【鹿児島・甑島】“生きるように働く”とは?島暮らしで見出したコミュニケーションを通した自分の役割。 / 東シナ海の小さな島ブランド社 平川千尋さん
インタビュー
鹿児島の離島・甑島(こしきしま)にある『東シナ海の小さな島ブランド社』は、地域固有の生活文化や環境を活かすことをサービス原点とし、ひとものことを創造する離島地域のリーディングカンパニーを目指しています。今回、そこを舞台にはたらく社員に対し「島で生きる」をテーマにインタビューを行いました。続いては、山下商店甑島本店の平川千尋さんです。
日々のコミュニケーションを大事に
霧島市出身の千尋さん。高校卒業後は鹿児島の大学にて保健体育を専修し、部活に明け暮れる日々だったといいます。就職は県内の民間企業に営業職として就職しました。毎日のように地図を片手に様々な企業を訪問し、コミュニケーションを重ねたそうです。その中で、初めて成約した際のエピソードを教えてくれました。
「毎月挨拶に伺っていたある企業の担当者の方から契約の相談があったんです。ただ、そのためにはその企業内でクリアしないといけない壁がいくつもありました。その担当者の方は契約に結びつけるために、あらゆる視点で提案してくださり、そのおかげで初めて成約できたんです。」
「成約後、“平川くんが毎月ちゃんと顔を出してくれるから君にお願いしたい、契約したいと思ったんだよ”と担当者の方が言葉をかけてくださり、感動して涙を流したのを今でも覚えています。」
普段から顔を合わせ、信頼関係を重ねてきた人たちにとって提案したモノが役に立ち、喜んでもらえるか。
当時、それを営業職として働く中で意識していたのだとか。しかし、時が経つにつれ、千尋さんの中で葛藤が生まれてしまうのです。
“このまま営業職として働いたとして、将来の自分はどうなっているんだろうか?”頑張れば将来的に役職につけるかもしれない。でも、その未来って楽しいものなのかな?”
そんな時、パートナーと一緒に甑島へ観光に行くことに。それが今働くアイランドカンパニー・代表の山下賢太氏との出会いにつながったのです。
「コシキテラスで食事をしていたら、運良く賢太さんとお会いでき、悩みを聞いてもらいました。ちょうどオソノベーカリーの改修が翌日あったので、誘っていただき遊びに行くと、滞在中に賢太さんから“もうウチで働けばいいじゃん”と冗談っぽく言われて。」
オソノベーカリーからすぐ見える海の景色を見ていると懐かしい気持ちになったといいます。本土に戻ると、パートナーとも話し合い、甑島へ移住することを決意。
お礼の手紙とそれぞれの履歴書、そして、二人の履歴書を山下氏宛てへ送り、翌年からアイランドカンパニーの一員に加わることになります。
生きるように働く
“生きるように働く。”
甑島へ移住し、山下氏と話す中でずっと心の中に残っている言葉だそうです。それまで資本主義経済の中で、日々必死に働き、生きてきた千尋さんにとって心を突き動かすものを感じたのだとか。
「転職する前は“もし企業の肩書きを失ったら僕個人のスキルを頼ってくれる人はいるのだろうか?“という不安があったんです。でも、賢太さんの言葉を聞いた瞬間、”その生き方っていいな“と思いました。」
「お金を稼ぐためだけに働くのではない。日々を生き、その暮らしの中で自然とやってきていることが仕事にもなり、そこで生まれる関係性が暮らしの中にも結びつき、さらにそれが誰かにとっての喜びになるかもしれない。まだそれは体現できていませんが、本当の自分を生きるだけで生きていけるという状態を目指していきたい。そう思っています。」
現在、千尋さんの業務の一つとして島内の行商があります。週に数回、上甑・中甑を中心に各集落を回りながら、自社製造したお豆腐やパン、そして生活必需品などを販売して回っています。
行商では前職でも大事にしていた顔の見えるコミュニケーションをしっかりとれるのが一つの喜びなのだとか。
「行商を重ねていると、一人ひとりのお客様が毎回購入する商品だったり、習慣、困りごとがわかってきます。お話しながら“このお客様はこうすれば喜んでくださる”とカスタマイズして接客できるので、やりがいのある仕事だと感じています。」
「店舗やホステル勤務では出会えない島内のお客様も多いです。そこで信頼が生まれて、お客様によってはさりげなく差し入れをしてくださったり、次回来る際に欲しいものを依頼されたり、僕が何気なく話した会話の内容を覚えててくださったりすることもあります。まさに“生きるように働く”に近い感覚につながっている気がしています。」
「逆に僕は僕なりにできることを手の届く範囲でお客様に対してケアができたらと思っています。たとえば、顔色の様子がおかしいと感じたら声かけをしたり、お豆腐の形に好みがあるお客様がいたらそれに応じたお豆腐をオススメするとか。」
今の僕だからできる役割
行商以外の時間は各事業部のサポートに入っているという千尋さん。他の社員が繁忙なタイミングで入ることも多く、その中における役割など気づくことも多いといいます。
「まだまだ力不足ではありますが、一緒に働く一人ひとりが力を最大限に発揮できるようなサポートがしたいです。たとえば、ある一人が苦手な部分を僕が補うことによって、得意な部分だけに専念できるとか。その先に一人ひとりが輝く瞬間づくりにも繋がると思っていて。」
千尋さんの好きな言葉の一つが「縁の下の力持ち」。自身の生き方や在り方を象徴しており、それが生きていく上で見出した役割だと認識するようになったのだとか。さらに、続けてこのようにも話します。
「お客様だけでなく、暮らす・働くといった周囲の人たち一人ひとりとも自然と向き合うようになったのは一つの変化かもしれません。補う役割が多いので、僕自身の特化している部分を見つけ、どう高めていくかは課題ですが…。」
自身の力不足を感じる…。
自分の特化した強みが見つからない…。
まだまだ納得できる領域に辿り着けていないと話す千尋さん。最後に今の千尋さんだからこそ思い描く未来像について教えてもらいました。
「普段行商で島内を回っている僕だからこそ、アイランドカンパニーのことを認知していない方にアプローチして、他の社員では手の届かないところでファンを増やせるのではないかと思っています。そのためには日々の丁寧なコミュニケーションが不可欠なので、行商は今のスタイルを維持しながら、甑島全土を定期的に訪問できるように今後はしていきたいです。」
「島での暮らし・働く=のんびり、というイメージが世の中的には多いかもしれません。でも、実際には大変なことも多いです。ただ、ずっとその状況が続くと、僕ら世代や下の世代の人たちが働きたいと思える環境ではなくなってしまう気がします。」
「ありがたいことに気持ち的には毎日楽しく過ごせています。その中で他の社員とは違った動き方をしている僕の視点でできることがもっとあるはずです。各事業や社員それぞれの強みや弱みをもっと分析して、それらを活かしながら、島内外からもっと愛される会社になれる一端を担えるようになれたら嬉しいです。」
そんなアイランドカンパニーでは一緒にはたらく仲間を募集しています。興味がある方は以下のアイランドカンパニーHP「お問い合わせ」からご連絡ください。
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