木造の元学生寮に一目惚れ 関大裏のご飯屋さん onishisantoko
体に優しいランチやお弁当を提供する飲食店
関西大学の裏手の住宅街に現れる、シュロの木が印象的な木造の元学生寮。当時の趣を感じる「ゆにわ荘」という屋号が残る玄関に、onishisantoko(オオニシサントコ)の暖簾がかかっている。店主の大西文佳さんに、物件に一目惚れしてお店を始めることになった経緯を伺ってきた。
当時、福祉関係の仕事をしていたという大西さん。スマホで偶然見つけた元学生寮の物件情報にビビッときたそう。「物件に一目惚れしてしまい、すぐ主人に連絡して見学しに行きました。建物に入った瞬間イメージが広がって、ここでお店をやりたい!と思いました」
その物件は職住一体をコンセプトに計画されていた。2階はすぐに住めるような住居仕様であるものの、1階はかなり手を加えないと使えない木造のスケルトン状態。正直、引いてしまう人も多いと思うが、元学生寮であるが故の特徴的な外観と木造建築の趣、そしてシンボルツリーになりそうなシュロの木からイメージが広がったそう。
飲食店で働かれた経験はあったものの、すぐに自分のお店を始める予定はなかった大西さんだが、物件との出会いをきっかけに夢が膨らんだ。「本当に無知なままに物件を決めて、今思うとようやったな、と思います」と笑って話してくれた。
「元々たくさんの学生が住んでいた建物なのでまた人が集まる場所になってほしい、というオーナーさんの気持ちも素敵だなぁと思い、私が良い場所にしたい!と勝手な使命感を持ちました。」
一目惚れで決めたという物件に、実際入居されてからの印象は変わったのだろうか。
「窓が多く光がよく入り、お客さんにも居心地良いと言っていただけています。2階に住む私たちは、木造なので暑い寒いは最初はありましたが、工夫しながら暮らすうちにどんどん心地の良い場所になっています」
店を始めたことで人との繋がりがどんどん増え、建物がご縁を運んできてくれていると感じる、という大西さん。そんな感覚を持てることが素敵だと思う。印象的な人との出会いを尋ねると、
「学生の時にここで生活していました、という50〜60代の方が何人か来てくださったんです!中には仲間から聞きつけて神奈川県から訪れてくれた方もいらっしゃいました。4畳くらいの狭い部屋だったので荷物の整理が大変だった、などと学生寮時代の生活の様子も聞かせていただいて。そういうお話を聞くと建物に対してこのままで残っていてくれてありがとうございます、という気持ちになります」
季節の食材を使い、調味料にもこだわり、体に優しいご飯を提供しているonishisantoko。この日のランチメニューは鶏胸肉の唐揚げ・カボチャとひじきの煮物・カレー味の煮卵等々。
お店には、自転車圏内の主婦層のお客さんがよく訪れてくれているという。コロナ禍をきっかけに始めたお弁当は宅配も行っていて、小さい子どもがいてなかなか外食できない方や、家での集まりがある時に重宝されている。近所にこんなに美味しいお弁当を買える場所があるのは、大変羨ましい。
尚、onishisantokoではランチとお弁当の提供以外にも、ベビーマッサージのような子育てに関するワークショップや、食や身体にまつわる講座等、毎月気になるイベントがたくさん行われている。敷地内には予約制で利用できる駐車場もあるので、遠方だから…と思わず一度訪れてみてほしい。
元学生寮を、今に沿った形で人が集まる場所につくりあげた大西さん。これからも長くこの場所を育んでくれるといいなと思う。