぜひ一度足をお運びください。
そこには様々な「自分らしく」が詰まった空間が待っています。
屋号 | 地域交流・活性拠点 ひよし吉日 |
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URL | |
住所 | 鹿児島県日置市日吉町日置3511-3 |
備考 | ●インスタグラム https://www.instagram.com/h_kichijitsu/ ●電話番号 080-2576-7685 ●営業時間 open 10:00 close 16:00 ●定休日 火曜日・金曜日・不定休 ●駐車場 約20台 Googleマップで見る ●運営:社会福祉法人日置福祉会 HP インスタグラム |