【金沢】「発酵文化芸術祭 金沢 ーみえないものを感じる旅へー」開催中!/総合プロデューサー・小倉ヒラクさんインタビュー
インタビュー
現在「金沢市21美術館 プロジェクト工房」をチェックイン拠点として、金沢市内の4エリア+白山市鶴来エリアの計5エリアで開催されている「発酵文化芸術祭 金沢」。アートと発酵文化をまち歩きでつなぐ、新たなスタイルの芸術祭です。
実は「金沢R不動産/ENN」もまちづくり事業メンバーとして参画させていただいています。ということで今回は身内メリット(?)を活かし、総合プロデューサーの小倉ヒラクさんのインタビューをご紹介!「発酵文化祭 金沢」については、連載的にご紹介していけたらいいなと思ってます。乞うご期待、
「発酵」×「芸術祭」×「ツーリズム」?
ーー今回「発酵文化芸術祭」という、なかなか見慣れない文字並びの芸術祭だと思うのですが、開催の経緯を教えてください。
小倉:まず僕自身が2019年から「発酵」をテーマとした新しいローカルツーリズムの構想を考えていて、2022年には福井の「金津創作の森」で、北陸三県を舞台とした「発酵ツーリズムほくりく」を開催しました。その時に今回の展覧会場となっている金沢市の大野エリアも舞台となっていました。
小倉:そして翌年の2023年に、金沢21世紀美術館さんから美術館20周年記念の催しとして「発酵とツーリズム、そして芸術祭を合体させた企画ができないか」とお声がけをいただいたんです。それまで僕がやっていたことは「発酵にまつわる展示をして蔵巡りをする」というスタイルでしたから「アート」要素はなかったので、僕にとっても初めての試みとなりました。
「発酵」が与える、豊かなインスピレーション
ーー「発酵」を「アート」にする。ご自身でも初めての試みだったとのことですが、直感的にどう感じましたか?
小倉:それができたなら絶対面白いし、カタチになるだろうなという漠然とした直感はありました。僕自身がアートに関係する仕事をしたことはなかったけれど、「発酵」まわりにはなぜかアーティストが多いんですよ。発酵デパートメントのお客さんしかり、僕の友人知人しかり、みんな「発酵」に興味を持って集まってきている。それは多分、発酵というものがさまざまなインスピレーションを与えてくれるからではないのかなと。
とはいえ僕はアートのキュレーターではないので、作品のキュレーションは友人であり発酵メディア研究者でもあるドミニク・チェンさんにお願いしました。
「客体」と「主体」が解けてしまって
空間全体がアートにみえてくる
ーー当初の「直感」は当たりましたか?
小倉:予想以上でしたね。アーティストの皆さんがここまで各醸造蔵の方々と協同して、地域に入り込んでくれるとは。現地で感じた様々な要素を、素晴らしいアウトプットとして作品化してくれました。
僕はドミニクさんとは長年の友人だけれど、今回彼の展示には彼の思想がよく現れているなと。アーティストの「自己表現」としての作品ではなく、「客体」と「主体」が溶けてしまっているというか。まるで作品がずっと昔からここにあったかのような、というかもはやどれが作品がわからなくなるうな作品も。でもそうやって「これはなんなんだろう」と思って眺めているうちに、蔵や空間全体がアートに見えてくる。これはどの作品にも共通している現象です。
土地の記憶、みえないレイヤー、個人の心象風景
小倉:その土地で暮らす人々の記憶、目には見えない感覚やレイヤーが、アート作品という媒介を通して現れてくる。そしてその作品に自分が一体化していくーー‥。
僕も個人的に友人たちをアテンドしているけれど、なぜかみんな「懐かしい気持ちになった」って言うんですよね。自分の過去の記憶や心象風景に入っていくような、そんな不思議な感覚がある。そんな実に独特な体験ができる芸術祭だと思います。
「まちづくり」なくして「発酵文化の継承」はない
ーーそして今回私たち「金沢R不動産/ENN」が実行委員として参画させていただいているように「ツーリズム≒まちづくり」の視点が入っているところも特筆すべき点だと思います。「まちづくり」と「発酵」ってちょっと遠いように感じますが。
小倉:むしろ僕は「まちづくり」のためにやっています。一口にまちづくりと言ってもいろんな文脈や手法がありますが、僕が使命を感じているのは「産業におけるまちづくり」なんですよね。「発酵」という産業があって、それがちゃんと継承されていく。それを守るためには「まちづくり」に着手する他ないんです。
小倉:醸造業が、その街で事業を続けていくためには、建築的な問題や、コミュニティ的な問題、農業や一次産業に関わる問題、世代継承ー‥様々な課題がたくさんあります。それはいわゆる「ビジネスコンサル」とか「デザインコンサル」というものでは解決できなくて、もっと地域全体のことを考えていかなければいけないのだということに、僕は早くに気づきました。まちづくりをすることなく「発酵文化の継承」はないんです。
だから僕が続けてきた「発酵ツーリズム」の主目的はいつも「まちづくり」です。「金沢R不動産/ENN」代表の小津さんが興味を持ってくれたのも、僕がやっていることは発酵をテーマとしたエリアデベロップメントだからじゃないのかな。
作品をコンプリートすることを目的にしなくていい
ーーそれでは最後に、これから「発酵文化芸術祭 金沢」を訪れる方にメッセージをお願いします。
小倉:ゆっくり泊まりできて欲しいかな。それに尽きるかも。あと、作品をコンプリートすることを目的としなくていいんですよ。来場者に聞いていると、だいたいみんな半日かけて2会場しか巡れなかったとか。会場の周りのお店が気になって買い物したり、展示会場で出会った人と話し込んじゃったり、あと街を散歩してたら時間経ってた〜とかね。そういうゆるい芸術祭があってもいいんじゃないかな。
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金沢R不動産/ENNでは、ガイドブックの制作も担当しました。ダブル表紙仕様となっていて、表から読めば芸術祭のガイド、裏から読めばまち歩きに役立つ雑誌風担ってます。ぜひガイドブック片手に、街との出会いをお楽しみください!
日時 | 2024年9月21日(土) -12月8日(日) |
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会場 | 【チェックイン&発酵文化展示】 金沢21世紀美術館 プロジェクト工房(入場無料) |
料金 | 一般 2,000円 / 大学生1,500円 / 小中高生 800円( ガイドブック付き) / 未就学児無料 |
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